SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2023 Autumn(AD)

読者数220万人のメディアを運営するQetic創業者が語る!企業価値がUPするコンテンツマーケの秘訣

 220万人の読者を擁する人気カルチャーメディア「Qetic(ケティック)」。同メディアを運営する傍ら、企業のコンテンツマーケティングも支援しているのがQetic(同名)だ。MarkeZine Day 2023 Autumnでは、外資系レーベル兼イベンターにてプロモーター/マーケターの経験を持つQetic代表の宍戸氏が登壇。コンテンツマーケティングを通じて企業・ブランドの価値を向上させるための秘訣を紹介した。

フォロワー数ではなくエンゲージメントが重要に

 現代のメディアやコンテンツは分散化と多様化が進んでおり、BtoC企業が消費者の心を掴むのは一層困難を極める状況だ。そんな中、現代のコンテンツマーケティングの潮流とは。Qetic創業者の宍戸氏が解説する。

Qetic 代表取締役 宍戸麻美氏。2011年に同社を創業し、コンテンツマーケティング、オウンドメディア運用支援の実績は10年以上だという

 宍戸氏によると「ショート動画」と「インフルエンサー・アンバサダー活用」がコンテンツマーケティングのグローバルトレンドだといい、さらに、SNSと親和性の高いコンテンツが引き続きマーケティングには有効だという。さらに、宍戸氏は「加えて、重視されるのは『ユーザーにとってより身近で、共感を生むコンテンツ』だ」と補足する。

 たとえば、アドビのオウンドメディア「Adobe Experience Cloudブログ」では、「(これからのコンテンツマーケティングでは)文脈、感情、共感を大切にしてください。それが本当の“つながり”を築く鍵です」と指摘しているという。

 また、「カンヌライオンズ2023」においても、ユーザーエンゲージメントとストーリー性のあるコンテンツの重要性が強調されていたと宍戸氏。「フォロワー数の多さなどではなく、いかにユーザーに選ばれるコンテンツを生み出せるか──複数のセッション登壇者が共通してこのように指摘していた。特に『エンゲージメント』というキーワードは頻出ワードだった」とのこと。実際に、そうしたコンテンツが賞を受賞していたという。

コンテンツ配信の最適な場=「オウンドメディア」

 さらに、宍戸氏はコンテンツマーケティングの潮目を大きく変える二つのできごとを紹介。それが「生成AIの台頭」と「プラットフォームの変化」だ。

 まず、生成AIによりコンテンツ制作の業務負担は軽減する一方、内容の均質化が予想される。その結果、SEO戦略も変わってくるとのこと。重要となるのは、無暗に検索結果の上位を目指すのではなく、「ユーザーの課題解決につながる丁寧なコンテンツ作り」だという。

 プラットフォームの変化については、新しいプラットフォームの台頭や、既存プラットフォームのマイナーアップデートなど、変化の激しい状態は今後も続くと予想。そこで「単一のプラットフォームへの依存は避け、コンテンツ配信に“最適な場所”を模索するべき」と宍戸氏は主張する。

 その場所としてお勧めなのが「オウンドメディア」だという。オウンドメディアでは、安定的にコンテンツを作成し、かつ多角的に配信していけるのだという。なお、これまでは「オウンドメディア=単なる、SEOのための集客ツール」という声もあったというが、今のオウンドメディアはそれに留まらないという。

 今コンテンツは様々なSNS・プラットフォームに配信されており、各媒体でコンテンツを作成・運用するのは工数がかかる。その点、一つのオウンドメディアでコンテンツを作成・公開し、それを複数のSNS・プラットフォームに配信すれば、業務負担の軽減につながる。

 さらに、複数のSNS・プラットフォームに広げられる、この“拡張性”がオウンドメディアの大きな利点だという。オウンドメディアがコンテンツ制作・配信機能の主軸を担う。そこを基点に、SNS以外にも、toBであればホワイトペーパーやeBookなどの営業ツールに転用できたり、toCであればECサイトへの誘導コンテンツに横展開できたりするのだ。

宍戸氏いわく、オウンドメディアを活用することで拡張性を持ったコンテンツ運用が可能になる

 さらに、オンラインのみならず、店舗と連携して、オウンドメディアのコンテンツを活用した体験イベントを企画したり、外部メディアからのパブリシティ獲得もオウンドメディアがあればコンテンツをそのまま使えたりする。「オウンドメディアがあれば、様々な媒体との連携を図れるようになる」と宍戸氏は語る。

低燃費・エコ時代の中で、いかにJeepをブランディングするか

 それでは、実際に拡張性を実現したオウンドメディア事例を見ていこう。宍戸氏が紹介するのが、Qeticが通算10年以上、運営を支援しているJeepのオウンドメディア「RealStyle by Jeep」だ。

画像:RealStyle by Jeep
RealStyle by Jeep

 Qeticが支援を開始した2013年当時は「低燃費・エコ」の時代で、コンパクトカーが世間的には注目されていた。そうした時代性と逆行する大型車のJeepをいかにして訴求するか。宍戸氏は、オウンドメディアの力を活用して潜在顧客との接点を増やす方針を打ち出した。

 初めのステップとして、Jeepのオーナーやターゲット層のライフスタイルやニーズを調査した。その結果、Jeepオーナーは車が好きで、かつ確固たるライフスタイルを持っていたり、趣味を大切にしていたりする人が比較的多いことがわかったという。そこで、RealStyle by JeepではJeepオーナーの話を通じ、「Jeepを選ぶことで人生がどう豊かになるか」を読者にイメージしてもらえるコンテンツを発信することにした。

 具体的には、初年度はSUV(※)が好きで、特定の趣味を持つ人などに焦点を当てて、彼らに役立つ情報を発信していった。

※Sport Utility Vehicleの略。アウトドアレジャーやキャンプなどの荷物を積んだり、整備されていない道路を走行したりする時に適した車種

「2年目に入ると、Jeepオーナーの傾向により寄せた趣味コンテンツを増やしていきました。たとえば、Jeepオーナーの方々はキャンプの他、ウィンタースポーツやマリンスポーツなどを趣味に持つ人が多いことが調査の結果からもわかっていました。そこで、そうしたアウトドア関連のコンテンツも積極的に発信することで、Jeepがいかにアウトドアと親和性の高い自動車かをより意識してもらえる、と考えました」(宍戸氏)

ゴールは「コミュニティの活性化」

 3年目には、Jeepのオーナーや潜在層向けの体験型イベントを企画。たとえば、Jeepをスキー場で走らせたりしたのだ。また、オーナーや潜在層が彼らの家族や仲間たちと“一緒に参加したくなる”イベントにすることで、コミュニティの活性化を狙った。さらに、他のブランドとのコラボレーションも3年目から徐々に増えていったという。

「支援当初から考えていたのは、単に消費行動を促すのではなく、RealStyle by Jeepのコミュニティを活性化させることでした。つまり、『Jeepに乗るとこんなに楽しいコミュニティ活動に参加ができるんだ』と思っていただけることを目指したのです」(宍戸氏)

 そのため、最初の3年間は潜在顧客との接点を増やしつつ、「ゆくゆくはコミュニティを活性化させること」を最重要項目に据えてコミュニケーション設計したという。その結果、今ではオウンドメディアのコンテンツが試乗会や新製品発表など、Jeep購入の場などでも有益に機能しているという。

RealStyle by Jeepの支援期間は10年以上にわたるという【クリック/タップで拡大】

水カンの詩羽を起用した「若松区役所プロジェクト」

 次に、宍戸氏が好事例として挙げるのが、北九州市の若松区役所の動画コンテンツ事例だ。若松区は知名度において課題を感じており、同地区のシンボル「岩戸大橋」が建立から60周年であることを記念して、シティプロモーション施策を検討していた。

【クリック/タップで拡大】

 宍戸氏らはまず町内視察を実施。その結果、感じたのは“人”の魅力だったという。

「若松区は非常に温かな雰囲気を持った港町であり、何より外から来た人たちに対しても明るく迎え入れてくれる町人の人柄に感動しました。その上、移住者が多く、子どもの数も多いため、私の目には『未来を感じる町』に映ったのです」(宍戸氏)

 そこで、町人も巻き込んで、彼ら自身が町を自慢に思えるようになり、その結果、近隣住民にもその想いが伝播して「行ってみたい」と思ってもらえる動画を作ることにした。

 施策は主に二つ。一つ目は、「水曜日のカンパネラ」の詩羽(うたは)を起用し、岩戸大橋や地元商店街の人たちが登場するミュージックビデオを撮影した。詩羽を起用した理由について、宍戸氏は「この町を知らない人物をあえて採用することで、『次世代』というキーワードの想起につなげたかった」と語る。さらに、彼女のファンダムによる“盛り上がり”も期待したという。

YouTube:若松区のプロモーション動画『RECORD』
水曜日のカンパネラの詩羽を起用した、若松区のプロモーション動画『RECORD』
【クリック/タップでYouTubeに遷移】

 二つ目の施策では、より“町そのもの”にフォーカスを当てた。住民同士が町の未来を語り合うリアルイベントを開催し、そこに詩羽も参加。そのシーンをドキュメンタリーとして収めたのだ

 さらに、一つ目の施策のミュージックビデオに関しては、地元の若者たちが踊ってくれたり、SNSで拡散してくれたりしたという。そういった第三者を介した話題喚起の方法は、二つ目の施策にも踏襲された。プレスリリースの配信などにより、制作したドキュメンタリー動画が福岡のローカルテレビ局に取り上げられるといった成果につながった

成功の鍵は「中長期の視点」と「運用体制」

 宍戸氏はこれらの事例の総括として、「今後のコンテンツマーケティングでは、ユーザーがより身近に感じ、共感できるコンテンツを作ることが重要だ」と改めて強調。そうしたコンテンツを作る上で押さえておきたいポイントがあるという。

 一つ目が、中長期的な視点でコンテンツマーケティングの成果を捉えることだ。たとえば、単純な販促・刈り取り目的ではなくブランディング目的であれば、前述のRealStyle by Jeepのように、3年目でようやくコミュニティの活性化や他のブランドとのコラボなどに漕ぎ着けるのだ。

「それゆえ、3ヵ年をベースに目的整理・目標設定するのが理想です。可変的な外部環境で3ヵ年での目標設定が難しい場合でも、最低でも1~2年後を見据えて取り組むと良いでしょう」(宍戸氏)

【クリック/タップで拡大】

 また、宍戸氏は「闇雲に集客するような運営の仕方はNGだ」と警告。「集客したいユーザーは誰なのか、彼らにどんなアクションを起こしてもらいたいのか。そうした点を踏まえ、ユーザーとの関係作りを最重視してKPIは設定してもらいたい。そのためには、まず『最適なユーザーを捉えること』から始めると良い」と宍戸氏は語る。

 最後に、宍戸氏は運用体制についても言及。次の2点が重要だという。

1.年間を通して同じチームでPDCAを回せること

2.外部パートナーも統括した上で、クリエイティブ監修などが行えること

「1.については、同じチームでアクセス解析や結果の考察、それを踏まえた上でのチューニングをクイックに行うことが大切です。その結果、ユーザーエンゲージメントの向上などの成果が得られるのです。また、ライターやカメラマンなど、外部に一部業務を委託する必要もあるでしょうが、その場合でも、彼らを統括して、クリエイティブの質を担保できる体制構築が肝要です」(宍戸氏)

 そうした、運用体制の整備もQeticであれば可能、ということだ。

【クリック/タップで拡大】

「当社では、企業様のコンテンツマーケティングの現状を診断するサービスも提供しています。『コンテンツマーケティングをどのように始めれば良いのか』とお悩みの方から、既にオウンドメディアを運営しており『改善余地はあるのかを知りたい』という方まで、ぜひお問い合わせください」(宍戸氏)

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Qetic株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/11/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/43530