「TikTok売れ」が起こる構造にヒントがある
余頃:もう1つのポイントは、「コメント欄のスレッド化」を企画段階で設計しておくことです。この点が、クリエイターとのコラボレーションで完結する従来のインフルエンサーマーケティングとは明確に異なります。
MZ:コメント欄のスレッド化とは?
余頃:TikTokで大きな話題となったり、TikTok売れに繋がったりしている例を見ると、それらには「コメント欄がスレッド化している」という共通点があることがわかります。クリエイターが発信した動画(情報)に対して、ファンや視聴者が「これどこに売ってるの?」「私もこれ買ったよ」「この店舗で商品見かけたよ」というように、コメント欄で会話をしているんですね。さらに言うと、「私もこれ買ったけど上手く使えない」といった悩みや質問の類のコメントに対して、ユーザーから返信が入ったりしていることもあります。我々はこの現象を「コメント欄のスレッド化」と呼んでいます。
明石:コンテンツ自体が1つの小さいコミュニティとなることで、興味関心を抱いた後の情報収集までそこで完結する。だから、TikTok売れが起こるわけです。TikTok運営会社であるByteDanceさんは、これを「興味からズドン」というふうに表現されています。
MZ:なるほど。TikTokをコミュニケーションに用いる時、企業は自社のアカウントを育てる必要があるのでしょうか。いちキャンペーンで単発的に活用する、というアプローチもありですか?
余頃:SNSの中でもTikTokに限った話ですが、最初は必ずしも企業アカウントを開設する必要はないと考えています。なぜなら、TikTokはフォロワーよりレコメンドの文脈が強いプラットフォームだからです。自社のアカウント基盤がなくても、コンテンツ1本1本の勝負で結果を出しやすいのがTikTokの特徴だと思っています。
もちろん、最終的には企業が自らクリエイターとなって、発信をし続ける(アテンションを生み出し続ける)のが理想です。ですが、自社アカウントを開設するとなると、社内で承認がおりるのに半年以上かかったりすることもありますから、まずはTikTokというコミュニティに入ってテストしてみることのほうが大事だと思います。
また、TikTokをキャンペーンの一部として用いる場合は、TikTokでは「広告枠を買ってリーチする」というアプローチではなく、エフェクトやハッシュタグチャレンジなどの手法を活用して、クリエイターとユーザーとダブルでUGCを広げていくような、お祭り的なアプローチを取ることが多いですね。
ヴィジュアルコミュニケーションをトータルで設計する
MZ:最後にワンメディアの今後の展望をうかがえますか。
明石:TikTok然り、広告・マーケティング業界には、今、新しい分野が登場しています。実は、アメリカでも韓国でも、この新分野でトップにいるのはいわゆる大手の代理店ではないんです。我々としては、これは非常に夢のあることだと思っています。

ワンメディアは、ただ動画を制作する会社ではない。ヴィジュアルコミュニケーションにおけるコンテンツを生み出す会社なのだと、言い続けてきました。たとえば、今後メタバースが本格的に普及してきた時、メタバース上でただ動画を流していても仕方ないですよね。そこではユーザーと共創するようなヴィジュアルコンテンツが主流にはるはずです。
とはいえ、何しろ新しい分野ですから、まだまだ「ワンメディアって何の会社なの? 動画制作?」などと言われることもしばしばあります。ですから、やっぱりよくわからないという方には、いったんTikTokに強い会社だと思っていただいて(笑)、ぜひ信じて任せていただければと思います!