※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。
SDGsの認知率は約8割(インテージが2022年1月に実施した調査)と2年前の認知率約3割から大きく上昇している中で、17のゴールのうち優先的に取り組むべきだと思うものとして、「気候変動に具体的な対策を」は2年前から毎年上位にある。
その対策として、温室効果ガス排出量を削減し個社のカーボンニュートラルの達成を目指す企業の取り組みも進んでおり、サプライチェーンでの排出量を可視化するためのデータ共有に向けた産業界や産官学の取り組みも始まった。
このCO2排出量を算出し可視化するカーボンフットプリントの取り組みは、企業だけでなく生活者個人ごとに算出することもでき、そのようなサービスは「CO2家計簿」などと呼ばれている。では、このようなサービスはなぜ登場したのだろうか。その背景を探る。
分野横断でのCO2排出量削減の取り組み
2022年7月、岸田内閣は脱炭素社会実現に向けた社会や産業構造の変革「グリーントランスフォーメーション(GX)」を強力に進めるため、新たにGX実行推進担当大臣を設置した。日本は、2020年10月に2050年までにカーボンニュートラル(CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする)を目指すことを宣言した。この実現のためには、特定の業界や企業の取り組みだけでなく、業界やサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減を目指すための取り組みが必要である。
サプライチェーン全体の排出量とは、商品やサービスの原材料調達や製造から物流・販売、そして使用・廃棄までの一連の組織行動にともなって発生する温室効果ガスの排出量のことを指す。この温室効果ガス排出量は、排出のされ方や排出者などによって「Scope1(直接排出量)」「Scope2(間接排出量)」「Scope3(その他の排出量)」の3つの区分がある(図表1)。
産業界の動向として、2021年10月にJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が設立したGreenxDigitalコンソーシアムが挙げられる。このコンソーシアムでは、デジタル技術を活用してデータを共有するプラットフォームの構築やCO2排出量の算定・収集・共有に関する共通ルールを策定し、サプライチェーン全体のCO2排出量の見える化や、企業間の協働を促進することで、サプライチェーン全体での削減効果をデータとして反映され評価できるようにすることを目的の一つとしている。
産官学協働の取り組みとしては、経済産業省が2022年2月に「GXリーグ基本構想」を公表した。CO2排出量を削減することが企業にとっての負担ではなく成長機会となり競争力を向上させる、日本発の仕組みを作ることを目指している。そのためには、企業の意識・行動変容に加えて、生活者の意識・行動変容を促す必要があり、実証および本格稼働に向けた具体的な議論が開始されている。