導入がうまく進む企業・進まない企業の差とは
――実際に導入がうまく進む企業と進まない企業は、目的意識以外でさらに具体的にどこが違うのでしょうか。
伊佐氏:それはクライアント様自身が、自社の製品やサービスを使う「ユーザーや顧客をどれだけ深く理解しているか」に尽きます。具体的に「誰に対して何を伝えたいのか」の解像度が高ければ高いほど、我々もサポートしやすいですね。
まずはユーザーのペルソナが明確であること。そして、認知拡大か、認知から比較検討まで持ってきたいのかといったフェーズの確認です。そこが明確ですと「認知を上げるための施策」や「比較検討のフェーズに持って行く施策」という提案ができます。
――中小企業だからこそ、顧客理解が深いという強みを持っている企業様も多そうです。
伊佐氏:そうですね。マーケターと顧客との距離や、部署間の距離が近いのは中小企業の強みです。「顧客をもっと知りたい」というマインドセットで業務に取り組んでいると、ご自身、会社、顧客のすべてにとっていい関係が作れると思います。
また、部門連携のしやすさも中小企業のメリットです。たとえばウェビナーの実施後に見込み客に営業がどのように対応したのか、反応はどうだったのかのフィードバックをもらいやすい環境にあると思います。このように顧客のことをきちんと理解すると、実際にツール導入もうまく進みます。
HubSpotの場合も日本法人はグローバルと比較すると組織が小さいので、営業、カスタマーサクセス、サポートがお客様への価値提供について解像度高くイメージを共有し、各プロセスでのフォローが行いやすいと感じています。
また、やることの多い中小企業の方々の「時間がない」は、ツールを導入するとある程度解決できます。効率化ができると「もっと顧客に時間を使おう」と考えられるようになる。良いループにつながると思います。
「あえていろいろ試してみる」気持ちも大切
――最後に、HubSpotではどのような支援をお考えか展望を伺えますか。
伊佐氏:企業規模を問わず役に立つツールを提供することを大前提としつつ、いかにUIを使いやすくできるかを考えています。その一環として2023年3月には、プライベートβでオープンAIの人工知能を活用したツール「ChatSpot」や「コンテンツアシスタント」を発表しました。ChatSpotはHubSpot製品の新しいUIの形です。たとえば「CRMにコンタクト数は何件あるの?」とか「ターゲットとなる業界のマーケティング部長をリスト化して」とチャットでリクエストするだけで、必要なデータを確認できるようになります。スキル不足が課題の企業様でも、簡単にデータ活用が可能になる画期的な取り組みです。
ソフト面ではグローバル市場のトレンドや、日本における買い手・売り手の変化、AIのジネス活用を含めた考え方を発信することでお役に立ちたいと思います。ユーザー様同士、マーケターや営業の方々がお互いから学び合えるようなコミュニティ作りをしたり、無料のEラーニングコンテンツ「HubSpotアカデミー」の提供をしたりしています。2022年には、日本リスキリングコンソーシアムに参画しました。
また、新しいテクノロジー出てきた時は、今まで頑張ってやってきたことが変わる怖さや使い方に不慣れなせいで「自分とはまだ関係ない」と思いがちです。しかし「あえていろいろ試してみる」というマインドセットがとても重要ではないでしょうか。
スマートフォンやタブレットの操作性を最初に体験した時に感動した方は多いでしょう。ビジネスにおいても、今までになかったテクノロジーと上手に付き合うことができれば、利用する人の幅や用途が一気に広がります。これから新しいツールやAIの使い方が世に出てくるでしょう。トライアンドエラーは企業にも顧客にもいいことだと思います。ツールをどう使って世の中を変えるべきかを一緒に考えられるコミュニティをしっかり作っていきたいですね。
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