心理的安全性があれば、自分の気持ちを話せる
――では、そうした環境をキープするために、ケラッタで意識していることはありますか?
「心理的安全性」がとても大事だと思っています。自分の意見やニーズをきちんと言えること。何かが引っかかったときに、すぐに伝えられないと、もやもやした気持ちが溜まっていってしまいます。
ただ、控えめなメンバーも多いので意見を引き出すことを特に心がけています。私は東京から日帰りすることも多いですが、松本にも家を借りていて、できるだけ皆の顔を見ながらやり取りしています。
現地に行けないときでも、月曜の朝会で必ず全員の顔が映るようにしてオンラインで話し、その後の部署ごとの打ち合わせにも顔を出しています。やはり従業員のエンゲージメントが、言い換えると触れ合いが、いちばん大事だと感じています。
――反対に、ケラッタに参画して下村さんが気づいたことはありますか?
先ほどの働き方の話とも関連しますが、ものづくりは“リアル”が重要なビジネスなんです。たとえば、コールセンターにお客様からどんな電話があって、担当者がどう対応しているのかを同じ部屋で聞くのと、あとから報告を受けるのとでは、情報の密度が違います。一方で、ケラッタは非同期コミュニケーションをほぼしていなかったのですが、ツールの活用で効率化されつつあります。その過程でリアル対応したほうがいいこと、そうでないことの切り分けが必要だとわかりました。
ケラッタの生産拠点は海外が多く、今後も拡大します。するとリモートワークも増えてくるので、MOON-Xとの統合は、品質が担保できて皆も働きやすい形を模索するきっかけになりました。M&Aの際はどうしてもカルチャーギャップが生じますし、統合直後に皆にそうした話はしていましたが、結果として社員が1人も辞めていないので、一定のメンバーの満足度は得られているのではないかと思います。
透明性の高い環境を作っていきたい
――最後に、今後の展望をお聞かせください。ケラッタおよびMOON-Xでは、DE&Iの観点で中長期的にどういった点に注力していきますか?
まず、女性が活躍する機会をどんどん意識的に作っていきたいです。MOON-Xのミッション「ブランドと人の発射台」の通り、日本経済をけん引する女性リーダーを育成することと、女性メンバーの働きやすさもさらに改善していきます。ケラッタに関しては中国や韓国などとのやり取りも多く、それらを母国語で担ってくれるメンバーもいるので、その部分での採用・育成や多様性の維持にも引き続き取り組みます。
幹部の立場としては、先ほどの心理的安全性を保てるように、透明性の高い環境作りも進めていきます。Slackなどでの社内のやり取りも、よほどの機密情報以外はすべて誰でも見られるようにしているんです。
将来的には、保育園を併設したいですね。これから出産を考える年代のメンバーが多いので、安心して働き続けられる環境を整えたいです。
――保育園の併設、すばらしいですね! 下村さんご自身は、これからどのような働き方や生き方をしていきたいとお考えでしょうか?
約20年、働いてきて、私にとって仕事は自分の礎です。同時に子どもを育てながら、共感力と想像力を彼らにも持ってもらいたいといつも思っていますし、そうした環境や社会で彼らが生きられるようにしたいですね。