改正電気通信事業法以降、ビジネスはどう変化する?
──2023年6月16日に改正電気通信事業法が施行され、Q&A前編では今すぐ対応しておきたいことについてお話しいただきました。後編である本記事では、今後に向けて把握しておきたいプライバシーに関する事柄について伺っていきます。まず、今回の施行を受けてビジネスはどう変わっていくとお考えでしょうか。
菊地:Cookieから本格的なIDビジネスの時代になっていくと推測します。IDビジネスは企業と顧客の信頼関係構築が前提となるため、ユーザー側の同意を得たデータの利活用が柱になるのではないでしょうか。
IDビジネスでは、ユーザーの認証や情報管理を統一的に行うことで効率化や利便性向上を図れます。IoTやビッグデータの発展にともない企業は複数のシステム・デバイスを統合する必要性が高まっています。このことから、日本のIDビジネスは企業向けに需要が拡大していくのではないでしょうか。
──連載第1回では、2023年こそが「本格的なCookieルールの元年」とおっしゃっていましたね。
菊地:はい。2023年がCookieの「精査」元年となり、2024年はIDの「精査」元年になると見ています。現在企業はいかにルールとモラルに則ってCookieの技術を扱い、顧客と真摯に向き合うかが重要な論点であり、その後IDの時代へ向かうと予想しています。
IDビジネス時代における「見るべき要素」とは
──ビジネスを進めるうえで客観的評価は必須ですが、IDビジネスにおける見るべき要素はどんなものがありますか?
菊地:以下に挙げる項目について、数値化やレベル認定をしていく必要があります。
・正確性
・再現性
・速度
・スケーラビリティ(拡張性)
・セキュリティ
・ユーザビリティ
・メンテナンス性
・透明性
・法に則った適合性
菊地:実際に使用されている指標の一例としてAverage Revenue Per User(ARPU)が挙げられます。これは、一定期間内に得られた総収益を期間内のユーザー数で割った値です。ユーザーには会員以外に、購入者・購読者も含まれています。
一方、Average Revenue Per Paying User(ARPPU)は、一定期間内に得られた総収益を期間内の有料ユーザー数で割った値です。ARPUは全体的なビジネスの収益性を示すために、ARPPUは有料ユーザーからの収益性を評価するために使用されてきました。
今後はID目線でのAverage Revenue Per ID(ARPID)、すなわち有料・無料それぞれのID会員へのサービス強化が必要になると予測します。これは私の造語となりますが、このような形で今後はARPUからARPPUへ、そしてARPIDへと見るべき指標が移っていくでしょう。