TikTokは消費の起点になり得る存在
今回紹介する書籍は『TikTokビジネス最強の攻略術 フォロワー"0人"から成果を出すSNSマーケティングの新法則』。著者は株式会社Z世代の代表であり、企業のTikTok運用を支援している前薗孝彰氏です。
前薗氏は北里大学大学院修了後、大学職員や広告代理店での勤務を経験。2019年に始めたTikTokでは、投稿した動画が短時間のうちに約900万回再生され、24時間でフォロワー数が10万人を突破したそうです。この実績が評価され、TikTok社主催のクリエイター向け講座「TikTok Creator Academy」などでも登壇しています。
本書の第1章では、前薗氏がTikTokをはじめとする様々なソーシャルメディアの概況を語っています。第2章では、TikTokのビジネス活用の可能性について解説。第3章以降では、TikTokのアルゴリズムを踏まえたコンテンツ作りのノウハウを紹介しています。
前薗氏は冒頭、いまだに多くの人が持つ「TikTokは若年層向けのメディア」という認識について、的外れだと指摘します。
日本にはじめて上陸した2017年頃、TikTokは女子高生を中心としたダンスやリップシンクといった動画を配信するアプリとして広がりました。〈中略〉こうしたイメージから、今でもTikTokと聞いて「可愛い女の子がダンスを踊っているアプリ」みたいに言う人がいます。しかし、それは大きなまちがいです。(p.20、21)
前薗氏によると、今では教育系動画やインフルエンサーによるお気に入り商品・サービスの紹介動画、マスメディアによるニュース動画など、様々なジャンルの動画が投稿されています。つまり、TikTokは若年層のみならず、多様な層にアプローチ可能なチャネルになっているというのです。
また『日経トレンディ2021年12月号』の「2021ヒット商品ベスト30」特集内で「TikTok売れ」という言葉が登場するなど、TikTokが「消費の起点になり得る存在」との認識は徐々に広がっており、企業のTikTok参入は今後一層、加速すると見られています。では、TikTokのどのような媒体特性がビジネス、特にマーケティングと相性が良いのでしょうか?
Cookie規制が進む中、TikTokの価値は一層高まる
前薗氏が挙げるTikTokの特徴のひとつが「TikTokではフォロワー数が少なくても“バズる”
そして、このレコメンド機能はターゲティングを行う上でも有効です。個人情報保護強化の流れが強まる昨今。Cookieの利用規制が進むことで、ターゲティングはより困難になると予想されます。しかしTikTokであれば、AIが関連性のあるユーザーに動画をレコメンドしてくれるため、企業は引き続き自社と親和性の高いユーザーに商品を訴求することが可能です。
こうした背景から、前薗氏は「TikTokがマーケティングファネルの『認知』を獲得できるツールとして今後さらに存在感を発揮する」と語ります。
TikTokのアルゴリズムを理解する
TikTokをマーケティングに活用するにあたり、重要なポイントが「アルゴリズムへの理解」です。TikTokでは、フォロワーやハッシュタグ、メンションなどを基に、AIが「その動画ジャンルに関心の高いユーザー」を抽出。彼らにまず動画を届けます。そして、彼らから“高い評価”を得られると、次に関心の高い層へと段階的に拡散されていく。これがTikTokの動画拡散の流れです。
では、この高い評価はどのような指標に基づくものなのでしょうか。前薗氏は、8つの指標を挙げます。
1.平均視聴時間
2.視聴完了率
3.いいね率
4.コメント率
5.シェア率
6.保存率
7.フォロー率
8.アカウント全体の滞在時間
これらの指標のうち、前薗氏は特に重要なものとして「平均視聴時間」「視聴完了率」を挙げます。平均視聴時間は、ユーザーが対象の動画を平均何秒視聴したかを示す指標で「動画が長ければ長いほど高い数値が出やすい」といいます。一方、視聴完了率は動画を最後まで視聴したユーザーの割合を示す指標で「動画が短ければ短いほど、高い数値が出やすい」とのことです。
平均視聴時間と視聴完了率の両方を伸ばすことは困難なため、前薗氏は「投稿者が作りやすい動画」を基点に考えれば良いと語ります。つまり、視聴者を飽きさせないような離脱率の低い動画を作ることができるのであれば長編動画、できないのであれば短編動画が最適解というわけです。
本書ではほかにも、“バズる”動画を作るための動画撮影・編集術や、企業によるTikTok活用事例などを紹介しています。「TikTokをマーケティングに活用したいが、どこから手を付ければ良いかわからない」そんな悩みを抱えたマーケターの方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。