ミズノが取り組んだ、野球用品のリブランディング
MarkeZineDaySpring2023で「ミズノに学ぶ、顧客起点のマーケティング改革 Z世代向けリブランディングでヒット商品が生まれるまで」と題し講演を行ったのは、ミズノ ダイアモンドスポーツ事業部でデジタル戦略担当を務める横山加奈氏。
同事業部は野球・ソフトボール用品を扱う部署であり、グラブ・バット・スパイク・ユニフォームなどに加え、球団のユニフォームといった権利品なども手掛けている。
同セッションで横山氏は、スパイクおよびミットのZ世代に向けたリブランディング事例を紹介。取り組みの結果、売り上げが大幅に上がりミットは店頭からなくなるほど話題になったという。横山氏はこの事例を、「取り組みに至った背景」「顧客分析」「リブランディング施策」の3つに分けて解説した。
「万能」というイメージゆえに差別化が図れない
スポーツ用品の市場の中でも、野球・ソフトボール用品のカテゴリーでは高校球児が特に重要なターゲット層となる。しかし、2010年のデータでは全国で約17万人いた高校硬式野球部員が、2022年時点では13万人程度にまで減少。右肩下がりが続いている状況だ。
これに対し、横山氏らはコンサルティング会社への相談やオンラインサロンの立ち上げ、アプリのリリースなど様々な手を打ってきたそうだ。その中で横山氏が自社のマーケティングの特徴として捉えたのは、次の3点。
まず1つ目は、マーケティングの大部分をBtoBの施策が占めているという点だ。ミズノというとBtoC企業のイメージを持たれがちだが、実際は小売店や大型ショップをはじめとしたBtoBが中心とのこと。そのためBtoCのマーケティングにあまり注力できていない、という点は課題でもあった。
2つ目は、マーケティングでは「シャワー効果」をメインの手法に据えて実施していたこと。同手法は、プロ選手など業界の著名人に商品を利用してもらい、その姿に憧れるユーザーに訴求していくトップダウン型のアプローチだ。
そして3つ目は、ミズノが「万能」「伝統」といった企業イメージを持たれていることだ。すべての商品が良質であるがゆえに、商品ごとの特徴が少ないものもあったという。「たとえばミズノのシューズだったら『軽いよね』『ミズノのグラブって硬いのに取りやすいよね』といった、機能的なイメージを作っていかなければならないと考えました」と横山氏。