芯はブラさない、それ以外は柔軟に変えていい
磯山:創業から5年。当初から変わらない部分と、変えてきた部分があると思います。
田中:基本に忠実でありつつ、期待を上回るサプライズを届けて飽きさせない。バランス感の調整がすごく難しいですね。
磯山:世の中のトレンドもどんどん変わるじゃないですか。たとえば、最近だとInstagram以外にもTikTokが伸びてきたりしています。
田中:お客様の知りたい情報や見たいコンテンツに合わせて、柔軟にフォーマットを変える必要があると思います。昔はInstagram一辺倒だったのが、今はTikTokやYouTubeなど動画経由の流入も増えています。
磯山:2022年春には、試着専用の路面店をオープンされましたね。
田中:やはり「試着したい」という声が多かったので、5ヵ月限定でオープンしました。今は、コロナが落ち着いてきたこともあり、オフラインもこれまで以上に重視しています。
路面店をやってみて、お客様とスタッフのつながりを強く感じました。最終日には、帰り際に泣きながら何度も手を振ってくださった方もいました。
磯山:なかなかないですよね。そんなに思い入れを持ってくださることって。
田中:「ブランドとしてこうありたい」という思いがあれば、お客様に寄り添い切ることやお客様に満足いただくような接客をすることは、オフラインでもオンラインでも同じ体験を提供できるんだなと学べたのは大きかったですね。
磯山:これまで広告露出はそこまでしていなかったと思いますが、近年は広告も目立つようになりました。どのような狙いがあったのでしょうか。
田中:小柄さんはオンラインで服を買うことに抵抗のある方が多く、1回広告を見ただけで購入することはとてもハードルが高いんです。だから、広告で興味を持ってもらった先の受け皿が必要になります。たとえば、Instagramにたくさんの写真が載っているとか、毎日ライブ配信をしているとか、そういう状態ですね。
創業当初はその体制が整っていなかったので広告をそこまで打っていなかったのですが、ここ数年で受け皿も整い、一度ご購入いただいたお客様の継続率が非常に高いこともわかってきました。そこで、まずは認知を取って1回購入してもらうために、オンライン広告に加えてテレビCMの出稿、東京ガールズコレクションへの出場などを始めました。
小柄さんの人生に寄り添うブランドに
磯山:「COHINA」は、顧客にとってどんなブランドでありたいですか?
田中:お客様の人生に寄り添うブランドになりたいです。お客様の人生に様々な転機が訪れると思いますが、そのどのシーンでも、COHINAが側にいられるようになったら良いなと思います。
たとえば、小柄さんのウエディングドレスのサイズや丈って、すごく難しいらしいんですよ。そういう大切なシーンで「COHINAさえあれば大丈夫」と信頼して選んでもらえるブランドでありたいとずっと思っています。
磯山:人生の様々なシーンにCOHINAが寄り添うんですね。
田中:好きな人とデートに行くときも、告白されたときも、プロポーズの日もCOHINAの服を着ていました、とメールをいただいたこともあります。たぶん子供もCOHINAになると思うのでよろしくお願いしますと。やはり嬉しいですよね、そういうのは。
磯山:親子でCOHINAユーザー。年齢層が幅広いんですね。
田中:2022年2月には、より大人の方向けの「STRATA」という新ブランドも立ち上げました。COHINAのお客様は、まずはスタンダードな洋服を着てみたいという方が多くいらっしゃいます。しかしCOHINAを通じて、「洋服選びが楽しくなってきた」「もっとトレンドのものを着てみたい」など、次のステップに進みたいという方も増えてきています。お客様に寄り添い、ともに成長するブランド展開を行っています。
磯山:今後、目指していることはなんですか?
田中:最終的には、自分が社会にフィットしないからと何かを諦める体験をなくすのが理想です。「ないなら作ってしまおう」と動き出す人が増えたり、人それぞれの個性を活かせる商品が広まったり、品物や手法は変わっても「COHINAという概念」が世の中に広まればいいなと思っています。

編集後記
COHINA代表の田中さんにお話を伺うことができました。取材の中で、常にユーザーのことを「小柄さん」という表現で話しているのが印象的で、小柄なご自身が感じていた似合うお洋服がない原体験をもとにブランドを作られていることが、リアリティがあり安心を提供するファンとの関係の強さになっています。ユーザーさんからのお問い合わせには目を配り、ときには田中さんご自身が回答することやブランドをユーザーと共に共創するという姿勢からCOHINAさんが「小柄さん」に愛されるブランドになっていると感じました。ありがとうございました。