【特集】明快な方程式がなくなった、メディアプランニングの今
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リーチより“アテンション”が物を言う時代
MarkeZine編集部(以下、MZ):2023年3月に明石さんの2冊目の書籍『動画大全「SNSの熱狂がビジネスの成果を生む」ショート動画時代のマーケティング100の鉄則』(以下、動画大全)が刊行されました。広告、マーケティング、ブランディングなど企業のコミュニケーションに関係するすべてのビジネスパーソンを鼓舞するように、動画というヴィジュアルコンテンツを武器として用いることの有効性が説かれており、刺激的な内容でした。
今回は、書籍の中でも最も多く字数を割いて解説されていたTikTokにフォーカスし、TikTokを含めたメディアプランニングのヒントを探っていきたいと思います。まずは、マーケティング・コミュニケーションのKPIについて。従来よりメディアプランは「リーチ」を重要KPIとして設計されてきましたが、明石さんは『動画大全』の冒頭で「アテンション」の重要性を説かれていますね。
明石:『動画大全』というタイトルの本で、いきなりアテンションの重要性を説いているので、読者のみなさんをびっくりさせてしまったかもしれませんが(笑)、これは非常に重要な考え方だと思っています。
というのも、今、あらゆるコミュニケーションの主戦場となっているSNSは、アテンションドリブンで動いています。無数の動画が流れてくるTikTokで、スワイプする指を止めて1つの動画を見ようと思う、その意志こそが、イコール「アテンション(興味関心、注目)」です。
ここで重要なのは、リーチはお金(広告費)で買えるけれど、アテンションはお金で買えないということ。このところ、YouTubeでもスキップできない広告が増えていますが、スキップできない=その動画広告をユーザーが見ているとは限りません。要は、人の意識をお金で買うことはできないわけです。ヴィジュアルコンテンツ(動画)を用いて、ターゲットの気持ちを変えようとするのなら、ただ再生(表示)される・視聴されるのではなく、注目してもらわなければいけません。
MZ:『動画大全』の中では、広告費=罰金という表現をされていました。
明石:SNSで自ら勝ち得たアテンションをもって、その影響力をビジネスに転換させれば、広告費以上のバリューを生み出すことができる。このことを書籍の中では少し挑戦的なフレーズで表現しましたが、事実、この通りなんですよね。
たとえば、今、様々なD2Cブランドが勃興しています。もちろん、広告を用いているD2Cブランドもありますが、基本的には大きな広告費を使わずとも、多くのブランドがビジネスを成功させています。規模的には小さなブランドがここまで成長・拡大していることが、アテンションの効力を示す、何よりの証拠になっているのではないでしょうか。