レビューがパーソナライズ化される未来は近い
押久保:レビューからハッシュタグを抽出していくと、属性の幅が非常に広くなりますね。
山崎:たとえばゴルフクラブのドライバーにしても、「40代男性、アスリート、飛距離250Y、スコア80」と「20代女性、ゴルフ初心者、飛距離100Y、スコア130」が評価する商品はまったく異なりますよね。ECサイトに集まったレビューでホットキーワードを抽出してLPを作成し、購買意欲の高いユーザーを集客して、さらにECサイト内のリスティング広告でエンゲージメントを高める、という一連の流れを実現します。
西井:それができるのがデジタルの価値ですよね。それに、検索に使うキーワードはあくまで「検索用のワード」で、決して「自分にふさわしい商品」が出てくるわけではありませんから。
化粧水なら「20代、乾燥肌」などは検索ワードとして思いつきますが、そのワードで検索するよりも「20代でこういう肌悩みがあって、この商品を使うことでどう改善されたか」というレビューから抽出したほうが、「ガサガサ」「しっとり」「リピ決定」など検索では出てこないキーワードが得られると思います。「まさに私が欲しかったもの」という商品にうまくたどり着けるような導線作りは、とても大切です。
山崎:今後レビューはパーソナライズされていくと考えています。ECがどんどん消費者に入り込んでくる中で、大衆化するユーザー層にエンゲージメントしてもらうには、思い切ったアプローチが必要です。Googleのような検索エンジンと親和性の高い施策という点でもあり得る可能性だと思います。
押久保:Amazonも広告がすごく伸びていて、2021年の広告事業の売り上げは310億ドルという話を聞きました。ECサイトにおいても「買う場」から「メディア化」するという、ビジネスモデルが一気に変化したわけですね。
山崎:5年くらい前でしょうか、「ブランド直販でいいのではないか」というリテール不要論が出てきましたが、今はリテールの逆襲とも言えます。
西井:リテールサイトはメーカーと違って他社と同じ商品を取り扱うことが多く、価格競争になりやすいのでどうしても薄利多売になりがちだと思います。ところが規模の大きいリテールになると人が集まるため、メディア化すれば収益が上がります。実は顧客側にとっても、競合比較やレビューを確認できるリテールで購入したほうが利便性があるから、そこで広告収入も立つんですよね。
山崎:そうですね。リテールからすると「今後自分たち抜き、ブランドだけでユーザーにエンゲージメントできると思うなよ」というのが本音かもしれません。
認知のきっかけはUGC。ファン化を踏まえた商品設計が鍵
押久保:3PC規制など、EC業界を取り巻く環境は激変していますが、企業はどう対応していくべきでしょうか?
西井:実はオイシックスでは、3PC規制については意識していません。まずは体験してもらってリピートしてもらうことに主眼を置いているので、ほとんどリターゲティングを使っていないからです。
山崎:逆にブランドサイトとECサイトを別々に持っているような企業は、ブランドがリーチしたユーザーに対しECがリタゲで追いかけているので、致命的なダメージになりますよね。
西井:これは私なりの見解ですが、これまでのような広告による「認知」「リーチ」からお客様との関係が始まるという考え方自体が古いものだと考えています。認知した時に同時に体験できる状態を作ったり、他のお客様の声によって認知することで一気にお客様が買いたい気持ちになっているか、が重要だと思います。
つまり認知を広告だけで展開する時代から、UGCによるよい認知を獲得する時代へと変化しています。実際、オイシックスも数年前までテレビCMなどの認知広告は一切打っていませんでしたが、お客様からの口コミでよい認知が取れるようになりました。
ファンが集まれば自然にUGCが生まれます。だから「いかにファン化するか」を起点にプロダクトを設計することがとても大事になります。それができれば広告で認知を取る必要もなくなりますし、3PC規制の影響もほとんどありません。
山崎:ファン化を踏まえたプロダクト設計とは、結局のところカスタマーエクスペリエンスにつながると思います。
押久保:本日は非常に刺激的なお話を、ありがとうございました。
ZETAが提供するECマーケティング・リテールDXを支援するソリューション「ZETA CXシリーズ」の資料は資料ダウンロードページよりダウンロードいただけます。