野球と接点を持たないまま大人になった人にどうアプローチした?
高橋:そうした誰かに誘われて、という人であれば良いですが、まったく野球と接点を持たないまま大人になった人に直接アプローチするのは難しいですよね。チケットの買い方も、試合開始の何分前に球場に来ればいいのかもわからない人の心を広告で動かすのは難度が高い。新規ファンの獲得はやはりリファラルが主になりますか?

高橋 飛翔(たかはし・ひしょう)
1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。ナイルにて、累計2,000社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足。2018年より新規事業として月1万円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。
林:まさにおっしゃる通りで、ほとんどはリファラルマーケットからの流入であることを前提に、ライト層を誘いたくなる、誘われたライト層が行きたくなる球場作りを進めていきました。たとえば演出やグッズ、イベント、ホスピタリティの工夫です。
野球を観戦してファンになってもらいたい気持ちはもちろんありますが、まずは球場に来てもらうこと、球場では全体の空気感も含めて満足度の高い経験をしてもらうことを目指しました。
1人あたりのチケット購入枚数もKPIに
高橋:いいですね。テレビ観戦しか知らない人は、球場は野球の戦いを楽しむ所だとイメージしていると思うのですが、その人が球場に訪れて球場の仕掛けを体感すれば、その人の中でパラダイムシフトが起きそうですね。この仕掛けに関しては何らかのKPIを設定していたんですか?
林:全体としては観客動員数ですが、1人あたりのチケットの購入枚数も見ていました。一般的には、仲間を誘った幹事がまとめてチケットを買うので、私たちが想定するアクティブサラリーマンの動きを検証できます。
と言っても、当初はチケット販売サイトが外部のみでしたから、1人あたりの購入枚数どころか、どんな人が購入しているのかもわからなかったんです。まずは自社チャネルを作り、そちらにファンを誘導することでデータの可視化を進めていきました。
高橋:マーケティング推進において、データ活用は重要なファクターですよね。事業もしばらく経つと、顧客像を無意識に作ってしまい予測と乖離していくことが多いです。当社もBtoC向けサービスでは、定期的なユーザーインタビューやアンケートからお客様の生の声を集計して活用しています。これらのデータを分析することで、顧客のニーズを突き、申込数の増加につなげたことがありました。
