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Z世代マーケティングの鍵は「エモ」!?共感をフックに購買を促す方法とは【お薦めの書籍】

 日本市場の牽引役として、今や欠かせない存在となったZ世代。企業においては、彼らの消費行動を的確に捉えたマーケティング戦略の策定が急務です。本稿では“エモ”をフックに、Z世代からの共感を得るための方法を解説した1冊を紹介します。

Z世代の購買意欲を刺激する「エモ」

 今回紹介する書籍は『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』。著者は、Z世代向けのマーケティング支援を行う僕と私と株式会社CEOの今瀧健登氏です。

『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』 今瀧健登(著) クロスメディア・パブリッシング 1,738円(税込)

 今瀧氏は2020年に大学を卒業後、教育コンサルティング会社に就職。同年には僕と私とを創業し、三菱UFJ銀行や花王、サントリー、損保ジャパンなど多岐にわたる企業のZ世代向けマーケティングの支援を行っています。

 本書では、第1章でSNSネイティブであるZ世代の購買行動の特徴を解説。第2章では、Z世代の消費意欲を喚起するのに有効な「エモい」という感情の意味を掘り下げ、第3章以降で、エモを活用したマーケティング施策の具体的な設計方法やポイントなどを紹介しています。

 本書の冒頭、今瀧氏は「消費者が接触するメディアの数やコンテンツの量が膨大となったがゆえ、大きなトレンドが生まれにくくなっている」と指摘。そこで企業は、大ヒット商品を生み出すよりも、小さなヒットを連続的に生み出す戦略を取るべきだというのです。今瀧氏は、消費者を魚にたとえて次のように語ります。

たくさんのヒットを狙うなら、当然マーケティングも分散すべきです。これまで魚群として集まっていたものが、今は金魚のようにそれぞれが法則性もなく自由に動いています。投網で一気に捕まえるのではなく、いろいろな場所で1匹ずつすくわなければいけません。(p.62)

 では、これらの“小さなヒット”を生み出すには、どのようなマーケティングアプローチが有効なのでしょうか。今瀧氏は、エモいという感情を喚起するマーケティングが効果的だと主張します。

シーンを創出することが重要

 今瀧氏によると、エモいとは「ハッピーな共感。世の中にある他のものではなく、自分事として共感できる気持ち」とのこと。このエモをフックに購買行動につなげる「エモマーケティング」が、Z世代向けのビジネスにおいては重要だと述べているのです。

 エモマーケティングを成功させる上で、まず念頭に置くべきは「シーンを創出すること」だといいます。たとえば香水を訴求したい場合「街で見かけた人が、元カノと同じ香水をつけていた」「ああ、あの時は楽しかったな」──このような過去の体験を消費者に思い起こしてもらうのです。

 今瀧氏は、エモマーケティングの具体例として花王のシャンプーブランド「エッセンシャル」を挙げます。エッセンシャルでは、詰め替え不要のエコパックを2023年5月に刷新。その新デザインを僕と私とが手掛けました。

 僕と私とで企画を議論した際、「お風呂に入っていて感じるエモとは何だろうか」との問いからスタートしたところ、まず出てきたアイデアが「初めて子どもをお風呂に入れたとき」だったといいます。しかし、それではZ世代からは共感を得づらいと判断。そこで、お風呂に似た状況で感じるエモに思いを巡らせました。「美術館でアートを鑑賞するときと、お風呂で考え事をするときって似ているかもしれない」というアイデアが浮かび、最終的に絵画のようなデザインのパッケージになったとのことです。

普段たくさんの人と関わって、数限りない情報が押し寄せてくる。そうした生活の中で、周囲から遮断されて1人の時間を過ごせるお風呂という空間。アートを見ていろいろと考える時間。両方とも少し幸せな気分で、若い人も想像しやすいシチュエーションです。これをシャンプーのパッケージで再現できないか。そうした発想から、アートが入ったエモーショナルなデザインになっています。(p.83)

エモマーケティングの三つのポイント

 では、人々の共感を呼び起こすエモを、企業のマーケターはどのようにマーケティングに落とし込めば良いのでしょうか。今瀧氏は以下の三つのポイントを提示しています。

1.経験の存在
2.「ハッピー」な感情
3.「コミュニケーション」の場

 まず「1.経験の存在」については、たとえば「森林の香りの香水」を訴求する際に、単に「良い香り」と表現するのではなく「小学校の林間学校で森の中で遊んだ」「ああ、楽しかったね」という会話が消費者の間で生まれるようにすることが重要だといいます。

 同様に「2.『ハッピー』な感情」については、ネガティブな反応ではなくポジティブな共感を引き起こすことを、そして「3.『コミュニケーション』の場」については、SNSでの拡散を考慮に入れて「誰かと一緒にいるとき、あるいは誰かといたときを思い出す感情」をエモの基礎とするべきだと今瀧氏は語ります。

エモとは、誰かとのコミュニケーションを通して、ハッピーを感じた経験です。わかりやすく言えば、誰かと一緒に笑っていたときと重なる部分。それが多くの人にとっての共感のポイントになります。そして他の人に伝えようという意識が生まれ、UGCが広がっていきます。(p.87)

 本書ではさらに、エモいシーンを創出するための具体的な戦略設計の方法や、主にTikTokでの効果的なコンテンツの作り方などを解説。「どのように訴求すれば、Z世代から共感を得られるかがわからない」と悩むマーケターの方々は、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

宮田 浩平(編集部)(ミヤタ コウヘイ)

MarkeZine編集部。香川県出身。2016年に時事通信社入社、広島支社、岐阜支局で勤務。2019年から広告・マーケティングの専門メディアで編集者。主にPR・ブランディングやプロモーション領域の取材を担当。2022年5月から現職。企業のサステナブルやDE&Iを軸にした取り組みに興味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/42559

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