Z世代、アルファ世代に話題のサービス
岡田(Adjust):「Z世代、アルファ世代を魅了する!新感覚マーケティング」のテーマのもと、議論を進めます。モデレーターを務めるAdjustの岡田です。スピーカーの皆さん、自己紹介をお願いします。
加嶋(NAVER Z JAPAN):ZEPETO(ゼペット)のサービスグロースおよびマーケティング全域の責任者を務めています。
ZEPETOは、誰もが想像するものを何でも創造し、世界と共有できる、アバターベースのソーシャルプラットフォームです。
野間(Sango technologies):私は広告代理店勤務を経た後にモバイル広告スタートアップに参画し、Sango technologiesを設立しました。
2022年にリリースした「TapNow(タップナウ)」は、ユーザー同士で写真を送り合うSNSです。他のSNSと異なる点は、送られてきた写真や動画がホーム画面にリアルタイムで表示されること。仲間内だからこそ楽しめる、飾らない写真や動画が共有されています。コロナ禍が落ち着き、若い世代がリアルの友達を求めはじめたタイミングと重なったこともあり、多くの方に使っていただいています。
片岡(Suishow):東京大学&早稲田大学発のスタートアップ、Suishowの代表を務めています。現在大学4年生です。
私たちが展開している「NauNau(ナウナウ)」は位置情報共有SNSです。家族や友達と位置情報を共有して、相手がいま何をしているかを常に把握できます。ほかにも過去の位置情報やWi-Fiの名前を共有したり、SOSを送信したりできるなど、相手の情報を知るための様々な機能があります。現時点で450万ダウンロードを突破しています。
ユーザー体験で重視される「アテンションとコネクト」
岡田(Adjust):最初は、Z世代やアルファ世代を魅了するために重要とされる、ユーザーの「体験」について話していきたいと思います。ZEPETOではどのようなユーザー体験が重要だと考えていますか?
加嶋(NAVER Z JAPAN):ZEPETOはSNSであると同時にメタバースとしての側面も持っているため、ユーザー体験と創作が密接に関わっています。
その中で重視しているのは、アテンションとコネクトです。これらの体験を生み出すため、アバターとコンテンツ、アイテム、ワールド、そしてライブ配信という5つの機能を提供しています。
加嶋(NAVER Z JAPAN):アテンションは自分が作ったものを表現し、他者からの反応を得られる場所があるということ。運営側としては、コンテンツをピックするような仕組みを作ったり、ランキング化したものを表示したりといった工夫をしています。
そしてコネクトは、自分と同じものを好きな人とつながってコミュニケーションをとることです。ソーシャルグラフをどう形成していくかが重要だと考えています。具体的にはIPやアーティスト、インフルエンサーのアイテムやワールド、コンテンツを表示させる仕組みを作っています。
岡田(Adjust):実際にZEPETOを見ると、コンテンツのクオリティーの高さに驚かされます。
加嶋(NAVER Z JAPAN):ほぼ全てのコンテンツは、ユーザーさんたちが主体となって作ったUGC(User Generated Contents)です。ZEPETOの中でアイドルグループが誕生し、ダンスやライブ配信を通してファンと会話をするなど、様々なムーブメントが私たちの準備したものをベースに生まれてきています。
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リアルな関係で求められる「居心地の良さ」
岡田(Adjust):TapNowは、アテンションとコネクトに当てはまることはありますか?
野間(Sango technologies):コネクトでいうと、バーチャルのつながりであるZEPETOと異なり、TapNowはリアルな仲間たちとのコミュニケーションに使われることが多いです。そのため「居心地の良さ」を大切にしています。
野間(Sango technologies):リアルな仲間といっても様々で、多くの人たちは、学生時代の友達や仕事関係の人、推し活仲間など複数のコミュニティーに属しています。これらを1つのネットワークに押し込もうとすると気疲れしてしまうんですね。
たとえば私がFacebookで子どもの写真を投稿したとします。仕事関係の知り合いが真面目に「おめでとうございます」とコメントを投稿すると、学生時代の友人は「めっちゃ野間に似ているね。なんかウケる(笑)」などいつものノリでは投稿しづらくなってしまうかもしれません。
岡田(Adjust):確かに属性が異なると、SNSの特性上、コミュニケーションの仕方を迷ってしまうことがありますよね。
野間(Sango technologies):はい、そのためTapNowでは投稿疲れ解消の工夫の1つとして、共通の友達同士でのみコメントを見られるようにしています。
片岡(Suishow):私もFacebookやInstagram、Instagramストーリーズと、だんだん投稿しなくなりました。この流れはどこにどう落ち着くのか。考えた結果誕生したのが、投稿しなくても発信できるNauNauです。
岡田(Adjust):投稿という動作をなくした点が、Z世代やアルファ世代には受け入れられやすかったのかもしれませんね。NauNauはどのような人たちが使っているのですか?
片岡(Suishow):3タイプに分かれています。1つ目は陽キャですね。高校生や大学1、2年生ぐらいの人たちがみんなで交換しています。2つ目はカップルです。大学生から社会人になりたての人が、相手が何をしているか、浮気していないかなどを確認するために活用しています。3つ目は40代や50代の人が子どもを見守るアプリとして使っています。
野間(Sango technologies):TapNowもまったく同じですが、使われ方は少々異なる部分があります。陽キャは、同じグループのメンバーであるという認定の証しとして使われることが多いようですね。
カップルではLINEよりも重くならない絶妙な使い方ができるようです。TapNowは、写真や動画をホーム画面に送った時点でコミュニケーションを完結できる点が支持されているようです。
子どもを持つ親でいうと、35歳前後の方々が自分の親に対して、子どもの写真を送っています。以前のデジタルフォトフレームのように、日常の子どもの姿を次から次へと送っているようです。
ユーザーの熱量を高めるために、創作意欲に火をつける
岡田(Adjust):続いて「ユーザーの熱量を高めるには」を話題に、お話を聞きます。各サービス、Z世代に多く使われているとのことですが、ユーザーの熱量を高めるために行っていることを教えてください。
加嶋(NAVER Z JAPAN):エンターテインメントのコンテンツがあがるときに熱量が高まるので、ZEPETOではユーザーの表現の幅を広げるよう意識しています。
その1つとして最近、アバターの新しい表現を追加しました。これまで私たちが提供してきたのは、どちらかというと現実世界に近いアバターでしたが、新しいアバタースタイルでは漫画やアニメの中のキャラクターになれるようにしたのです。基本的に3Dであることは変わらないのですが、やはり日本や韓国、アメリカでは2Dのアニメスタイルの文化が根付いていると思っています。
このように表現のバリエーションをいかに増やしていくかは、ユーザーの熱量を高めることに直結すると考えています。そのためZEPETOでも2Dアニメーションスタイルのアバターをリリースしました。
【ゲームアプリ「にゃんこ大戦争」のAdjust活用事例記事】
ツールユーザーの熱量を高めて、SNSユーザーへ
野間(Sango technologies):一口に熱量を高めるといっても色々ありますが、私はマーケティング目線でどうやってバイラルを作っているかを紹介します。
具体的には「ツールとして活用しようとしてアプリの中に入ってみたら、SNSとしてもそれなりに完成度が高かった」と思っていただけることを目指しました。そこからユーザー同士でつながっていってもらおうと。
様々なチャレンジをした中でうまくいったのは、落書きツールとしての見せ方を出したときです。TapNowはウィジェットアプリなので、撮影した写真は角が丸い正方形になります。さらに3グリッドなどで表示すると、正方形の丸っぽい写真がいくつか並ぶようになります。それぞれにクレヨン調の落書きをすれば、昔のプリクラで撮影した感じになるのです。「めちゃくちゃかわいい」とInstagramに投稿され、かなりバズりました。
ツール利用者として入ってきたユーザーを、どうやってSNSとしてのユーザーに変化させていくのかがチャレンジのポイントだと考えています。
加嶋(NAVER Z JAPAN):ZEPETOにも当てはまりますね。バーチャルコンテンツをZEPETOで作って、それをまた他のSNSに投稿する。TapNowのようにツールとしての使われ方も確かにあるなと、伺っていて思いました。
片岡(Suishow):NauNauも同じで、相手がどこにいるかを確認するツールとして使っているユーザーが多いです。そこから熱量が高く使っているユーザーは、「いまここにいるから、会いに行くね」「近くにいるなら集まろう」というように、SNSとして人との交流や新たな出会いのために使ってくださっています。
SNSマーケティングは、サークルの新歓活動に似ている
片岡(Suishow):今回のセッションのテーマである「Z世代、アルファ世代を魅了する!新感覚マーケティング」について私が思うのは、特にSNSマーケティングは大学のサークルの新歓活動に似ているということです。
私の大学にはサークルが1,000ぐらいあるので、正直どのサークルにすればいいかなどわかりません。たとえばプログラミングサークルで「技術力が高いメンバーがいます」とアピールするだけでは人が集まらないのですよね。一方でプログラミングをほとんど勉強できないサークルなのに、盛り上がっているところもあります。なぜかというと、仲の良い人たちがたくさん集まっているから。サークル内で仲の良い友達が数人できれば、そのサークルから出ることはほとんどないのです。
アプリも同じことが起きていると思います。たとえばMetaからThreadsがリリースされましたが、機能としてはX(旧Twitter)とほとんど変わらないですよね。どちらがみんなに使われているかが、利用するかを決めるポイントになるのではないでしょうか。どうしたらユーザー同士が仲良くなれるかを考えることが大事だと思います。
岡田(Adjust):リアルグラフならではの熱量の在り方ですね。
終わりの時間になってしまいました。本日は、Z世代やアルファ世代を魅了するマーケティングについて、体験と熱量の部分にフォーカスした話をしていただきました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。