SEO戦略で重要なのは「キーワード」「目標設定」「優先度」
次にSEOを改善する際の戦略や運営について、詳しく見ていく。まず戦略の立案について、藤井氏はポイントに「対策キーワードの抽出」「目標の設定」「対策優先度の策定」の3つを挙げ、この順にステップを進めていくと説明した。
1:対策キーワードの抽出
デサントジャパンの場合ECサイトのSEOであるため、「サイトの特性を見極めたうえで対策キーワードを抽出する必要がある」と藤井氏は語る。ECサイトには大きく分けて2種あり、商品数が多くて1カテゴリーに数百点ほどある「多品型」と、商品数は少なく1カテゴリーに数十点程度の「少品型」に分けられる。多品型の場合はSEOキーワードとしてポロシャツ、コートといったカテゴリー名が妥当となる。また少品型ならブランド名とカテゴリー、つまり「デサント、Tシャツ」といった掛け合わせが有効だという。
少品型サイトの場合、ブランド名とカテゴリー、オリジナルのシリーズ名といった検索で確実に1位を取ることが総合的な売り上げに貢献できる。どこのポロシャツを買おうか悩むユーザーを相手にするより、ある程度志向が見えているユーザーをしっかり掴むほうが重要だからだ。デサント公式ECサイトは少品型であるため、まずはブランド名や特定の商品シリーズ名を含むキーワードで確実に上位を獲得することを目指した。
2:目標の設定
キーワードが決まったら、検索された時の順位をどこまで上げるか、検索結果から自社サイトにどれだけ誘導するかといった目標数の設定を行う。検索結果は通常、広告がまず上位に表示される。その後に表示される結果を「自然検索結果」、クリックしてサイトを訪問するユーザーの数を「自然検索流入数」と呼ぶ。
キーワードで検索したサイト順位をたとえば10位から4位へ上げたい場合、4位になったら増えると考えられる自然検索流入数を目標値とする。実際にデサントジャパンでも、主要キーワードについて目標順位と理論上の流入数増加量を算出し、自然検索流入数のKPIを設定した。
3:対策優先度の策定
キーワードと目標値が見えたら、どの施策を優先的に実施するかを決定する。ここでは施策で得られる効果を「対策インパクト」と称し、検索流入数などでその大小を測る。
対策優先度を考えるうえで、あるキーワードにおける自社サイトが10位なら、その際の1位や2位のサイトと比較して課題を検討する方法がある。「titleタグへのキーワード含有率」「重複の有無」「コンテンツ商品の基本情報・紹介情報」などの視点で比較し、それぞれの対策インパクトを想定して具体的に何をすべきかを検討する。もちろん施策を考える際は、対策インパクトの高さ(検索流入数を増やせるかどうか)だけでなく、かかるコスト・時間・手間などを勘案したうえで優先度を策定することが重要だ。
SEO運用で押さえるべき、3つのポイントとは
戦略が決定すれば、次は実施・運用が始まる。藤井氏は、以下の3つのポイントを挙げた。
1:成果が最大化されるスケジュール
戦略や個々の施策は、SEO施策を盛り込んだWebページの制作、Googleが評価する期間、必要に応じたSEO施策の修正など、それぞれ月単位で時間がかかる作業が生じる。そのため、たとえばファッションECサイトで7月頃の夏物セールにピークを合わせたい場合、制作で1ヵ月、Google評価で2~3ヵ月、SEO修正の予備日などを考え、4月頃から施策をスタートさせる必要がある。
2:制約・変化を踏まえたプランのチューニング
「担当者の移動」「制作リソースの減少」などの人的問題が発生した場合も、「チームで目的・KPI・スケジュールなどをしっかり共有することで立て直しが図れる」と藤井氏は語る。
また施策をスケジュール通りに実施できたとしても、予定通りに成果が出ない、順位は上がったが検索流入数が増えないといったSEO特有の課題が発生することがある。その場合は要因分析に加えて、先に選ばなかったキーワードで改善を試みる、表示方法を工夫してクリック率を上げるなどの取り組みも重要だという。
なお検索アルゴリズムが変更されると、昨日は1位だった順位が次の日は5位、10位になるといった状況が生まれる。実際Googleは、細かいものを含め年間に数千回も改変を行っていると言われている。こうした時は最新順位をすぐに検索し直し、対策キーワード優先度の見直しを面倒がらずに行うことが大切となる。
3:実行体制
Speeeと一緒にSEO改善を行う場合は、まずSpeee側のプロジェクトマネージャーや分析官が、企業の担当者に改善施策の提案を行う。その提案を受けて企業担当者は開発担当に指示を出し、開発担当が実装するという流れが一般的だという。
この時課題になるのが、提案の費用対効果だ。施策単位で対策インパクトを算出し、コストも勘案した結果ROIがどうなるかといった議論が提案の可否判断に必要となる。Speeeでは、こうした流れを企業担当者と一緒に考えていくことが重要と考えている。
藤井氏は「PDCAのDの部分でつまずくプロジェクトを、我々もいくつか経験してきております。そのためこうした課題の解決について、しっかりと研究をして実績を重ねているところです」と運用への積極的な取り組みを明らかにした。