事例から見る、行動ステージの分析方法
では、行動のステージをどのように分けるべきなのだろうか。冨里氏は事例として、人材サービスにおけるマッチングプラットフォームのケースを解説した。
まず考えていくにあたって重要なポイントは、「ある行動をした人/していない人」で区別をすることだ。それを踏まえ、各行動ステージにいる人の行動を変化させることを目指す。人材サービスの場合は「マッチング数を増やす」ことが目的となり、KGIは「面談数」になる。しかし、いきなり面談数を増やそうとするのはハードルが高い。
そこで冨里氏は、面談に至るまでの求職者の行動を「レジュメを書く」「スカウトを受け取る」「スカウトを開封」「スカウトに返信」「面談の日程調整」の5つのフェーズに分割。これに対して、人事担当は「求職者を検索」「求職者を選ぶ」「スカウトを送る」「返信を確認する」「面談候補日を提案する」フェーズを経て、面談に進んでいく。このように行動に着目して分けていくと、誰がどこにいるのか、どこで止まっているのかなどが明確になるのだ。
冨里氏によると「レジュメを書く」段階で詰まってしまう求職者は多く、また人事側にも「自分たちが欲しい人材をどのようなワードで検索すれば良いかわからない」などの課題がよくあるという。
そこで同事例では「スカウトを受け取っていない人を、スカウトを受け取る人に変える」ことにフォーカスを絞って施策を検討。その結果、目標である「面談数増加」の数歩手前の段階である「スカウト自体の総量を上げ、スカウトを受け取ることができるユーザーを増やしていくこと」をゴールに設定したという。
行動に基づくセグメント分けの手順とは
求職者に対し、スカウトを受け取る行動を発生させるためには、当然企業側からスカウトを送る必要がある。つまり人事担当に求職者を選んでもらうフェーズが発生し、そこで送り先を検索・選定してもらわなければならない。
そこで「一定期間スカウトを受け取っていない人」をグループ分けした。さらに「企業側の検索結果一覧に表示されない人」「レジュメの詳細を見ていない人」「詳細を見ているがスカウトが送られない人」の3グループに分類し、対策を打ったという。
たとえば「企業側の検索結果一覧に表示されない人」には、企業がよく検索しているキーワードを共有。求職自身が該当するキーワードがあれば、レジュメにその文言を追加するように促した。また「詳細を見ているがスカウトが送られない人」には、レジュメのブラッシュアップ方法などのヒントを送ったという。
その結果、スカウトを受け取る人が増えたといった効果が出始めた。最終的には、1ヵ月間スカウトを受け取っていない人をセグメントに分け、それぞれ最適化されたテンプレートのメールを送るアクションを自動化させることに成功した。