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個人の行動変容を促す「CO2家計簿」

「CO2家計簿」の受容性

 個人のCO2排出量を見える化するサービスは「CO2家計簿」や「環境家計簿」といった名称で国内でも企業や自治体が取り組みを始めている。

 インテージでは、生活者のサステナビリティ行動を刺激し促進するサイクルをポジティブに回していくために必要な仕組み・機能を考えるため、どのような気づき・情報提供や仕掛け、インセンティブがあればサステナブルなアクション実践につながるのか、NEC、日本総合研究所、インテージの3社でWeb調査を2021年10月に実施した。回答者には、45個のサステナブルな行動をどの程度しているかにより、Super(サステナブルな行動先導層)、High(サステナブルな行動積極層)、Moderate(サステナブルな行動肯定層)、Low(サステナブルな行動消極層)の4層に分類することでインテージ独自の「サステナブル行動セグメント」を付与している。

 カーボンフットプリントのように、商品ごとのCO2排出量を可視化することに対してのニーズがどれだけあるかを把握するための設問の結果を抜き出した(図表3)

図表3 商品・サービスごとのカーボンフットプリントの可視化ニーズ
図表3 商品・サービスごとのカーボンフットプリントの可視化ニーズ(タップで画像拡大)
©2022 SHOEISHA Co., Ltd./INTAGE Inc.(MarkeZine vol.82)

 地球環境に配慮した商品・サービスの購入経験者に聴取した購入理由で最も全体で高かったのが「似たような商品を買うなら、地球環境に貢献できるほうが良い」であった。そして、もし地球環境に配慮した商品とわかる表示があった場合、「表示がある商品を、積極的に購入したいと思う」もしくは「表示がある商品とない商品を比較して、購入を判断する」を合わせた割合はModerate層でも約44%おり、生活者の5割はサステナブルな商品を比較検討する気持ちがあることがわかった。

 しかし、企業がサステナブルなものとして提供している商品・サービスについて「どの程度地球環境に配慮して作られた商品なのか、わからない」と考えている生活者が3割おり、その商品・サービスを購入することでどれぐらい環境保護に貢献しているのかわからないことが、サステナブルな商品・サービスを購入検討するにあたっての不満と考える生活者が一定数いることがわかった。

 このように、サステナブルなものに対して関心はある一方で、どの程度貢献しているのか見えにくいためそれを可視化するというニーズがあることがわかった。このことから、商品ごとのカーボンフットプリントの可視化と、それらを購入するといった行動をしていくことで、どれだけ自身が環境保護に貢献しているのかを可視化する、ということがサステナブルな行動に関心がある層に行動変容を起こすための一助になると言えるのではないだろうか。

 そして、そのような自分の購買履歴などの行動履歴から自身がどの程度地球環境に配慮しているのかが見えるサービス、いわゆる「CO2家計簿」の利用意向の結果が図表4である。

図表4 自分の行動履歴による「CO2 家計簿」の利用意向と提供目的の受容性
図表4 自分の行動履歴による「CO2 家計簿」の利用意向と提供目的の受容性(タップで画像拡大)
©2022 SHOEISHA Co., Ltd./INTAGE Inc.(MarkeZine vol.82)

 全体でも6割以上が自身の行動がどれほど環境に影響を与えているのかを知りたいと、「CO2家計簿」の利用に関心があることがうかがえる。そのうち全体の5.3%を占めるSuper層では、そのサービスに必要な行動履歴のデータを提供することについて、金銭的インセンティブがなくとも自身の行動を可視化したり自身に合った情報提供がされたりすること自体をインセンティブと捉えている。一方で、残り約95%のHigh層以下ではサービス便益がSuper層ほどインセンティブとならないため、サービスを利用してもらう最初のきっかけとして金銭的なインセンティブを与えるなどの施策をとることが考えられる。

「CO2家計簿」普及への課題

 いわゆる「CO2家計簿」のようなサービスは出てきているが、その方法はアンケート形式や明細の数字などを入力するなどの人力による方法が主流で、算定の正確性や簡便性などの観点から課題となっている。今後、GX実現のために企業間でのデータ共有が推進されていくと予想されるが、そのデータを個人に紐づけて集約し活用することで生活者個々人が行動変容を起こしていくことができれば、生活者がサステナブルな商品・サービスを提供する企業への意識も高まり、社会的価値を経済的価値に変えていく一つの方法になるのではないだろうか。

 インテージでは、今後も引き続き「CO2家計簿」の推進のための調査研究活動を継続していく予定だ。

調査概要<定量調査(Webアンケート)>

調査地域:全国対象者
条件:20~59歳の男女、スマートフォン利用者、サステナブルセグメント“非該当”を除く
割付:性年代均等割付標本
抽出方法:「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2020年度実施国勢調査データの構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=2,697
調査実施時期:2021年10月15~19日

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この記事の著者

伊藤 直之(イトウ ナオユキ)

株式会社インテージ 事業開発本部 先端技術部 エバンジェリスト

2008年、インテージに入社。 クライアント企業の社内外データ利活用基盤構築やマーケティングリサーチ、デジタルマーケティング領域での新規事業開発に従事した後、現在は主に個人起点のパーソナルデータ流通領域における啓蒙・啓発活動や、「情報銀行・PDS」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/10 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40380

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