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Cookieレス時代のネット広告を考える~利用者保護とマーケティング成果を両立するために(AD)

2022年Cookieレスの現在地&Meta「CAPI」の動向追報/法改正への対応後、今やるべきこと

 2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、データ活用におけるルールが明確になった。Cookieレス対策は、法・ルールへの対応がひと段落し、技術面での対応が待ったなしの状況だ。インティメート・マージャー 代表取締役社長の簗島亮次氏と、Facebook Japan 執行役員 営業本部長の近藤克尚氏に、Cookieが使えなくなるその日までに企業が今やるべきことをうかがった。本連載で度々紹介している、Metaが提供するCookieレスソリューション「コンバージョンAPI(CAPI)」についても、企業による現在の活用状況を紹介する。

【対Cookieレス】法改正への対応がひと段落、では技術面は?

MarkeZine編集部(以下、MZ):データマーケティングの支援を幅広く提供されているインティメート・マージャーさんは、Cookie規制を受けた企業の焦りや試行錯誤を間近で見られてきたことと思います。Cookieレスを巡るコンテキストは、2022年9月現在、どのようなものになっていますか?

簗島:Cookieレスの問題は我々自身にとっても、クライアントにとっても大きな課題であるとして、この2~3年取り組みを続けてきました。前提として、Cookieレスの問題は要点を整理すると「1:法律面での規制」と「2:技術面での規制」の2つに整理されます。このうち前者の法律面での規制は、2018年5月にEUで施行されたGDPRや国内で定められている個人情報保護法に準ずる話になります。2022年4月の改正個人情報保護法の施行を受け、昨年から今年にかけてはこの対応に追われていた企業が多かったはずです。今は、法律面の対応がようやくひと段落し、技術面でのCookie規制の対応を進めている企業が増えている印象です。

【左】株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島亮次氏:2013年にインティメート・マージャ―を創業。データによるマーケティングの効率化を目指し、ポストCookieに向けたソリューションの提供やDMPの構築など幅広い領域で事業を展開。【右】Facebook Japan 執行役員 営業本部長 近藤克尚氏:2016年5月にFacebook Japanに参画。広告事業部でエンターテインメントやファイナンシャルサービス、不動産などの業界を中心にクライアントパートナーを担当。
【左】株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島亮次氏:2013年にインティメート・マージャ―を創業。データによるマーケティングの効率化を目指し、ポストCookieに向けたソリューションの提供やDMPの構築など幅広い領域で事業を展開。
【右】Facebook Japan 執行役員 営業本部長 近藤克尚氏:2016年5月にFacebook Japanに参画。広告事業部でエンターテインメントやファイナンシャルサービス、人材、不動産などの業界を中心に担当。

MZ:体裁を整えるだけでは、いよいよ対応しきれなくなっているという状況が見えてきます。

簗島:そうですね。技術面での規制についても、大きくは「ターゲティング」と「トラッキング=効果測定」の2つの課題があります。Google Chromeの3rd Party Cookieの規制完了が2024年にまで延期されましたが、それまでにこの2つの課題をどう解決するか? 悩みながらも取り組み始めている企業が増えているのが、業界の現状だと思います。

 法律面は守る/守らないの白黒がはっきりしているのに対し、技術面での対応は、企業の創意工夫の余地が大いにある。だからこそ、ビジネスへのインパクトを最小限にするため、Cookieが完全に使えなくなるその日までに対応を進めることが重要です。

変化に対応できるよう「選択と集中」から「分散・発散」へ

近藤:簗島さんのおっしゃる通り、広告主からのご相談も、昨年は個人情報保護法の改正に関連するものが非常に多かった印象です。こうした一連の動きの背景には、利用者のデータプライバシーに対する懸念・意識の高まりがありますが、我々は「プライバシーの保護とパーソナライズド広告は相反するものではない」という考えのもと、法律をはじめとするルールに則りながら、技術面での対応を進めてきました。

 今後のデータ活用について危機感を持たれている企業も増えている一方で、悩ましいのは、「今日できていることが明日できなくなる」というようなケースは実は少ないという点です。つまり、まだまだCookieを使える部分はあり、海外では「Cookieが使えるうちは使う」というスタンスの企業もある。ただ、現にCookie規制によって可視化できなくなっている広告効果も出てきており、数年前にできていたことができなくなっているという事実に変わりはありません。我々としては、しかるべき時期に備えて一緒に準備を進めていきましょう、とクライアントや業界の温度感を高めている状況です。

簗島:現状のコンテキストを語る上で、もう一点お話ししておきたいのは、ルールが明確になったからこそ、できることがあるということです。ルールが明確に定まっていないうちは、自社のデータ活用が適法なのか否か、確かめることがそもそも難しいですよね。改正個人情報保護法が施行されデータ活用に関するルールが明らかになったから、技術面でもデータ活用の取り組みを進めやすくなったと捉えると良いのではないでしょうか。

MZ:先を見越して動くことが必要ですが、データマーケティングのパフォーマンスを維持するために、企業が今から行うべきことは何でしょうか?

簗島:日々、クライアントには、どんな変化にもちゃんと対応できるように「選択肢を増やしておいてください」とよくお話ししています。これまでデジタルマーケティングの世界は、プラットフォーマーの拡大にあわせて、選択肢が絞られていく傾向にありました。しかし、今、法律についてもブラウザなどの外的環境についても、変化の波が大きい時期です。1つの選択肢に依存しすぎたり、今のやり方にこだわりすぎたりしていると、これらの変化に対応することができません。今できることが将来できなくなっているかもしれない、という前提に立ち、「選択と集中」から「分散・発散」へ考え方をシフトすべきだと考えています。

ひとつの選択肢として、Meta「CAPI」の特徴は?

MZ:ここで、Cookieレス時代の選択肢のひとつとして、Metaが提供する「コンバージョンAPI(以下、CAPI:キャピ)」をご紹介いただけますか?

近藤:「CAPI」は、Cookieレスの時代にデータ連携の透明性と正確性を高めるソリューションとして2年以上前から提供しているものです。CAPIはブラウザを経由せず、広告主のサーバーからMetaのサーバーへデータを直接やり取りする仕組みになっており、Cookie制限により広告効果の計測・改善に必要なデータ連携が阻害されてしまうという問題を解消することができます。

【図解】CAPIの仕組み
CAPIの仕組み

 ポイントは、CAPIに送付するデータを広告主自らが設計・デザインすることができることで、自由度の高さがひとつの特長です。ただ、実装にあたってはエンジニアも設計・デザインに入る必要があり、エンジニアの工数がある分、導入から実装までに時間のかかるケースも往々にしてあります。

※CAPI導入事例など、これまでの参考記事一覧

MZ:簗島さんは、Cookieレスのソリューションは他社のものも含めてよくご存じだと思いますが、MetaのCAPIをどう見られていますか?

簗島:先ほど、技術面でのCookieレスの課題はターゲティングとトラッキングの2つがあるとお話ししましたが、CAPIはその両方、つまり広告効果の測定および最適化をカバーするソリューションだと認識しています。ですが、私がCAPIに関してそれ以上に感じているのは、Facebook Japanさんの気合いの入れ具合です。Cookieレスに関するソリューションは他のプラットフォームや会社からも出ていますが、Facebook JapanさんはCookieレス対応の温度感を高めるべく、かなり力を入れられている印象があります。

 これはソリューション導入うんぬんの話というよりも、データマーケティングのパフォーマンスとその最適化をFacebook Japanさんが重視しているからこそなのだろうと思っています。

CAPIは実装が大変?「CAPIゲートウェイ」登場で、3ヵ月の開発期間が最短2時間に

MZ:先ほどの近藤さんから、CAPI導入のハードルの高さに関するお話がありました。ここの実情はどうでしょうか?

簗島:そうですね、導入から実装まで大変ではあると思います。理由は、実務面でもデータ活用の概念においても、今の常識と違うことをしなければいけないからです。振り返ってみると、これまでターゲティングでもトラッキングでも作業はどんどんシンプルになってきていました。リターゲティングも最初は複雑なタグの処理がありましたが、今はワンタグで済みますよね。そんな状況下で、開発部門も交えて設計・実装を行う必要のあるCAPIを導入しようとなると、途端に複雑で難しく感じてしまうかもしれません。

 また、トラッキングするのにコストが発生すること自体に違和感を覚える方も多いようです。本当は当たり前の概念なのですが、リターゲティングタグやCVタグを使うのに費用が発生するなんてことは、これまでなかったですからね。

近藤:簗島さんのおっしゃる通りで、CAPIのソリューションについてご理解いただくには、その背景にあるデータ活用の概念や技術的な部分までご説明する必要があり、今日までMetaの広告営業チーム、そして広告代理店の皆さまの力も借りながら広告主に一生懸命お伝えしてきました。ただ、先にお話した通りCAPIの実装コストが高いことは我々も認識しており、これを解決するために「CAPIゲートウェイ」というソリューションも新たに提供しています。

CAPI連携方法による違いと特徴の比較
CAPI実装の選択肢は複数あり、費用・技術的要件・有効にする機能などがそれぞれ異なるため、自社のビジネスに適した実装方法を選ぶことが重要

 CAPIゲートウェイは、Facebook広告の管理画面(イベントマネージャ)でCAPIを実装できる仕組みになっており、基本的にはセルフサービス型です。マーケティング担当者が自分で設定できるので、開発のリソースがない企業でもCAPIを実装できるのが最大の特徴となっています。実際に、これまでCAPIの実装には3ヵ月から半年ほどの期間を要していましたが、CAPIゲートウェイは最短2時間で連携を完了させることが可能です。ある程度パッケージ化されたソリューションになっているので、仕様が変わった時などにメンテナンスの手間がかからない点もメリットだと思います。

連携前のほうが良いことも?CAPIは正しく実装することが重要

MZ:インティメート・マージャーでもCAPIの実装をサポートすることがあるのでしょうか?

簗島:Cookieレス対策に関しては弊社も日々たくさんの相談を受けており、それらの対応の中でCAPIの導入をお手伝いするケースが増えてきました。弊社はDMP構築を本業としていますが、CAPIの実装はDMP構築の工程と共通している部分が多く、CAPI実装のサポートを事業内で展開しているというよりは、本業の延長線上でサポートをしている感じです。

MZ:なるほど。では、効果のある形でCAPIを取り入れるには、どのようなポイントがあるか教えていただけますか?

簗島:より多くのデータをリアルタイムに渡すこれは、CAPIに限らず、データを使って効率化・最適化を目指す際の鉄則です。この鉄則を前提に、Metaの推奨通りに実装するのが一番だと思います。

近藤:CAPIを正しく実装できているかについては、イベントマネージャ上でご提供している「EMQスコア」で確認していただくことができます。先にお話ししたように、CAPIゲートウェイでCAPIの連携自体はすぐにできるのですが、それだけでは、「これでデータを正しく連携できているのだろうか?」と広告主側で不安になることもあると思います。その点、このEMQスコアは「CAPIのデータ連携がうまくできているかを表す成績表」のようなイメージでご確認いただけますので、CAPIを効果的に実装できているか否かの指標として見ることができます。

簗島:弊社のクライアントの中で、DMP構築の過程でCAPIのデータ連携の最適化をお手伝いしたことがあります。そのクライアントから聞いた話では、最初は3.0だったEMQスコアが、CAPIのデータ連携を改善したことで、直近では最高7.2まで上がったそうです。スコアだけでなく、実際にCVの件数も増えたと聞いているので、EMQスコアは参考になる数値だと言えると思います。

MZ:ちなみにEMQスコアの平均値はどのくらいなのでしょうか?

近藤:CAPIのデータ連携がうまくいっているか否かを判断する目安の数値として「EMQスコア=5.0」を参考値としています。CAPIでデータいただくからにはCookieを使っている時よりもよいデータ環境でなければ、意味がありません。Cookie規制により欠損している情報をCAPIで補完するはずが、補完になっていないというケースもあるので、EMQスコアを見て状況を判断いただければと思います。

プライバシーとパーソナライズド広告の両立を目指して

MZ:技術面でのCookie規制への対応は、まだまだこれから動きが出てくるところだと思いますが、ここで提供予定のソリューションなどあればご紹介いただけますか?

近藤:弊社としては、引き続きCAPIおよびCAPIゲートウェイを効果のある形で広告主に実装いただくことを目指していきますが、同時に「Privacy-Enhancing Technologies(以下、PETs:ペッツ)」というソリューションの提供を拡大していきたいと考えています。PETsが実現するのは、より安全で、より公平なデータ活用の仕組みです。プラットフォーマーに「データを預ける」というのは、広告主にとっては少し不公平さを感じる面もあると思います。そうではなく、我々と広告主と両者ともにデータを一定の場所に預け、広告のパフォーマンスに関するデータのみを見れるようにする、そこでは暗号化技術により個人情報にまつわるデータはお互い一切見ることができない。PETsはそういったソリューションになっています。すでにCAPIゲートウェイをご利用中の広告主には、PETsを使ったリフト調査のソリューション(β版)もご提供しており、今後どんどん拡大させていきたいと考えています。

MZ:最後に、両社今後の展望をお聞かせください。

簗島:弊社もCookieレスの領域には前々から力を入れてきましたが、これまではどちらかというとターゲティングを重視し、効果測定はプラットフォーム側、ツール側に頑張ってほしいと思っていました。ですが、CAPIの導入をサポートしたりする中で、効果測定の部分でもみなさんが非常に困っていることを実感したので、効果測定の領域でも僕らの知見を活かして、ソリューションやサービスを広げていく考えです。

 そして、私は、データマーケティングにおいて「プライバシーを毀損すれば毀損するほどパフォーマンスが上がる」というのは正しくないと考えています。利用者にとって不快な広告が出てしまうのは、テクノロジーに追いついていない部分があるからで、データマーケティングは利用者にとってもメリットがあるはずなのに、デメリットのほうが大きくなってしまっているというのが現状です。プライバシーの犠牲の上でデータマーケティングのパフォーマンスが成り立っているという概念を、僕らがテクノロジーで変えていきたいですね。

近藤:我々も「プライバシーの保護とパーソナライズド広告は相反するものではない」という考えを強く持ち、弊社のソリューションを通してCookie規制に対する様々な選択肢を広告主に提供していきたいと考えています。ですが、CAPIの実装ひとつとっても、やはり我々一社だけではその必要性を説くことも、実装のサポートや導入後のメンテナンスを行き届かせることもできません。インティメート・マージャーさんはじめ、代理店やパートナー企業の皆さんのお力を借りながら、ソリューションを拡大してければと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/09/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39876