市場の勝者が絞り込まれるフェーズに
──最初にお二人の自己紹介をお願いします。
栗原:事業管理チームで、主にmenuの売上と利益を管理する立場です。事業を横断しながら投資計画を練ったり、ユーザーの定着率を上げるための施策を考えたりしています。
栗原:menuのユーザーは注文者だけではありません。私は店舗や配達クルーを含むすべてのユーザーを見ています。
中須賀:私はmenuのマーケット運営を担当しています。ユーザーの中でも注文者の方の体験向上をミッションに掲げ、menuをもっと使っていただけるような施策や新機能を考える役割です。
──フードデリバリーアプリ市場は、ここ数年で一気に拡大した印象です。各社が群雄割拠の様相を呈する中、menuでは市場をどうご覧になっていますか?
栗原:2020年、コロナ禍に突入したことでデリバリーアプリが各社から一気に立ち上がり、海外のサービスも日本市場へ積極的に参入してきました。まさに戦国時代ですね。2023年以降はパンデミックが落ち着いたものの、デリバリー文化は人々の生活に定着しています。市場自体が廃れることはないでしょう。
ただし、プレイヤーの統廃合は進んでいます。今では当社を含め、主要プレイヤーが4社しか残っていない状況です。「フードデリバリーアプリは2、3社しか勝てない」と言われている国もあるため、現在は市場で勝つプレイヤーが絞り込まれているフェーズにあると思います。
非常に特殊な日本の市場環境
栗原:市場環境を語る上で、配送の課題は無視できません。「物流の2024年問題(※)」が注目されているように、今後は配送ニーズに対して輸送が追いつかなくなるはずです。このことは、フードデリバリーアプリ各社のビジネスにも大きな影響を与えています。各社が輸送対象をフードに限らず、医薬品やグローサリー(食料品)などを近距離内に短い時間で届ける「ラストワンマイルプラットフォーム」の構築を目指しているのです。
※トラックドライバーの時間外労働が制限されることにより、輸送能力が不足する問題を指す
──お話しいただいた市況を踏まえ、menuではどのようなマーケティング戦略を掲げているのでしょうか?
栗原:二つの軸があります。一つはKDDIとのシナジー効果です。この春、menuはKDDIとレアゾンとの資本業務提携をさらに強化してジョイントベンチャー(合弁事業)になりました。auスマートパスプレミアム会員向けの特典など、確かな顧客基盤を有するKDDIとのシナジーをどう広げていくかが鍵になると思います。
もう一つの軸は「日本発のプラットフォーム」という特徴を活かした競合戦略です。日本は海外に比べてエリアごとのショップ密度が高く、コンビニ文化も発達しています。つまり、非常に特殊な市場環境なのです。グローバルで統一されたサービスを提供する海外発のフードデリバリーアプリに対し、日本の環境を踏まえたデリバリープラットフォームをつくることがmenuの勝ち筋ではないかと考えています。
フードデリバリーアプリは差別化が難しい
──マーケティングを進めるにあたって、課題を感じている点はありますか? フードデリバリーアプリ業界ならではの難しさもあわせてお聞かせください。
栗原:フードデリバリーアプリには「差別化が難しい」という特徴があります。店舗と注文者をマッチングするビジネスの仕組み上、どのサービスも似通ってしまうのです。
栗原:だからこそmenuでは顧客理解を徹底しています。「日本のユーザーがどのように使っているのか」「どのような顧客行動に注目して顧客を分類するべきか」などの問いを深掘りし、ユーザーの解像度を高めながら最適な施策を探っているところです。
──menuでは顧客理解を深めるために、アプリ向けCXプラットフォーム「KARTE for App」を活用しているとうかがいました。具体的にどう役立っているのでしょうか?
中須賀:個人のユーザーを定性的な視点で観察する際に、KARTE for Appの「ユーザーストーリー機能」を活用しています。この機能を使うと、特定のユーザーがアプリを開いてから離脱するまでに閲覧した画面やクリックした場所、購入した店舗および商品を一つひとつ細かく見ることができるのです。
中須賀:私はロイヤルユーザーへのインタビューも担当しているのですが、インタビューの前にインタビュイーの行動をKARTE for Appで把握しておくわけです。これにより解像度が高まり、インサイトを深掘りしやすくなります。また、インタビュイーの回答内容と実際のアプリ内行動が違っていることもあるため、インタビューだけでは捉えきれない無意識の行動をKARTE for Appで拾っています。
自社のデータと連携して仮説を高度に検証
中須賀:定量的な分析と組み合わせた活用もしています。たとえば全体の数字を見て「今日は購入人数が少なかった」と感じた場合、アプリを開いたものの購入せずに離脱してしまった人のリストをKARTE for Appで確認し、各ユーザーの実際の行動の流れを辿りながら離脱の背景を探っています。
栗原:KARTE for Appのデータを他のデータと連携した分析も行っています。menuがユーザーごとにIDを発行の上取得している属性(性別・年齢・エリアなど)やアプリ上の購入履歴を、KARTE for Appのデータと突合するのです。そうすると「都市圏に住んでいる人はどのような行動をしているか」などの観点で、データを横断した分析ができるようになります。
中須賀:「このユーザーはこういうお店や料理が好みだろう」と予測して施策を展開しても、menu側では購入履歴しか参照することができません。KARTE for Appのデータと結びつけることにより「その方がバナーを見てくれたのか」「バナーをクリックしたのか」などを詳細に見ることができるため、仮説の検証に役立っています。
購入率UPや社内のデータ文化醸成に寄与
──KARTE for Appの活用により、現時点でどのような成果やメリットが得られていますか?
中須賀:まだテスト段階ですが、KARTE for Appで可視化したクリック率を参考に新しいセクションや機能を追加したところ、一部で購入率に良い影響が出ています。
中須賀:menuのアプリを開くと「フードジャンル」や「開催中のキャンペーン」「店舗情報」などが並んでいます。各セクションにおけるクリック数や購入数を分析すると、アプリの上部に表示されているセクションが最も多くクリックされると思いきや、逆に下部のセクションから多くの購入が発生しているケースもあったのです。ほかにも「クリック数は多いが購入につながっていない」など、ロジックの見直しに役立つ示唆もKARTE for Appで得ることができました。
栗原:私はリソース配分を考えやすくなりました。たとえばこれまでは「画面のロード時間が長いほど購入率は下がるだろう」と何となく感じていたのですが、数字として可視化できていなかったため、優先的には対応していませんでした。しかしKARTE for Appで可視化したところ、仮説どおりロード時間が長くなるほどCVRは下がることが判明したのです。そこでタスクフォースチームを編成し、エンジニアが各画面のロード時間を調査して改善することができました。
──新たな発見を得るためだけでなく、何となく持っていた課題意識の裏付けにもKARTE for Appは使えるということですね。
栗原:そうですね。勘や肌感覚だけで周りを動かすのは難しいものです。見える化を徹底したことで、タスクの優先度に説得力を持たせることができています。エンジニア、マーケ、UI/UXチームなど、職種を問わず皆でKARTE for Appの画面を見ているため、メンバーの相場観が養われた結果、施策の精度も高まっている実感です。
食べたいものがすぐみつかるアプリを目指して
──今後、menuを通じてどのようなユーザー体験を届けていきたいですか?
中須賀:起動してすぐ食べたいものが見つかるアプリにしていきたいです。あらかじめ「これが食べたい」と決めてmenuを開く方ばかりではありません。「今日は何を食べようかな」と思ってアプリを起動する方もいます。そんな方が食べたいものをなかなか見つけられなければ、離脱してしまうでしょう。しっくりくるものや興味がそそられるものとすぐに出会う体験を届けていきたいです。
栗原:日本はエリアあたりの店舗数が多いため、レコメンド機能の精度向上にもKARTE for Appのデータは活用できると期待しています。
冒頭でお伝えしたとおり、menuではグローサリー領域の拡大を目指しています。フード領域とはユーザー像や使われ方が異なるはずですから、より一層の顧客理解が求められます。これからもKARTE for Appを活用して、どのような方がいかなる使い方をしているか把握し、解像度を高めながら一人ひとりに合わせたサービスを提供していきたいです。
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