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今知っておきたいマーケティング基礎知識

CVR(コンバージョン率)の計算式や基本を押さえてサイトを改善

 Webマーケティングに関わっていると必ず出てくるCVR(コンバージョン率)。何となくはわかるものの、実はきちんとは理解しきれていないのかも?と感じたことがあるかもしれません。ここではWebサイトを制作・運営していくうえで必須の知識のひとつであるCVRについて計算式などを含めて解説します。

今さら聞けない? CVR(コンバージョン率)とは

 Webサイトを作り、公開している以上、そのサイトには何らかの目的があります。企業を知ってもらう、製品・サービスを購入してもらう、会員を募集する、求人など、設定した目的に対して成果(コンバージョン)が高くなるようにデザインやページ遷移を考え、Webサイトを設計していきます。

 しかし、単純にコンバージョン数が多ければ良いわけではありません。

 たとえば、コンバージョンが10件だったとしても、訪問者数が1万あるサイトと、1,000のサイトでは効率が異なります。CVRは単純なコンバージョン数ではなく、一般的にはサイトの訪問者数(セッション数=ユーザーがサイトにアクセスした回数)に対して、どのくらいの割合の人がコンバージョンを達成しているかを探るものなのです。

 つまり、訪問者数に対してどのくらいの成果が得られたかを割り出した指標がCVR(コンバージョン率)となります。

 「CV率」や「成約率」などとも呼ばれ、サイトが効率的に成果を得られているかどうかの判断のひとつとして活用されています。そしてCVRが良いサイトは、効果の高いサイトと言えるのです。

コンバージョン率が重要な理由とは

 CVRはWebサイトを評価するうえで重要な指標です。

 たとえば、コンバージョン数自体はそれほど多くなくても、CVRを調べると良いページというのはあります。その場合、そのページのコンバージョン数を伸ばすために必要な施策は、ページ内容の変更ではなくページを訪れる人、セッション数の増加です。なぜなら、CVRが良いということは効率的で成果に直結しやすいページデザインであると考えることができるため、母数となるセッション数を増やすことでコンバージョン数の増加が期待できるからです。もちろん、母数が増えればCVRは下がりやすくなるため、どの層を増やすかといったターゲティングの設定が重要となります。

 一方で、たとえばコンバージョン数が多くともCVRが悪いページもあります。そのページには、コンバージョンが達成できずに離脱してしまう理由がどこかにあると言えます。その場合は前述とは異なり、広告などでセッション数をやみくもに増やしても同じ理由で離脱される可能性があるため、ページのデザインやコンバージョンまでの遷移を改善する施策が求められます。

 このように、CVRを見ることでページの課題や改善点が見えてきます。

コンバージョン率の計算式(計算方法)

 一般的なCVRの求め方は、コンバージョン数を訪問者数=セッション数で割り出します。

 なぜPV(ページビュー)数ではなくセッション数となるのかと言えば、1人のユーザーが一定時間内に何度もページを表示させると増加してしまうPVでは、母数が多くなってしまうためです。

 求めたいのは、訪問したユーザーのうち何人がコンバージョンに至ったのかになるため、セッション数が母数となります。

一般的なCVR(コンバージョン率)計算式

CV(コンバージョン)数÷セッション数×100

 たとえば、商品購入をコンバージョンに設定している場合。月間のセッション数(訪問者数)が1,000あるページで、コンバージョン数が20であれば、

 20÷1,000×100=2

となり、CVRは2%となります。

 しかし、CVRはセッション数から割り出すだけではありません。セッション数以外を母数とすることで別視点からサイト改善のヒントを見つけることができるほか、コンバージョンを何にするかによっても分析結果が変わってきます。

 詳しくは「CVRのポイント」で紹介します。

CTR(クリック率)とはどう違うのか

 CVRはWebサイトをより良いものに改善していくための指標となるものですが、そのほかにも指標となるものはいくつかあります。その中でも似ているものとして挙げられるのが、CTR(クリック率)です。

 CTRとは、ユーザーに広告などが表示された回数(インプレッション数)に対して、どのくらいの割合でその広告がクリックされたのかを割り出したもので、Web広告のマーケティングで使用される用語です。

 検索結果画面に表示される「リスティング広告」や、ページの指定されたエリアに表示される「ディスプレイ広告」がクリックされ、LP(ランディングページ)など誘導したいページへどのくらいの割合で訪問されているかがわかることから、広告媒体や広告手法の効果を測る時に重要視されます。

 CTRはあくまでも表示回数に対してクリックされた割合であることから、その広告の効果が高いのか低いのかを評価する時に活用できると言えます。対してCVRは、クリックして移動した訪問者たちが、設定した成果に達しているかを測るものです。

 CTRが高く、該当ページへの訪問者数は多いのに、購入などのコンバージョン数が少ない場合は、CVRが悪い。つまり、広告を見て期待して訪問した人が求めるページや商品ではなかったか、そのページを途中で離脱してしまう何らかの原因があると推測できます。

CVRをWebマーケティングにどう活用するか

 では、CVRはどのくらいあれば良いサイトと言えるのでしょうか。

 残念ながらそれに確かな数値で答えられることはできません。なぜなら、何をコンバージョンとするかで達成の難易度は異なり、業界によっても難易度が変わるためです。

 たとえば、高価格帯の商品の場合、購入をコンバージョンとするとハードルが高くなります。対面や口頭での説明や、お試しが必要な商品やサービスも難しいでしょう。しかし、資料請求やお問い合わせをコンバージョンとすれば、かなりハードルは下がります。

 また、リスティング広告とディスプレイ広告でもCVRは異なり、一般的にはリスティング広告のほうがCVRは高くなると言われています。

 このように、マーケティングにCVRを活用する場合は、コンバージョンの設定や母数とする集団を何にするかが重要です。

業界別CVRの目安と目標値の決め方

 とはいえ、何らかの指標は欲しいものです。

 そこで、米WordStreamによるGoogle 広告の業界別平均コンバージョン率を参考までに紹介します。

 ただしあくまでもひとつの目安、参考数値程度と捉えると良いでしょう。

出典:WordStream社「Google Ads Benchmarks for YOUR Industry」
出典:WordStream社「Google Ads Benchmarks for YOUR Industry

CVRの目標値の決め方

 上記数値はあくまでも目安、参考程度のものとなります。では、どのようにCVRの目標値を決めれば良いのでしょうか。

 ひとつの方法として、売上や会員数といった実際の月間目標からCVRを逆算する方法があります。

 現在のWebサイトで毎月5,000セッション、50人の会員登録があり、これを100人にしたい場合。目標とするCVRは「100÷5,000×100=2」で2%という計算になります。

 これを数値目標とし、どのようにしてCVRを上げていくかを検討していきます。

CVRのポイント

何をコンバージョンとするのか

 CVRは、何をコンバージョンとして設定するかによって大きく変化します。一般的なコンバージョンには、

  • 商品、サービスの購入
  • 商品、サービスの予約
  • 資料請求
  • 会員登録
  • メルマガの登録
  • 問い合わせ

 などが挙げられ、達成までの難易度が異なります。

 同じ資料請求であっても有料・無料によってコンバージョンまでのハードルは変わりますし、会員登録も住所など細かな個人情報を登録するものとそうでないものでは、やはり登録数に差が出てきます。

 業界別のCVRの目安も参考にしながら、自社で目指すべきCVRを設定し、そこに向けてWebサイトの改善を進めていくと良いでしょう。

CVRの注意点は、セッション数の定義やコンバージョンの内容

 CVRの計算で一般的に活用される母数はセッション数ですが、このセッション数にも注意が必要です。アクセス解析ツールによって1セッションの定義が異なることがあるためです。

 たとえばGoogleアナリティクスは、1セッションの時間を30分としています。実際には1人の人であっても、30分間ユーザーが画面を操作せずに30分後に再訪問すると2セッションと認識されます。母数であるセッション数が増えることでCVRは低下してしまいます。

 そのほか、コンバージョンが2段階に分かれている場合もあります。第1段階では資料請求や会員登録をコンバージョンとし、次に資料請求や会員登録をした人が購入などのコンバージョンに至るケースです。

 前者ではセッション数が母数となりますが、後者は資料請求や会員登録を行った数が母数となります。コンバージョンが変われば、母数が変わることもあるのです。

 サイトを改善し、CVRを高めていくためには、まず何をコンバージョンと設定し、どのページ・段階のCVRを重視するのかを定めることが求められます。

 なお、コンバージョンは各ページで設定でき、ページごとにCVRを割り出すことができます。

CVRを向上させるには?

 CVRでコンバージョンの傾向が見えてきたら、具体的な数値の改善を行っていきます。

 CVRの高いページではさらなるコンバージョン数の増加を狙うと同時に、CVRの低いページをユーザー目線でサイトを見直していきます。

CVRの高いページで、コンバージョン数を増やす方法

 すでにCVRが高いページは、コンバージョンが達成しやすい構成やデザインであると言えます。ユーザー目線に立った細かな調整は随時行っていく必要はありますが、訪問者数であるセッション数を増やす方向性を検討してみましょう。

 セッション数が1,000あるページでCVRが2%、コンバージョン数50なら、単純な考え方としてはセッション数が2,000に倍増すればコンバージョン数も倍の100になるという考え方です。

 ただし、やみくもに母数だけ増えても意味はありません。むしろ、母数が増加すればCVRは下がってしまいます。そこで、より確度の高いターゲティングを行い、質の良い母数集団を形成する必要があります。

 目的・成果に合わせてターゲットを明確にし、リスティング広告がいいのか、ディスプレイ広告がいいのか。広告の仕様や媒体を絞り込みます。

 この時、ユーザー像を明確にするためにペルソナを作り、そのペルソナがどのような行動パターンで購入に至るのかを見える化させたカスタマージャーニーマップをもとに、キーワードの選定をしていくとよいでしょう。

CVRの低いページでコンバーション数を増やす改善策

 CVRが低い場合、考えられる要因は複数あります。その中でも、まず大きく仕分けしてチェックしたいのが、

  • ターゲットの再確認
  • コンバージョンの最適化
  • サイト全体の構成・ページ遷移の最適化
  • 各ページのデザインの最適化

 です。

 ターゲットとなる訪問者・ユーザーの再確認と、自社サイトのデザイン的な再確認から始めてみると良いでしょう。

ターゲットの再確認

 こちらは、CVRが高い場合と同様に、ペルソナの確認・設定やカスタマージャーニーマップの確認・設定が必要です。

 広告で集客した訪問者の直帰率や離脱の多いページなどから、広告で使用しているキーワードが適したものになっているか、ランディングページがターゲットのニーズを満たしたものになっているかなどを確認します。

 自社サイト・商品のターゲットを明確にすることで、入り口が広がり、セッション数の増加につながる母集団を増やすことができたり、コンバージョンにつながりやすい確度の高いターゲット層にアプローチができたりします。

コンバージョンの最適化

 ターゲットを見直し、最適な広告手法とキーワード選定を行ったら、場合によっては、ターゲットに合わせてコンバージョンを追加・変更することも視野に入れてみると良いでしょう。

 商品・サービスの内容はもちろん、ターゲットのタイプによっては、直接の購入よりも前に資料請求などを行いたいといったこともあります。会員登録の場合でも、住所・氏名など詳細な個人情報の入力をするより、簡易的な登録を好む層である可能性もあります。

 ターゲットがより達成しやすいコンバージョンを設定することで、CVRは当然ながら改善されます。加えて、最終的な商品購入といったコンバージョンに向けてハードルを下げていくことにもつながります。

サイト全体の構成・ページ遷移の最適化

 ユーザーターゲット関連の再確認に加え、デザイン関連、UI/UXの見直しを進めていきましょう。

 CVRが低い原因で多いのが、コンバージョンに至るまでの導線のわかりにくさです。

 広告や検索結果といった外部からサイトを訪れる最初のページ、ランディングが多いページを確認し、そこからコンバージョンにつながるまでのページ遷移がストレスなく行える作りになっているのか。コンバージョンに至るまでの間で、離脱が多いページはどこか。アクセス解析の結果から、ユーザーの動きを読み取ります。

 ターゲットにズレはないのにランディングのページで離脱者が多いようであれば、ページのデザインがわかりにくいほかに、提供するコンテンツがズレている可能性もあります。場合によっては、ランディングのページを変更したり、新たに追加したりといった対策も必要です。

 ページ遷移の最適化を検討する場合は、競合上位サイトの研究のほか、コンバージョンまでの導線を再確認してみると、課題がわかりやすくなります。コンバージョンの達成が商品購入であれば、サイト訪問から、商品検索といったターゲットユーザーの導線を洗い出し、番号を振ります。

  • 省くことができる無駄なページや動作はないか
  • 購入を決定づける一押しがあるか
  • ランディングのメインとなっているページ以外に、入り口を設けることはできないか
  • 購入前に、保留や検討ができる「お気に入りに登録」といった段階を設けるのはどうか

 設定したターゲットユーザーの立場になってページ遷移やコンバージョンまでの導線を見直してみましょう。

各ページのデザインの最適化

 CVRの改善には、ページ遷移やサイトの構成といった全体的な要因に加え、それぞれのページの視認性、デザイン性、操作性といったUI/UXも再確認していきます。

 申し込みボタンがわかりにくい、表示が遅い。ただそれだけでCVRは下がります。

 言い換えれば、ボタンやリンクの位置や数を最適化することでCVRが改善できる可能性があるのです。

  • コンバージョンにつながるボタンの色、形、位置、数
  • 写真やイラスト
  • 表示速度
  • モバイル対応
  • キャッチコピーなどのテキストの表現
  • ページ全体の情報量

 これらを再確認し、ユーザー目線のデザインを心掛けます。

 特にちょっとした変化で大きな改善が見込めるのが、ボタンです。できるだけ大きく、目立つようにするのはもちろんのこと、複数配置することも有効です。一般的には説明などがすべて終わった最後にボタンを配置しますが、リピーターや慣れている人向けに訪れてすぐに気づいてクリックできるよう上部に配置することでユーザーの操作性が向上。CVRの改善につながることがあります。

まとめ:サイト全体でパフォーマンスを上げる

 CVRは、サイトを改善するうえで欠かせない指標です。

 CVRからユーザーの行動を推測し、より高いコンバージョンを狙っていくためには、ボタンなどの局地的な改善に加え、ページ遷移などユーザーの導線の見直し、サイト全体の構成の確認、自社の顧客であるターゲットの再設定、ターゲットに最適化した広告の検討など、全体で見直していくことが求められます。

 もちろん、こういった要因のほかにも、市場の変化や競合企業のサイトの存在など、CVRを左右する要素は数多くあります。

 それだけに、CVRの改善は1度で終わらせずに、トライアンドエラーを繰り返していくことが大切です。

 どの改善策が有効なのか。アクセス解析をもとにPDCAサイクルを回し続け、最適化していきましょう。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/15 00:00 https://markezine.jp/article/detail/42675

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