無印良品が手掛ける「いつものもしも」
鈴木:社会課題にみんなが興味をもっているから私もやる、ではなくみんなにどう思われるかを気にしてやれないというのは、SNSネイティブならではのおもしろい感覚ですね。それでは次は良品計画の河村さんのお話から、異なるフレームで社会課題に対する取り組みを考えていきたいと思います。
河村:良品計画 ソーシャルグッド事業部の河村と申します。弊社の方針として「感じ良い暮らしと社会」の実現を掲げていまして、いわゆる地域活性化やサスティナビリティにあたる部分を所轄する部署になります。元々無印良品は「素材の選択、工程の点検、包装の簡略化」という、3つのモノ作りの視点から始まっています。世の中でSDGsと言われる前から、消費社会へのアンチテーゼとしてスタートしたので、会社全体はもちろんお客様にもそれが浸透しています。
ソーシャルグッド事業部で取り組んでいる主な事業活動としては、移動販売など地域活性化の取り組みがあります。また無印良品の店舗というコミュニティを中心に、「MUJI HOTEL」や「MUJI HOUSE」などの空間事業も手掛けています。「公共のデザイン」や「未利用資源の活用」をキーワードに事業を進めており、今回は最近の事例を2つお話させていただければと思います。

伊勢丹を経て、3年前に良品計画に入社。ソーシャルグッド事業部長として各地の地域活性化案件を手掛ける
河村:まず1つ目は「いつものもしも」という、活動です。これは2011年の3.11東日本大震災をきっかけにスタートしたものです。我々は生活雑貨を販売しているので、日常生活の中で使うものをもしもの防災の時に使いましょう、という啓蒙活動になります。「いつものもしもセット」という防災グッズも売っていて、商品の拡充も進めているところです。

河村:先日、東池袋のイケ・サンパークという公園で「いつものもしも CARAVAN」というイベントを2日間、開催しました。ここは豊島区の防災公園なのですが、コロナ禍に開いた公園ということもありなかなか認知がされていないという課題がありました。それで、防災を楽しく遊びながら学ぼうというコンセプトでイベントを行い、お子様やファミリーを中心に1日7,000人もの方にご来場いただきました。
団地のリノベーションで、世代を超えた交流へ
鈴木:Z世代よりさらに若い、α世代も多く参加されたイベントなんですね。
河村:そうですね。無印良品はターゲットを世代で定めず、Z世代以外のお客様にも多くきていただいています。もう一例の事業として、いわゆる団塊の世代が住んでいた団地が空いてしまったという相談をURさんからいただき、我々の子会社「MUJI HOUSE」でリノベーションをしました。1,000室ほど手がけましたが、もうほとんど空室がなく多くの方に入居いただいています。特に30~40代の方が75%と、若い方の入居が多いですね。今度は千葉県の花見川団地で、団地丸ごとリノベーションを実施しています。
また、フィンランドのベンチャー企業Sensible4が開発した自動運転バスを「GACHA」という名前で我々がデザインし、その実証実験を先日日本で初めて行いました。やっぱり団地は非常に広いですし、高齢の方がいらっしゃいます。買い物弱者や移動弱者の方の手助けをしながらコミュニティ形成にどう活かせるのかと安全の検証を実施したというのが、最近の事例となります。

鈴木:団地って高度経済成長期にできた場所なので、やっぱり若い世代が引っ越してきたり自動運転車のようなテクノロジーがあると、世代を超えた交流がしやすくなりますよね。