「分断」の時代に価値を提供できるPRとは
あまりに多くの情報があふれる今、企業と顧客との「分断」が起きていると言われています。HubSpotの調査では、企業から顧客へと送られる営業メールの開封率はコロナ以前と比べて40%も下落しています。「分断」は、企業とメディアという関係性においても当てはまるでしょう。受け取る情報が溢れていることに疲れ、そもそもメールを開封することなく、そのままにしている記者さんも多いはずです。
そんな「情報過多」の状態にあって、HubSpotから送られてきた情報は忙しくても見たい、と思ってもらうためには、記者さんそれぞれの興味関心に合わせた情報を送るだけではなく、社会の資産になるような「役立つ情報」を継続的に生み出していく必要があると感じています。次ではHubSpotが「役立つ情報」を提供するために行っている施策の一例をご紹介します。
社会の資産になりうる情報発信を目指す
HubSpot Japanでは、2019年より毎年「営業実態調査」と題した独自調査を実施し、調査結果とそこから導き出せる考察および提言を発表しています。調査に関する情報は記者会見で記者の皆さまにお伝えするほか、ウェビナー、無料でダウンロードが可能なホワイトペーパー、記事広告など様々な形で社会に向けて発信しており、私たちメディアリレーションズ担当チームだけではなく、社内で多くの関係者が携わる統合型プロジェクトとして取り組んでいます。
この「営業実態調査」を始めたきっかけは、HubSpotはマーケティングに限定せず、「営業」や「顧客との関わり方」といった領域でも様々なサービスや示唆を持っている会社だということを多くの方々に知っていただきたいという思いからでした。
調査をPRに活用することは一般的によく行われています。しかしその中にはある種の結論や自社のプロダクトに誘導するために行われているものや、調査の母体数が少なく数字の信憑性が低いものもしばしば見受けられるのが実情です。
私たちが挑戦したい「調査」は、結論ありきではなく、社会に役立つような情報をお届けすることです。ですから、どんな結果が出たとしてもそれを事実としてお伝えしていくというスタンスを持っており、「そのようなスタンスが長期的には自社のブランディングに還ってくる」という考えのもと投資をしています。昨年の例を挙げると、調査結果およびその考察が記載された全60ページのホワイトペーパーを作成し、ホームページから無料でダウンロードできるようにしました。
この「営業実態調査」は、ちょうど新型コロナウイルスが流行する前の2019年末から始めたこともあり、コロナ前後の営業活動の変化の表すものとして多くの関心を集め、メディアだけではなく様々な企業から年間を通じて「自社の研修資料に使ってもよいか」など多くの問い合わせをいただいています。結果として、多くの外部リンクを獲得するなど、SEOにも貢献しています。
「情報過多」の時代であるからこそ、一方的な「企業」主語の情報発信や、「宣伝」目的のみのコミュニケーションでは情報の受け手の意識変容や行動変容をもたらすことができません。毎年継続して調査し、それが社会にとって役立つものであるからこそ、普段は接点がない企業からも調査に関心を持ってもらえているのではないでしょうか。
つながりを保ち、「信頼」を得るために
情報の質のほかに、「分断」の時代のメディアリレーションズにおいて大切なものは何か。分断の逆である「つながり」とは何かを考えると、大切なのはやはり「人」であり「信頼」ではないでしょうか。
記者さんや、その先にいる読者に対して本当に価値のある情報を提供できているか。PRチーム(企業)と、記者さん、その先の読者との間に「信頼」はあるのかどうか。提供している情報に「信頼」を損なうものはないだろうか。インバウンドなアクションを重ね、「つながり」続けるため、ひとつひとつの行動が「信頼」できるものであるかを問い続けることは重要だと思います。
たとえば、HubSpotでは不安を煽るような情報で記者さんや読者の関心を集めることは避けています。もちろん、ネガティブな要素を含むメッセージ発信が悪いとは一概には言えません。しかしインバウンドな思想を持つ企業が、KPIのために不安を煽るような情報発信をすることは情報の受け手にとって本当に「役に立っている」のかというと違和感がありますし、社会の中での「分断」を深めてしまうことにもなりかねません。ここでの「分断」とは、たとえば内容をともなわないキャッチーなフレーズや言葉のみが先行し「バズる」ことで人々の意見が必要以上に過激化してしまったり、キャッチーなフレーズに興味を持って記事を読み進めても期待していた内容を得られず、結果的に情報の受け手の信頼を裏切る発信になってしまったりすることです。
前向きな気持ちで情報を受け取り、自分たちの役に立ったと思って次に向かっていきたくなる、そしてコミュニケーションを深めたいと思ってもらえることの積み重ねが「信頼」につながると信じて、表現の仕方には常に気を配っています。