自分達の手で全てやるという責任と覚悟
磯山:新しい取り組みには苦労も付き物だと思いますが、特に大変だったのはどんなことですか?
西村:プロジェクト開始時、チームメンバーは3人でした。
磯山:そんなに少人数だったんですか。最低でも10〜20人はいると思っていました。
西村:広告代理店さんなどの力をできるだけ借りず、自分たちの手でやろうと決めたんです。今後、D2Cで消費者に価値を届けていくためには、事業のオペレーションに責任を持って全てを把握し、ノウハウを蓄積していかなくてはいけません。一方で、外部にお願いをしてしまうと、何か起こってもお金を払っている立場だからと現場に責任を持てなくなってしまう。過去の別件での失敗から学んで、そのような決断をしました。

西村:特に0→1を始める時には、「こうあるべき」という構想を描き、試行錯誤しながら実現していかないと、ナレッジ、ノウハウが貯まりませんよね。特にこのサービスに閉ざさず、将来につなげることを考えるなら、スモールマスの探索や新しいビジネスオペレーションの体系をインハウスでしっかり持っておかなくてはなりません。
磯山:とは言え、大変ではありませんでしたか?
西村:立ち上げ時はベンチャー企業さんから「ベンチャーですか?」と言われるくらい働きましたね。まず浅草の本社ビルの一室を借りて半年間そこに籠ることに決め、まずひたすらにECの要件定義書を書き、サービスの開発要件や定期通販の仕様、LINEからECからCDP(カスタマーデータプラットフォーム)までのデータの流れまで座組を全部書きました。後で聞かされたことですが、その時に新たに取引した会社さんから、「アサヒにヤバイやつがいる。」と噂されていたようです(笑)。
THE DRAFTERSはLINEで友だち登録してアンケートに回答することで本会員登録ができ、サービス申し込みやお届け日の変更、オープンチャットでの交流など、タッチポイントをすべてLINEに集約した仕様になっています。
LINEアカウント運用やCRM施策のノウハウを持つ企業との商談にも自分でアポを取って訪問し、設計からID連携、蓄積したデータをどう活用するかまで含めて、一緒に作り上げていきました。
トラブルはありながらも7ヵ月でローンチ
磯山:細かいユーザー導線やUI/UXまで西村さんご自身がちゃんとコミットして、しっかり周りを巻き込みながら「このサービスを作るんだ」という熱量を感じます。サービス開始時はスムーズでしたか?
西村:お恥ずかしい話ですがECのオペレーションのミスで、前日のデータが連携されておらず、150件ほど商品がお客様に届かないトラブルが起きた際は、全員でお詫び対応もしました。
その日に届いていなかったお客様への電話対応が終わった後、やっと休息できる、と思った矢先で、「西村さん、明日の分も漏れてる」という信じられない連絡をもらいました。もうクタクタになっていましたので、頭の中が真っ白になり、一旦、外の空気を吸いに行きましたね。このハードシングスに耐え切れるかなとも思いましたが、今向き合わなかったらこのサービスは終わると思い、翌朝からまたリカバリーに向け全員で必死に対応し何とか乗り越えました。
磯山:顧客対応までやっていたんですね。デジタルマーケティング出身でいらっしゃるから、マーケも見られていたのですか?
西村:はい。もちろん専門的なところは外部のお力添えを頂きつつですが、クリエイティブや広告運用、BIツールの開発なども見ています。他にも、ECカートの連携やカスタマーデータプラットフォーム、データ分析、要はサービスの川上から川下まですべてですね。
磯山:通常なら2、3年くらいかかりそうに思えますが、事業化の決定からローンチまでどのくらいかかったのですか?
西村:7ヵ月程度しかかかってないですね。エッセンスの濃いところだけ抽出した7ヵ月なので、あっという間でした。
磯山:今はさすがにチームメンバーが3人ということはないですよね。
西村:さすがに回らないので、チームは今私を含め7人の組織となっています。
磯山:それでも7人ですか。まさに少数精鋭ですね。
話が盛りだくさんとなったため、続きは後編でお届けします。後編では、THE DRAFTERSが取り組むコミュニケーションやローンチ後の反響などを伺います。