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「インバウンドの思想」をマーケティングに~実践事例とその思考プロセス~

大切なのは、相手の行動に想いを馳せること。「インバウンドなMA設計」に欠かせない3つのポイント

インバウンドなMA設計に欠かせない3つのポイント

 MA施策を設計する際に、私が大切にしている3つのポイントがあります。

  1. 「その課題はMAで解決すべきなのか?」を考える
  2.  短期的なインパクトを求めすぎない
  3.  コミュニケーションの頻度を管理し、質を担保する

 まず(1)について。大前提として、MAと1対1のコミュニケーションのどちらが適しているのかを常に自分に問いかけています。その上で、MAによるコミュニケーションを行うか、営業(インサイドセールス)に委ねるべきかを判断しています。

 判断の基準を、私自身は次のように考えています。

  • リアルタイムに顧客の動きを把握した上でコミュニケーションを図る際は、MAで行うほうが抜け漏れがなく、顧客が求めるタイミングでのアプローチができる。 
  • 中長期的なコミュニケーションや、顧客一人ひとりのニーズに応じて対応したり、関係を構築するのはインサイドセールスのほうが適している。

 たとえば、資料送付をするだけならば、MAが適しています。でもメールを受け取った方が、さらに詳しい資料をダウンロードされたり、数ヵ月後に再度弊社のホームページを訪問されたり、複数のアクションをもとにお客さまの状況が想定される場合には、インサイドセールスに担当してもらい、仮説を持った上でコミュニケーションを取った方が、お客さまの期待に応えられるでしょう。

 (2)の短期的なインパクトについて。そもそも企業目線と顧客目線は、きちんと設計すれば相反しないと私は思っています。お客さまが求めているタイミングと検討段階の深さを考え、MAを設計することが大切です。そのためには短期的な数字に気を取られない、焦らないことも大切です。目の前の数字や成果を追い求めすぎると、極端な例では「数打ちゃ当たる」的な発想で、サイトに訪れたお客さますべてに闇雲にメールを送ってしまうこともありえます。お客さまの「買いたいとき」を起点にしてアクションを設計すると、最も温度感の高いタイミングに合わせることができ、購買につながる。結果的に企業にとっての利益にもつながっていくのです。

 さらに、(3)のコミュニケーションの頻度を管理し、質を担保することも重要です。これは自分が消費者サイドの目線で考えるといいのではないでしょうか。顧客にとって最適と感じるメールのタイミングはいつなのか?その後にアプローチをする際は、いつがいいのか。常に顧客目線で考えて、メールを送る頻度を設定しています。

 たとえば、HubSpotのホームページ内で料金ページをご覧になった方に対して、「お困りの点があれば、お客さまのご都合のよいお時間でお打ち合わせができます」と記載した自動メールをお送りすることがあります。これに対し「求めていたタイミングで必要な情報を得ることができた」と感謝のコメントをいただくことが多々あります。これは、料金ページをご覧になっている方は、ある程度HubSpotの導入検討度が高いと想定した上で構築した施策です。

 「自動送信メール」というと、状況によっては迷惑メールに振り分けられてしまうことも多いですが、タイミングとニーズに合っていれば、お客様に感謝されるメールになります。ただ、たとえばホームページのトップページを見ただけでメールをお送りすることは行き過ぎたコミュニケーションになると思いますので、検討の深さをよく見極め、最適なタイミングでコミュニケーションすることが大切です。

 また、「質の担保」の点では、顧客のニーズに合わせて次のアクションを「選択」していただける工夫も行っています。たとえば、上述の料金ページを見た方への「お打ち合わせ」を提案するメールにおいて、「MTG予約」「チャットでの質問」「コミュニティーのご案内」など、直接の打ち合わせのほかに、ご自身で手軽に疑問を解決いただけるような「選択肢」をご案内しながら、顧客の方自身に選んでいただけるようにしています。それぞれの顧客の置かれている環境やニーズは多様であり、必ずしもMTG予約が最適な打ち合わせチャネルではありません。コミュニケーションの先にいる顧客のニーズに心地よく応えられているかを常に問い続けることも重要なポイントだと思います。

顧客のニーズに合わせた次のアクションの選択をしていただけるフォローアップのメール事例(クリックすると拡大します)

  まとめると、 「売る側のイネーブルメント」ではなく、「買う側のエンパワーメント」を目的としてMAを企画運用していくことがポイントだと言えます。

「顧客起点」のMAには、組織連携が重要

 連載第1回では、インバウンドは組織全体で行うことが重要とお伝えしました。私も、MA施策を行う際は、出会いから脈々とつづくバイヤージャーニーを踏まえ、点ではなく面で考え、その中にMAを落とし込んでいくようにしています。そのために、自分がやっていることの透明性を高め、私が所属するマーケティングチームのメンバーやインサイドセールスチームともコミュニケーションを頻繁に取るようにしています。

 マーケティング担当者は、どのように考えて見込み客を集めたのか、コンテンツ担当者はコンテンツの受け手にどんなフォローをするのが最適と思っているのか。会話する中で、部署を超えて、時にセールスのメンバーから、「こういうフォローをMAを使ってできたらもっと良くなると思う」といったアドバイスをもらうこともあります。分断されたアクションではなく次のバイヤージャーニーへと導くMAでありたい。そのためにもMA担当者として孤立せずに、様々な部署とつながること。企業全体で連携しながらバイヤージャーニーに結びつけていくことが、必要だと思っています。

 さらに思想と機能は両輪です。前提として、私たちのサービスは使ってもらえれば必ず価値を得てもらえるという自信があるからこそ、バイヤージャーニーに添いながら、インバウンドな方法・最適なタイミングで商品のご紹介ができると考えています。

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インバウンドなMA施策は「相手の行動に思いを馳せる」ことから生まれる

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この記事の著者

大薮 実穂(オオヤブ ミホ)

HubSpot Japan 株式会社 マーケティングマネージャー

大学卒業後、株式会社Gunosyに入社。広告営業や事業企画を経験した後、マーケティング部署にてアプリユーザー数の伸長に従事。アマゾンジャパン合同会社の広告部署にアカウントマネージャーとして転職。大手家電・消費財クライアントを担当。2022年より現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39596

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