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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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決済データで市場を紐解く!三井住友カードの「Custella」(AD)

年間パス購入者の特徴を抽出し、有望層の予測モデルを作成 USJ×三井住友カードのデータマーケティング

 数多くのゲストが来場する「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」。新しいエリアやアトラクションは、オープンするたびに大きな話題を呼んでいます。同パークを運営するユー・エス・ジェイでは、年間パス保有者数の拡大を目指し、ファーストパーティデータとサードパーティデータを掛け合わせ、有望層の特徴把握や新規購入者の予測を推進しているようです。本記事では、具体的な分析内容と得られた示唆を紹介します。

年間パス保有者数の拡大に注力

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは皆様の自己紹介をお願いします。

荒木(三井住友カード):三井住友カードのデータビジネスプランナーとして、各クライアント様が抱えているマーケティング課題に対し、キャッシュレスデータを用いた解決施策のプランニングを担当しています。

杉本(三井住友カード):私はデータアナリストとして、ビジネスプランナーから受け取ったプランを基に、キャッシュレスデータを用いた分析業務を担当しています。

石川(三井住友カード):私も同じくデータアナリストとして、企業・自治体の分析業務を担当しています。

篠(三井住友カード):私はデータサイエンティストチームに所属しており、主にAI機械学習を使った分析を担当しています。

(左から)荒木仁志氏、杉本夏実氏、石川亨氏、篠佑基氏
(左から)荒木仁志氏、杉本夏実氏、石川亨氏、篠佑基氏

岩崎(USJ):私はユー・エス・ジェイのデータドリブンマーケティングチームに所属しています。より良い形でベストな体験をゲストに提供すべく、顧客データの分析や戦略立案などを行う立場です。

豊島(USJ):私も岩崎と同じチームでデータマーケティングを推進しています。

(左から)岩崎学氏、豊島拓巳氏
(左から)岩崎学氏、豊島拓巳氏

MZ:年間入場者数のV字回復を成し遂げるなど、マーケティング先進企業のイメージが強いユー・エス・ジェイですが、直近で注力している取り組みを教えてください。

岩崎(USJ):ゲストにユニバーサル・スタジオ・ジャパンを長く選び続けていただくため、ロイヤルティの高い年間パス保有者を増やすことに注力しています。2022年11月には年間パスを一新し、ゲストの楽しみ方に合わせて「グランロイヤル」と「スタンダード」の2種からグレードを選べるようにしました。前者では多彩な特典を用意し、より気軽にパークを楽しみたいゲストのニーズに対応した券種が後者です。

ユニバーサル・プライム年間パス
【クリック/タップで拡大】

自社データだけではパーク外の傾向を掴めない

岩崎(USJ):年間パスの保有者を増やすためには、ゲストを深く理解し、ペルソナを精緻に描く必要があります。これまでも「Clubユニバーサル」という自社会員基盤のデータを活用しながら顧客分析を行っていましたが、ファーストパーティデータだけでは得られる示唆に限りがあり、パーク外の傾向を掴めない点に課題を感じていました。

 広い領域をカバーしたサードパーティーデータを求めていたところ、元々提携カードなどでお付き合いのあった三井住友カードさんから声をかけていただいたのです。渡りに船のお申し出で、キャッシュレスデータを活用した分析に取り組み始めました。

MZ:今回の分析には三井住友カードのデータ分析支援サービス「Custella Analytics」を活用したとうかがっています。まずは分析の全体像から教えてください。

石川(三井住友カード):「アナリストパート」と「サイエンティストパート」の両輪で分析を行いました。アナリストパートでは年間パス保有者の特徴を明らかにし、ロイヤルティの高い「有望セグメント」を抽出。サイエンティストパートではさらに一歩踏み込んで「年間パスを購入する可能性のある人」を予測しました。

有望層のヒントは「エンタメ好き」にあった!

MZ:アナリストパートを担当した杉本さんから、具体的な分析内容を紹介いただけますか。

杉本(三井住友カード):アナリストパートでは2ステップで分析を行いました。第1ステップでは「パーク来場パネル」と「非来場パネル」の消費の違いを明らかにし、第2ステップではパークのゲストを「年間パス購入者」と「非購入者」の二つに区切って違いを明らかにする流れです。

杉本(三井住友カード):第1ステップでは明確な傾向が見られました。パークに来場する方は「余暇はアクティブに過ごしたい」「買い物が好き」などの特徴を備えており、ファミリー層の場合は教育関連の投資額が大きい点も共通項として挙げられます。さらに「過去に来場したが、直近は来場していない方」とパーク来場者の特徴を比較したところ、パーク来場者の「アクティブ性」「オフライン志向」が強い傾向も明らかになりました。

石川(三井住友カード):年間パス購入者・非購入者の違いを明らかにする第2ステップでは、正直に申し上げると苦戦しました。USJは老若男女を問わずあらゆる年代・居住地の方が来場する一大テーマパークです。スケールが大きいぶん、分析対象を適切にセグメンテーションしていかなければ特徴が出にくく、最初は示唆のある特徴や顧客像がなかなか掴めませんでした。

杉本(三井住友カード):分析を重ねていく中で、パーク来場者の「エンタメ好き」という共通項をエンタメのジャンルで細分化することにより、差異が掴めるのではないかと考えました。具体的には、アニメ・アイドル・観劇などのうち「どのエンタメが好きなのか」もしくは「あらゆるエンタメをアクティブに楽しむことが好きなのか」など、ゲストの嗜好性を紐解いた結果、年間パス購入者になり得る方の傾向や、消費単価の高いゲスト像が明らかになりました。

MZ:大規模なデータから分析の手がかりを見出せたのはなぜですか。

杉本(三井住友カード):私は日頃から分析対象に関連するSNSアカウントをフォローして、分析対象のファンをウォッチするようにしています。パークのコアなファンの中にはコスプレをしている方やアニメのイベントに何度も来場する方、クルーの追っかけをする方などが見受けられたため「“推し活”にヒントがあるのではないか」と考えていたのです。この考えを念頭に置いてセグメントを区切ってみたところ、仮説に近い結果が出てきました。

向こう3ヵ月の年間パス購入者をAIで予測

MZ:次に、サイエンティストパートを担当した篠さんから、具体的な分析内容を紹介いただけますか。

篠(三井住友カード):サイエンティストパートでは、二つの目標を掲げていました。一つは「今後の打ち手につながる示唆を出すこと」。もう一つは「ユー・エス・ジェイ様の事業における当社のカード情報の有用性を明らかにすること」です。

篠(三井住友カード):目標の達成に向けて、年間パス保有者の更新タイミングや、新規購入者の購入タイミングを予測しました。そうすればプロモーションの最適な実施時期を示せるとともに、「年間スタジオ・パス・プラス(※)」を当社のカード会員に提案する余地も生まれると考えたためです。

※USJの年間パスとクレジットカードが1枚になったもの

 具体的には、当社が保有する過去3年分の会員情報に基づき「3ヵ月以内に年間パスを購入する人」を予測するモデルを作りました。シーズンによって購入者数に変動が生じることを考慮し、データの抽出期間を3ヵ月ずつ過去へずらした六つのデータセットを用意してAIに学習させました。要は季節を理解させたわけです。

MZ:アナリストによる過去分析と、サイエンティストによる未来予測。二つのパートを組み合わせることで、より盤石な分析結果を導き出したのですね。

ゲスト目線の高い解釈性が豊かな示唆を生んだ

MZ:ユー・エス・ジェイのお二人にとって、今回の分析がもたらした価値はどこにありますか。

岩崎(USJ):元々ファーストパーティーデータを基に立てていた仮説の正しさを証明することができました。データ分析は「経験則に近い内容が8割出れば成功、意外な示唆が2割出れば大成功」と言われていますが、今回はその2割がしっかり出てきたと思います。

岩崎(USJ):たとえばアニメとパークの相性の良さについては、当社でも年間パス保有者の特徴から理解してイベント企画などにも反映していましたが、アニメ以外にも様々なエンタメや推し活を楽しむ方々が年間パスを持ってくださっていることが今回の分析でわかりました。非常に意義のある分析だったと思います。

豊島(USJ):私は今回、高い解釈性が分析業務にもたらす価値を強く実感しました。言い換えると「分析の末に導き出されたデータをどう解釈するか」という視点の重要性です。

豊島(USJ):テーマパークビジネスの場合、データサイエンティストがただ分析を実行するだけでは豊かな示唆を得られません。三井住友カードさんは分析結果とパークの実情や特徴をうまく掛け合わせながら仮説を出し、我々とのディスカッションを通じて仮説立案の精度を高めてくださいました。先ほどアナリストの杉本さんが「SNSをウォッチしている」とおっしゃっているのを聞いて合点がいきました。ゲスト目線の分析が、質の高いアウトプットにつながっているわけです。

データは変化を捉える最強のツール

MZ:今後、両社でチャレンジしたいことをお聞かせください。

岩崎(USJ):消費者の行動や価値観が多様化する時代において、データは変化を正しく捉えるための最強のツールだと考えています。三井住友カードさんと当社のデータを掛け合わせることで、ゲストから何が求められているのかを理解し、新たな価値を提供していきたいです。

豊島(USJ):今回の分析を通じて、パーク外におけるゲストの行動が理解できました。当社では「NO LIMIT!」というブランドスローガンの下、パーク内でNO LIMITな体験の提供に取り組んでいます。今後もデータを活用しながら、パーク内にとどまらず他の様々な業種業態でもNO LIMITな体験を届ける方法がないか考えていきたいです。

荒木(三井住友カード):今回の分析結果を踏まえ、年間パスを購入するゲストの拡大に引き続き協力していきたいです。年間パスとクレジットカードが一体になった年間スタジオ・パス・プラスもありますから、今後はより深く掘り下げた分析ができると思います。

荒木(三井住友カード):岩崎さんと同様、私もコロナ禍を経て消費の全体像が変わってきていると感じます。キャッシュレスデータを用いて今起こっている消費体験を紐解き、中長期的にUSJでの決済額増やゲストの満足度向上をご支援していきたいです。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:三井住友カード株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/10 10:30 https://markezine.jp/article/detail/41829