ビール市場の縮小、コロナ禍を機にD2Cを始動
磯山:ビールサーバーのレンタルサービス「THE DRAFTERS(ドラフターズ)」は2021年のローンチから2周年を迎え、累計入会者数は累計3万人以上、売上は累計30億を超えたと伺いました。
ミニ樽の生ビールをサブスクで毎月顧客に直接届けるD2Cを本格的に始めた経緯や、それによって作りたいブランドやユーザー体験をお聞きしたいと思っています。まず、「THE DRAFTERS」誕生の経緯をお聞きできますか?
西村:本格的にローンチを検討し始めたのは2020年で、ちょうど新型コロナが始まった頃でした。外食産業が大きなダメージを受け、アサヒビールも苦戦を強いられていました。
そもそもコロナ前から、ビール市場自体の緩やかな縮小が懸念されていました。少子高齢化もあり、これまで「とりあえずビール」と飲んで頂いていた世代が高齢化していきます。将来を考えると、今の勝ちパターン以外のビジネスモデル、アプローチを作らなくてはいけない、という危機意識からスタートしました。
「若者がビール離れ」なら、ビールから近寄ればよい
磯山:「若者のビール離れ」という言葉が出てくることもありますが、若年層とビールの関係に関して、西村さんはどう捉えていますか。
西村:20代の若者へ「ビールが美味しいと感じ飲むようになったきっかけ」をインタビューしたことがあるのですが、「アルバイト先の店長が大変な仕事が終わった後におごってくれた」「仲間と卒業記念で登った山頂で乾杯した」など、一緒に飲む人やシチュエーションによって「こんなに美味いものだったんだと気付いた」という回答が数多くありました。
そのときに気が付いたのは、ビールは味よりも体験するシーンと一緒に飲む人によって美味しいと感じるもので、一方でそういう体験がなければビールの美味しさに気付かれないまま飲まれなくなってしまっているのではないかということです。
それならば、ビールが美味しく感じられるタイミングで、こちら側から近寄らなければいけないし、今までにない需要の創造をメーカーからアプローチしなければならない、と思ったんです。
磯山:ビールを飲む若者が減っているのは、美味しさを体験する機会が減っているからという側面もあるのではないかと。
西村:メーカーとして当然ではありますが、競合よりも美味しいビールをいかに作って届けるかというプロダクト面からのアプローチにことにフォーカスしがちです。
ただ、どうやってお客様に近づいていくかを考えたとき、私の答えは「プロダクト」や「マスプロモーション」という従来の手法だけではなく「サービス」だったんです。お客様それぞれが美味しいと思うシーンに、ビールを自由に取り入れてもらう、というアプローチで生まれたのが 「THE DRAFTERS」という「サービス」です。
キャッチコピーの「ビールに、自由と冒険を。」にも、お客様が自分の一番美味しいと思うところに持っていって飲んでほしいという意味を込めました。電源不要で持ち運びしやすい「どこでもサーバー」を開発したころ、キャンプなどのアウトドアでの利用シーンのUGCがたくさん集まり、まさに好きな場所で好きな人とビールのシーンが広がってきています。市場調査によると、ホームサーバーのサービスの中で20代や30代からの好意度が特に高いことを確認しています。