音声をマーケティングに活用する2つの手法
一方で日本市場は、デジタル音声メディアやデジタルオーディオ広告の活用は英語圏と比べ発展途上といえます。そこで、国内における音声メディアの全体像や具体的な種類について紹介していきます。
まず、音声メディアの分類を見ていきましょう。配信手法としては、ユーザーなら誰でも配信できるものや、媒体社から一方方向で配信されリスナーが聴く形のものがあります。さらにラジオ由来や音楽由来のサービス、Twitter(X) Spaceに代表される音声SNSなどが存在します。

音声をマーケティング活動に活用するには、主に「デジタルオーディオ広告(音声広告)」「音声コンテンツ」という2つの手法があります。
デジタルオーディオ広告(音声広告)
インターネットのデジタルオーディオ広告には、「動的挿入型」と「タイアップ型」が存在します。
動的挿入型広告は、ラジオでいうスポット広告のように、挿入型広告をアドサーバーからストリーミングや配信途中のポッドキャストに挿入する形で音声広告配信を行います。タイアップ型広告は、パーソナリティが広告を読み上げたりCM素材を音源に組み込んで流したりするものです。再生数課金や決まった出稿費用を支払うなど、媒体の広告プランに応じた料金体系を持っています。
音声コンテンツ
顧客の商品理解や認知を深めることや、見込み顧客に対して定期的なコミュニケーションを取ることを目的に、インターネットラジオなどの音声コンテンツを配信する企業が増えています。具体的には、ブランデッドポッドキャスト(企業ポッドキャスト)と呼ばれる音声番組を作りApple PodcastやSpotify、Amazon Musicなどで配信を行います。2023年中にはYouTubeが配信先に加わるという発表もあり、音声コンテンツの価値や可能性の広がりが期待されています。
またVoicyやRaditalk、stand.fmなどの国産プラットフォームでも、企業が音声コンテンツを配信しているケースがあります。
フォーマットを横断した、アドビのデジタル音声広告活用
国内でデジタルオーディオ広告と音声コンテンツ、両方の活用を行っている企業としてアドビの活用事例を2つご紹介します。同社は、デジタルマーケティングを中心とした顧客体験を提供するためのあらゆる要素を備えた包括的なクラウドサービス「Adobe Experience Cloud」のマーケティング施策で音声を活用しています。
事例1:オンラインイベントの集客にデジタルオーディオ広告を活用
アドビは、法人向けオンラインイベント「Best of Adobe Summit」の集客の一つとして、オーディオ広告を複数媒体で活用したプロモーションを実施。ポッドキャスト広告と音声アプリ内の広告配信を通じてオンラインイベントを告知しました。
同社は複数のデジタル音声メディアに広告配信を行いながら、接触データを使い運用型のディスプレイバナー広告を再配信するなど、フォーマットを横断したキャンペーンを展開。またポッドキャスト広告では企業側で用意した従来のラジオCMと同様のフォーマットと、パーソナリティ自らが読み上げる「ホストリード広告」という2つの手法で出稿し比較することで、広告効果の向上を図っています。
同キャンペーンでは音声広告接触者のサイト遷移率をリッスンスルーCV(間接コンバージョン)として計測しており、ホストリード型で実施した番組は従来型のCMを使用した広告配信に比べ3倍近い結果が得られました。これはパーソナリティへの信頼や親しみやすさなどを含む、エンゲージメントの高さによるものだと考えられます。
事例2:ビジネスの認知拡大と既存顧客へのコミュニケーションを目的に音声番組を制作
また同社は、音声コンテンツもマーケティング手法の一つとして取り入れています。マーケターや製品導入決裁者向けに「Adobe Experience Cloud ポッドキャスト」という音声番組(ブランデッドポッドキャスト)を制作。新番組として『Marketer’s Talk』を配信しています。
CXM(顧客体験管理)に関わる「Adobe Experience Cloud」ビジネスのユーザーをゲストに迎え、リアルな課題や日々の気付き、課題解決のアイデアなどを介し、顧客体験のあり方について語り合います。リスナーがマーケターどうしのオフ会トークに参加しているような、臨場感あるコンテンツを目指しています。

この番組はマーケターに有益な情報を提供するオウンドメディアであるとともに、アドビ製品群の導入企業が他社の活用事例を通じてナレッジを学べる場として、ロイヤルティ向上という目的も担っています。
音声は、バナーや動画のような他メディアに比べてマーケティングにおける価値や強みがまだ浸透していない領域です。本連載を通して、音声のマーケティング活用における可能性や実際の事例、活用のポイントやメリットを読者の皆様に共有できれば幸いです。
