マーケターとして身につくスキルにも違いあり?
──他にはどういった違いがありますか。
森:マーケティングの予算感もかなり違いますね。大手企業ではメンバーひとりで年間数億円以上を担当できることもあるので、手ごたえは大きいです。加えて大きな額の投資をしやすいので、よりスケールを出しやすい傾向にあります。
ベンチャー企業の場合は、まず小さな予算で始めるところからスタートしていくことが多いです。限られた予算で施策を打っていくので、「投資対効果へのこだわり」はより求められるかもしれません。また経営陣との距離が近いため、会社の全体像が見えやすいです。
山口:ベンチャー企業のほうがマーケティング担当者は少ないので、仕事の全体像がよく見えます。かつ業務が細分化されていない分、メンバー一人ひとりのスキルが多岐にわたりやすい点があります。また経営陣との距離が近いので、意思決定者とどうコミュニケーションをとればいいかも学べると思います。
森:社長との距離感も会社によりますね。ベンチャー企業に行きたい場合、社長の個性がより組織に反映されるので、事前に社風や経営陣の人柄を調べておくとよいと思います。
権限委譲と情報へのアクセスのしやすさがポイントに
──それぞれのメリット、デメリットを教えてください。
森:ベンチャー企業のほうが現場への権限委譲が進んでいることが多いと思います。社員数も少ないので、現場にどんどん動いてもらう。それがメリットです。デメリットは、事業数が少なく事業規模が小さい分、個人にナレッジが集約されてしまい、社内に溜まりにくいことでしょうか。
大手企業はその逆で、権限が分散しているためスピードは緩やかです。ナレッジは、あらゆる方向から倍々に溜まっていくので欲しい情報にアクセスしやすいです。
山口:大手企業は社員数も多いので、人から多くのことを学べる機会の絶対数が多いのもメリットだと思います。一方、社長など経営陣との距離の近さをメリットと捉えるなら、ベンチャー企業に利があります。結局は、自分自身がどこを目指すかに寄ってきますね。
森:ベンチャー企業は情報が世の中に出回っていない分、見極めの難易度が上がると思います。会社の成長フェーズがどのあたりにあるかによっても変わってきます。
──ベンチャー企業と大手企業の両方を経験したからこそのメリットも伺えますか。
森:両方経験したことで、「隣の芝生は青くない」ことを悟りました。仕事への向き合い方として、他社をうらやむくらいなら、今自分がいる環境でいかにベストを尽くすかが肝心だ、とブレないようになりましたね。
