竹中氏が語る、日本のデジタル化を阻む3つの課題
説明会の中盤には、アドビのインターナショナルアドバイザリーボードメンバーである竹中平蔵氏が登壇。日本のデジタル化における3つの課題として「デジタルエコノミーの推進」「デジタルトラストの実現」「デジタル人材の育成」を提示した。
デジタルエコノミーとは、デジタル技術を基盤とした社会経済のあり方を指す。「今後世界はすさまじいデジタル資本主義の競争になっていくと考えています」と竹中氏は言う。
次に示されたデジタルトラストは、組織がデータや個人情報を守る能力と信頼度を測る尺度のことだ。そして一番難しい課題として挙げたのが、「デジタル人材の育成」について。こうしたデジタル社会の実現において、いずれも必要不可欠な要素でありながら、国内では十分に浸透していると言い切れない状態だと竹中氏は言う。
「こうした状況に対し、官民一体となって推進していく流れとなってきています。デジタル化が加速していく中、アドビのような企業が大きな役割を果たしてくれることを期待しています」(竹中氏)
アドビが提示する解決策とは?
では、アドビはこの3つの課題に対しどういったことを行っているのだろうか。
まず、デジタルエコノミーの推進について神谷氏は「弊社が貢献できる領域は、コンテンツ領域です」と述べた。メタバースや3Dといったテクノロジートレンドも含め、消費者のデジタルコンテンツに関するニーズが高まる中で、アドビはコンテンツ領域におけるデジタルエコノミーの推進をけん引していく狙いだ。
またAdobe Creative Cloudでは2021年12月、新製品Adobe Expressをリリースした。
「同製品は、誰もが簡単に自分の作りたいコンテンツを、テンプレートを活用して無償で作ることができるサービスです。特に中小企業に非常にメリットのあるアプリケーションとなっており、ここにも非常に大きな機会があると考えています」(神谷氏)
次にデジタルトラストの実現だが、アドビはPhotoshopやPremiere Proでの改ざん防止機能を実装している。しかし、デジタルトラストの実現に関して神谷氏は「1社ではやりきれることではない」と語った。そのため同社は、デジタル認証を通じてコンテンツの作者の権利が守られるよう「コンテンツ認証イニシアチブ」を2019年に開始。この取り組みには、数多くの企業が参加しているという。
3つ目のデジタル人材の育成について。神谷氏は「新しい価値を創造する人材」が求められているとし、「最大の課題」だと語った。
具体的に必要なスキルとして、「課題に対してアイデアを引き出し形にする能力」と「データを解釈し、課題を発見する能力」があると指摘。アドビでは、この2つの能力を合わせて「クリエイティブ デジタル リテラシー」と呼び、同能力を備えた人材育成に注力しているという。
加えて、神谷氏は「学生のスキルアップも後押ししていきたい」と語った。学生のアドビ製ソフトウェア使用率は日々向上しており、小中高向けのライセンス収益は直近2年間で60%、大学専門学校向けのライセンスも対前年比で約15%増加している。アドビでは、増加を続ける学生の利用者に対するサポートの強化も視野に入れている。
ここまで、日本のデジタル化における3つの課題への対応策を語ったアドビ。神谷氏は「デジタルエコノミーの推進、デジタルトラストの実現、クリエイティブ デジタル リテラシーを持つ人材の育成、これらをアドビの優先課題として、次の30年を頑張っていきたい」と同説明会を締めくくった。
