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「インバウンドの思想」をマーケティングに~実践事例とその思考プロセス~

KPIは「メディア露出の数」ではなく「露出の方向性と深さ」 メディア・読者・企業、三方よしのPRとは

 インバウンドの思想と、その施策を実践する方法を具体的にご紹介する本連載。初回の「インバウンドとは何か」から始まり、マーケティングにおけるインバウンドな施策について、広告やMA、コミュニティーなど様々な領域における手法や考え方を取り上げてきました。今回は、HubSpot マーケティングチームマネージャー土井早春とPR担当の浅井有美が、インバウンドなパブリックリレーションズについてお伝えします。

「インバウンドなメディアリレーションズ」を築くために

 PR(パブリックリレーションズ)は非常に広義な言葉ですが、HubSpotにおいては「既存・潜在顧客、従業員、投資家、メディア、政府等のステークホルダーとの間で信頼できるコミュニケーションを実現し、ポジティブな関係を構築すること」と捉えています。

 そのため、HubSpotのPRチームは、記事などのコンテンツ作成を含めたブランド施策や潜在顧客に向けたコンテンツの制作発信、メディアリレーションズや社内広報など、HubSpotの認知を広げるための多岐にわたる役割を担っています。

 この記事では、私たちのチームで行っているPR活動の中でもメディアとのコミュニケーションにフォーカスし、「インバウンドなメディアリレーションズ」について考えていきます。

記者とその先の読者にとって「役に立つ」情報を提供する

 HubSpotのメディアリレーションズ活動では、これまでの連載でもお伝えしてきたMAやコミュニティーでの「インバウンド」の考え方と同様に、「役に立つ」ことを重視しています。「役に立つ」とは、メディアの記者さんに対してはもちろんのこと、さらに向こう側にいる読者に対して「役に立つ」ものであることも重要です。

 メディアリレーションズは正解のない領域なので、わかりやすくその成果を可視化しようとすると「いかにメディアに取り上げてもらうか」というメディア露出の数ばかりを追いかけてしまうこともあると思います。

 しかし、繰り返しになりますが、インバウンドなメディアリレーションズにおいて重要なのは記者さんや読者の「役に立つ」こと。その成果はメディア露出の数だけでは測れないと考えています。ですから、HubSpotでは「とにかく記事に取り上げてもらおう」「メディアに掲載されよう」という動機に基づいた活動は行わないよう意識しています

 たとえばプレスリリースを送付する際に、「相手に先に価値を提供する」というインバウンドの基本に立ち返り、記者さん個人の関心やバックグラウンドをしっかり把握し、カスタマイズしたメールを送る、もしくはお電話をするなど、一人ひとりに合わせたご連絡を心がけています。また基本的なことではありますが、ご連絡の前にその方の直近の取材トピックを改めて確認することも重要です。

 機械的にメディアリストの記者全員に内容が同じメールを送ることをしないぶん、ご案内に時間がかかるのも事実です。しかしあくまで一人ひとりの記者さんに向き合うため、時には時間をかけて練ってきた一つのニュースに対して、個別にご案内をする記者さんは数人のみということもあります。

 これは企業で広報やPRといった職種に就かれている方には共感していただけるのではないかと思うのですが、私たちは「インバウンド」の考え方を意識しながらメディアリレーションズに携わるようになって以降、「意味があるかわからないけれども、とりあえずメディアにメールを送っておく」という行為をしなくてもいいことで、とても肩の荷が下りた気持ちになりました。「相手にとって役に立つこと」を大切にすることで時間の使い方も変わりましたし、何よりも自分のやっている活動に自信が持てるようになったのです

 また、このような取り組みによって記者さんからの「信頼度」が上がったことをメールの返信率や反応から感じています。先日、とある記者さんから「HubSpotさんはメディアのことをよく考えてくれていますね」というお言葉をいただきました。これは記者さんおよびその先の読者への「価値」を考え続けた結果としての言葉だと、とても嬉しく受け止めています。

KPIはメディア露出の数ではなく、露出の方向性と深さ

 メディアリレーションズのKPIをどう設定するかについては、多くの企業が悩むポイントでしょう。KPIが「シンプルなメディア露出の数」でないとすると、何をKPIにするといいのか。HubSpotの例をご紹介します。

 私たちが取り入れているのは、独自に設計したスコアリングに基づくKPIの運用です。「その施策において特に訴求したいメッセージが記事に含まれているか」「HubSpotについての言及が記事の中でどのくらいを占めているか(例:記事全体がHubSpotに関するものなのか、社名が一言言及されている形式なのかなど)」など6つの評価基準を設け、掲載された記事ごとにスコアリングを行っています。記者さんが読者にとって価値があると思えば記事は必然的に深い内容になるはずですから、内容の「深度」も指標に入っています。

 その上で四半期ごとに「○点以上の記事が何本生まれるようにする」「四半期を通じたスコアの平均値が○点以上にする」という2つの指標を設けて、活動の評価を行っています。ですから「とりあえずプレスリリースを配信・送付」といった活動を増やしたとしても、目標のスコアを達成できません。指標は記者さんやその先にいる読者を無視してアウトバウンドな情報発信を続けていたら達成できないような構成になっています。

 また数値としての目標は設けていませんが、後述するソーシャルリスニングの取り組みにより、発信した情報がメディアの先にいる読者の方々にどのように受け取られたのかを定性情報として蓄積し、気になる反応については私たちPR担当チームのみでなく、日本法人全体で議論が始まる仕組みを設けています

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この記事の著者

土井 早春(ドイ サハル)

HubSpot Japan株式会社 マーケティングチームマネージャーBloomberg L.P.でカスタマーサポートと営業に従事した後、2014年にfreee株式会社の直販営業チーム立ち上げに関わる。その後同社で採用、PRに従事。2019年HubSpot Japanに入社し、現在はメディアリレーショ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

浅井 有美(アサイ アリミ)

HubSpot Japan株式会社 PR / ブランドマーケティングマネージャーリクルートメディアコミュニケーションズで広告ディレクター、代理店でのイベントプロデューサーを経て、freee株式会社でPR及びブランドチームのプロデューサーとして従事。2022年にHubSpot Japanに入社し、PR...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40759

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