コロナ禍を経て「買う前に調べる」が定着
昨今、消費者が商品の情報を容易に収集できるようになった。それに加えて、コロナ禍ではECが普及。デジタル上での顧客接点の多様化が急速に進んだといえる。こうした中、株式会社ReviCoの高橋直樹氏は、「人々の消費行動が大きく変化している」と話す。
「インターネットで情報を入手しやすくなったことにより、商品の質感や使用感を事前に知っておきたいと考える消費者が増えました。コロナ禍でEC利用が拡大したことで、その傾向はさらに強くなり、購入前の情報収集は今や一般化しています」
消費者が情報を収集する過程、とくにインターネットにおける「検索」については、Googleが2019年に行った調査を踏まえ「Think with Google」にて興味深い発表を行っている。
「消費者がインターネット上で商品を検索する際、選択肢を広げてから目星をつけ購入に至ると考えがちですが、実際には異なります。
Googleの調査チームは、消費者が『選択肢を広げる検索行動』と『選択肢を絞る検索行動』を交互に繰り返していると述べています。そして、同社はこの左右に弧を描く情報探索行動の様子を『バタフライ・サーキット』と名付けています。
商品を絞り込む途中で気になる情報があれば、再び選択肢を広げる。その中で良い商品を見つければ急に購入を決定するなど、消費者の検索行動は非常に複雑なのです」
バタフライ・サーキットの考えかたでは、選択肢を広げる検索を「さぐる」、選択肢を絞る検索を「かためる」としている。「さぐる」には「気晴らしさせて」「学ばせて」「みんなの教えて」「にんまりさせて」、「かためる」には「納得させて」「解決させて」「心づもりさせて」「答え合わせさせて」という、8つの検索動機が隠れている。
事業者は、これらの動機を満たすコンテンツをデジタル空間上に用意しておかなければならない。そのひとつとして、高橋氏はレビューを挙げた。
「ECでは商品のサイズやスペックなどがわからず、誰しも不安を感じますよね。そのため、第3者による商品のレビューが、情報収集の段階にいる消費者にとって重要なコンテンツとなります。
また、レビューは消費者が自発的に発信する情報です。レビューが増えれば、それだけ商品の情報が増えます。つまり、事業者が商品の情報を用意する手間を省くことができるのです。ときには厳しい意見を受け取ることもありますが、サービス改善に向けたヒントととらえることもできるでしょう」
こうしたレビュー機能のメリットに気づき、すでに導入している事業者も増えている。しかし、十分に活用できているかというと、実情は違うようだ。
「レビュー活用においてまず事業者がつまずくのは、その収集です。レビューの投稿欄を商品詳細ページや購入履歴ページに用意している自社ECを見かけますが、1度購入した顧客が同じ商品のページに戻ってくることは少ないでしょう。そのため、せっかく投稿欄を用意しても、レビューが集まらないのです」
一方、商品を比較購入するためレビューがより重要視されるモールでは、別の課題があるという。
「モールの場合、レビューを投稿した顧客にプレゼントを送るなどの施策を行います。しかし、同様の施策を継続的に行うことは事業者にとって負担が大きく、利益率も下がります。他社との競争に勝つために『やらせ』も横行しており、レビューに対するそもそもの信頼度も低くなっています」