カードの切り替えまでにブランドへの意識を高めておくことが重要
鈴木:2021年はいかがでしたか。
土谷:プラチナ・カードの価値である「旅行や外食での特別な体験」を提供する機会が途絶えてしまったわけですから、会員様に別の保有メリットを感じていただけるよう、その時の状況に合った特典を加えていきました。

土谷:具体的には、会員様限定で予約が困難なレストランのデリバリーサービスを実現しました。サービスを告知するCMのクリエイティブも、上質な世界観を打ち出した従来のものから家族団らんを表現したものに変更。「アメックスのカードを持つことで、行動制限下でも日常に華を添えることができる」というメッセージを訴求したのです。
2021年秋にはワーケーション編のCMも放映しました。家族でホテルを訪れ、日中は母親が仕事をする傍らで父親と子供が遊んでいる様子を描いたCMです。旅行以外のホテルの楽しみ方を訴求するとともに、ご家族でカードを利用していただく狙いがありました。
鈴木:SHOP SMALLや名店のデリバリーサービス、ワーケーションの訴求に対するユーザーからの反響はどのようなものでしたか。
土谷:SHOP SMALLはキャッシュバックがあったため、SNS上で盛り上がりが確認できました。会員様のご利用金額も上がり、定量的な成果にもつながった施策です。
ワーケーション編のCMは、新規顧客向けにサービスの認知を広げるブランド広告という位置づけのため、CMを見たからといってすぐに入会してもらえるとは考えていません。クレジットカードという商材は、ライフサイクルが長い点に特徴があります。カードの切り替えタイミングは1年単位で訪れるため、それまでにブランドへの意識を高めておくことが大切なのです。
カードの保有がゴールではない
土谷:メディアに出稿する際は「ブランド検討率」をKPIに設定し、アメックスへの入会を考えていない方に「検討候補に入れようかな」と思っていただくことを目指しています。実際、広告に接触した方と接触していない方でブランド検討に生じる変化を調べたところ、広告に接触した方のほうが高い検討率を示しました。
また、クレジットカードを持っていただくことがゴールではありません。一人あたりのクレジットカード保有枚数は平均3枚と言われている中、最も使う頻度の高いカードになる必要があります。
鈴木:「アメックスの保有・利用を通じて顧客の課題を解決する」というコミュニケーションは、コロナ禍を経ても変わらないわけですね。2022年に入ると、状況がまた変わったのではないでしょうか。
土谷:そうですね。2022年春に緊急事態宣言が解除された後、「やっと会えた編」のCMを放映しました。子どもが生まれても遠くに住む親と会わせることができなかった男性が、コロナ禍の落ち着いた頃にアメックスを使って温泉旅館を予約し、家族と両親で旅行を楽しむストーリーです。この頃から、人との出会いや外出を描いたクリエイティブへと徐々に切り替え始めました。