ICチップで入退店や決済などあらゆるデータを蓄積
高橋 飛翔(以下、高橋):「かるまる池袋」をはじめ、シューズクロークの鍵だけでロッカーの施錠や館内飲食、自動販売機での購入などが可能になっている店舗も多いと聞きました。温浴施設はデジタル管理が難しい側面もあると思っていたのですが、これならデータの集計もしやすく、施策の効果が測りやすそうですね。
しかも非接触でほぼすべてのことができるのは今の時代に合っているし、利用者側にとってもすごく便利なオペレーションだと思います。財布を出す手間がないから、客単価も上がりそうですね。
太田 広(以下、太田):シューズクロークの鍵にICチップが入っていて、館内の行動はすべてこれ一つで管理できるようになっています。利用者の利便性はもちろんですが、入退店記録から滞在時間もわかるし、何を食べていくら使ったか、館内での行動も把握できます。
また、財布を出したり券売機まで買いに行ったりする手間がないことで、売上も約20%上がっています。
太田 広(おおた・ひろし)
楽楽ホールディングス 代表取締役。「サウナ王」の愛称で知られる温浴事業・温浴施設経営コンサルタント。400施設以上(施設診断・経営相談等含む)の業績を改善してきた繁盛店の仕掛人で、これまでの成功率は97%を誇る。学生時代からサウナが好きで、年間のサウナ入浴数は320日以上。
高橋:それはやらない理由がないですね(笑)。太田さんがコンサルティングしている全店舗で導入しているんですか?
太田:いえ、今のところ最新の温浴施設だけです。というのも、ロッカーや自動販売機など、すべてに読み取り機能をつけなければならず、導入に大きなコストがかかるんです。データ化できるメリットを伝えて導入をすすめてはいますが、最終的な判断は経営者になるので、初期投資を抑えたいなどの理由から見送るケースもあります。
立地に合わせて施策と計測方法を変えることが重要
高橋:確かに規模の小さい施設なら、費用対効果を考えたときに得られるメリットが少ない可能性はありますね。しかし、ICチップを導入していない施設ではどのように施策の効果を測っているのでしょうか?
太田:たとえば、定期的に同じイベントをやって、時間帯別の来客数や滞在時間、売上などのデータを過去と比較するといったことをしています。また、イベント当日にフロントで言われたお客様の声や、数日間のSNSでの反響などを拾い上げてブラッシュアップし、次の開催時に活かしているので、データを比較した際にどのような効果があったかがわかるんです。
高橋:なるほど。デジタルでデータを取りにくい領域でもあきらめてはいけないですよね。たとえば、ナイルは案件ごとのコンサルタントの稼働状況・リソース状況のデータ化に苦戦していた時期がありました。「正確なデータが取れない」とあきらめるのは簡単でしたが、何度か試行錯誤を重ねて、今は正確に稼働データがわかり、労働生産性の向上につながっています。
アナログなビジネスであったとしても、データを収集する努力をすることで正しい分析に近づくことはできるので、あきらめてはいけないし、雑になってもいけないなとつくづく思いますね。
マーケあり!ポイント
・一部温浴施設ではICチップ付きのロッカーを導入し、ロッカーの鍵だけで貴重品ボックスの施錠や館内飲食、自動販売機での購入ができるようになっています。データ集計を効率化するだけではなく、お客様が都度、お財布やスマホを取り出す負担を減らすことで売上の増加を実現しています。
・すべての店舗がICチップの導入をできるわけではありません。数ヵ月に1回のイベントでアナログな方法であっても男女比、滞在時間などデータを集計しておくことで、長期的な改善案を出すことは可能です。