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「紙」と「Web」の二軸体制に
酒井:CanCamでは、2016年より紙の雑誌とWebの二軸体制をとっていますね。雑誌とWebの役割はそれぞれどのように位置づけられているのでしょうか?
加藤:一般的には「紙の雑誌にはオーソライズされた情報が書いてあって、Webのほうはなんでもあり」みたいなイメージがあると思います。でも、その感覚はCanCamではまったく通用しないんです。
見る人にとっては、Webや動画もCanCamの一部。ちょっと外したことをやってしまうと、すぐに「公式がこんなことをやっている」と炎上する。CanCamとしてのブランド力を保ちながら、Web上のプラットフォームに適したコンテンツを出していくのがWeb担当の役割だと感じています。
安井:ブランディングの部分は、主に紙の役割だと思っています。その意味では、新しいモデルやタレントを発掘したりするのも紙で行うのがベターという考えですね。
ただ、紙だけで通用するとは思っていなくて、紙の内容をSNSやYouTubeに展開できるような仕組みは必要です。そうでないと、お互いの行き来がなかなか生まれないので。
たとえばWebでバズりそうな企画を本誌でも取り上げて、両方のメディアで使えるようにしよう……みたいなことは、日々意識していますね。
佐藤:紙媒体とWeb媒体の協働というか、相互作用みたいなものは、コンテンツの方向性にはどのように反映されているのでしょうか?
加藤:たとえば誌面でも「Aさんという人、Bさんという人のどっちを出そう?」となったときに、Bさんのほうがリリースを出したときにニュースサイトが多く取り上げてくれるだろうし、YouTubeでも反響があるだろうし……といったWeb的な要素は、判断の大きな部分を占めるようになっていますよね。
安井:加えて、Webのほうが当たったワードがはっきり出ますよね。こういう人が当たるとか、「骨格診断」の企画が当たるとか。
そういう反響がリアルにわかるので、そこで得た情報を誌面にも反映すれば、先ほども言ったようにWebへの流用も増えるし、お互いにWin-Win。なので、Webで当たった言葉は、折に触れて取り入れるようにしています。
「量産型」から「あか抜け」へ
酒井:「Webから誌面に逆輸入される言葉が増えてきた」というのは注目すべき流れだと思います。そのなかで、とりわけ何度も特集で組まれているキーワードはありますか?
安井:「あか抜け」という言葉は、とてもよく使っている印象がありますね。
佐藤:確かにそうですね。「あか抜け」は、2016年からぐっと増えてゆき、20年代に入ってからも安定して登場回数が多い。これは、Web発の表現なのでしょうか?
加藤:元々「あか抜けるコツ」みたいなものを誌面で紹介していくという姿勢は、CanCamのベースとしてあるんです。ただ、それを「あか抜け」という言葉でタイトルに打ち出してきたかというと、そうでもなかった。
でも、YouTubeなんかを見ていると、「あか抜けコンテンツ」がすごく人気になっている。なるほど、今の読者層には「あか抜け」というストレートな言葉が響くんだなと思って、特集のタイトルに取り入れてみたら、やっぱり反応が良い。そこで、リピートしている……という流れですね。
酒井:以前、ヤフーさんと一緒に時系列で検索キーワードの推移を見ていたときに、「量産型」という言葉の検索数がこの2~3年で急増しているのが印象的だったんです。それも、18歳くらいの、ちょうど大学に入るタイミングの女性が「量産型女子になりたい」みたいな文脈で検索している。これは、「あか抜け」へのニーズとも関連すると思いますか?
安井:「量産型女子になりたい」というのは、「(ファッションやメイクの)スタンダードが知りたい」というようなニュアンスですよね。個人的には、「量産型」の先に「あか抜け」があるのかなと思っています。
私たちは「社会人になったらCanCam」と言っているのですが、そこには大学生までは「量産型」でも、社会人になったらそこから一歩抜け出して「あか抜け」よう……というメッセージが込められていたりもします。
酒井:なるほど。「あか抜け」を「量産型」の上位互換と解釈すると、しっくりきますね。