「残存効果」が期待できるキャンペーンの仕掛け
MZ:新たなメッセージを伝える際に、ポイントをフックにすることもあるんですね。
森本:そうですね。ポイントを受け取るためには一旦QRコードを読み込んでキャンペーンサイトに入っていただきますので、そこである程度の情報を伝えられます。

森本:キャンペーンサイトで商品のコンセプトなどの様々な情報を一気に沢山並べてしまうと、離脱されるリスクは当然あります。しかし、一定の情報量であれば見ていただけるだろうと判断し、1回でも手に取っていただいた方にリピートを促すような仕掛けをしています。また、ポイント活用する際にプラットフォームで当社の公式アカウントに誘導し、CM動画やその後のキャンペーンのお知らせを配信しています。
キャンペーン情報や動画を視聴してもらえるとロイヤルユーザーとなっていただく確率が高いので、CM素材がある商品であればその動画まで見ていただく仕掛けを行っています。
ポイント施策は、その時々で実施されている商品を買う方もいるため、単純に行うだけでは即時的な効果はあるものの、残像効果が少ない施策になりえます。しかし、ポイントというアテンションを入り口にして、キャンペーンサイトでメッセージを伝える、プラットフォームに誘導するといった工夫があれば、残存効果があるのではないかと考えています。
実施前後で売上に約15~30%の変化
MZ:具体的にどのようなキャンペーンがあるでしょうか?
森本:直近で言えば、2種類のポイントのどちらかが必ずもらえるキャンペーンを実施しました。1種類のポイントだけではなく、お客様に好きなポイントを選択していただくことで、少しでも消化率を上げる試みです。
当社で実施しているポイント施策では、現在2つの共通ポイントに集中しています。
MZ:具体的にどのような成果が出てきているか、お教えいただけますか?
森本:昨年実施したキャンペーンの事例で申し上げますと、キャンペーンのシールを商品につけた店舗とシールをつけていない店舗でどれぐらい売上が変わるかを前週差で観測したところ、首都圏の小売企業様ではシールをつけている店舗の方が、売上が約15~30%は高いというデータが出ました。
ちなみに、効果の高い商品カテゴリを2021年に調査したところ、一番購入率が上がったのは無糖のお茶、お水などのコモディティ化しやすいカテゴリでした。
加えて、甘みのある飲料にも効果がありました。推測される要因は、小腹を満たしたいあるいは何か甘いものが欲しいために購入する方が持つ特性です。甘い飲料は好きだけど、様々なものが好きという方は多く、そうした回遊層が多い商品カテゴリであればポイントがもらえることによって購入率が上がりやすいことが如実にわかりました。
一方でコアなユーザーがいるブランドは、ポイントキャンペーンの実施有無に関わらず、買っていただける方が多いです。そこで無闇にキャンペーンを実施してしまうと、かえって効果が薄いということもわかっています。そのようなことを踏まえ、ターゲット層を明確にすることを重視しています。
たとえば、前述の「ウィルキンソン」のように、まだあまり飲んだことがない方を対象にしたり、元々甘い炭酸飲料を飲む方に健康志向で無糖の炭酸水を飲んでいただくようなカテゴリスイッチの仕掛けをしたりと、設計の工夫が必要になります。