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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

AIやXRによって高まる「人間性」の価値 相変わらずカオスなSXSWは未来へのヒントに溢れていた

“ハグ”すらデータ化された時、我々にどんな感情が生まれるか?

 私たち電通は、Creative Industries Expoの一角に、「Unnamed Sensations(まだ名もなき新しい感覚)」をコンセプトにしたブースを出展した。そこで展示した3つのプロトタイプを紹介させていただきたい。

1.Hugtics(ハグティクス)

 自分で自分を抱きしめる、ベスト型ハグ体験テクノロジー

2.Phantom Snack(ファントムスナック)

 食べていないのに食べているような、新しい咀嚼体験システム

3.Transcentdance(トランセントダンス)

 記憶に残したい「匂い」を可視化する、ダンスARコンテンツ

 私がコンセプトを決めるときにいつも大事にしているのは、そこから議論が生まれるかどうか、ということだ。日本人がSXSWに参加するときにもっとも犯しやすい間違いは、「答えを探してしまうこと」だと考えている。SXSWに答えはない。あるのは「議論の過程」だ。

 電通が展示したプロトタイプの1つに、研究者の髙橋宣裕氏とコラボした「Hugtics」がある。これはテクノロジーによって、時間、距離、概念までを超えた新しいハグに進化させ、世界にひとつでも多く幸せのはじまりを生み出していくプロジェクトである。人工筋肉が編み込まれたウェア型デバイスを着て圧力センサー付きトルソーを抱きしめることで、ハグのデータを計測、それを人工筋肉にフィードバックすることで、自分で自分を抱きしめるという未知の体験を実現している。これがあれば、ハグをデータとして保存・転送できる

 ここで重要なのは、ハグを再現するテクノロジーそのものではなく、これを体験した人がどんな気持ちになったか、どんな意見を持ったかである。ハグですら保存・転送できるようになった時代にどういう新しい感情が生まれるか

 たとえば、自分の大切な人が亡くなってしまったとき、その人のハグを再現することが可能になることで、”寂しい“という感情に少し変化が起こるかもしれない。自分を別の自分が抱きしめてくれることで、新しい「自己肯定感覚」が生まれるかもしれない。SXSWではプレゼンテーションの演出の一環でエンタメ性をもたせた展示をしているため、参加者たちは楽しそうに自分自身を抱きしめる体験をしてくれる。しかしそれで終わりではなく、体験者がどんな気持ちになったか、どんな思いを持ったかを聞いてみると、とても大きな発見がある。その議論の過程がなによりも大事なのである。

 テクノロジーが身の回りに溢れる時代において、まだ名もなき新しい感覚がどう生まれて、我々の人間性にどう影響を与えていくのか。それを問いかけるための3つの展示から、自分たちとしても大いなる学びを得ることができた。

SXSWは議論を交わし、可能性を共有する場

 異なる宇宙が重なりあうSXSWを一言で表現するのは難しいが、あえて言い表そうとすると、「議論を交わし、可能性を共有する場所」だ。テクノロジー的に作り込まれた完成品を持っていくのではなく、プロトタイプでもいいから自分たちなりの仮説をしっかり持って、また、みんなの議論を入れ込むための「余白」を残してSXSWへと足を運んでほしい。そこで起きる会話や発見のプロセスが本当にワクワクする。

 最後に、SXSW 2023の現地で偶然再会したブラジルの友人からの言葉を借りて、本記事を締めくくりたい。

「なんだかよくわからないことを浴びるために来ている。それが一番好きなんだ。」

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この記事の著者

佐々木 康晴(ササキ ヤスハル)

株式会社 電通グループ グローバル・チーフ・クリエーティブ・オフィサー、株式会社 電通 統括執行役員(クリエーティブ)

コンピュータサイエンスを学び、入社後はコピーライターに。電通のインタラクティブ・クリエイティブ部門の創設メンバーとなり、電通アメリカのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、第4CRプ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/06 09:30 https://markezine.jp/article/detail/41798

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