優れたグラフの特徴
0.前提として正確なデータを用いたグラフであること
優れたグラフについて解説する前に、大前提として「正確なデータを用いたグラフ」であることが必要です。誤ったデータを使ったり、恣意的にデータを操作したりすると、受け手の信用を失うことに繋がります。グラフを作る際には、データに間違いがないかしっかり確認してから、取り掛かるようにしましょう。
1.誰に何を伝えるかが明確にになっている
1-1:相手や目的に適したグラフになっているか?
優れたグラフの特徴の1つ目は、相手や目的に適した形になっていることです。グラフを作る際は、まず「誰に何を伝えたいのか」をはっきりさせます。
多くの場合、私たちは、データの中から相手に伝えたい内容があり、その根拠を示すためにグラフを用います。自分のスタンスを明確にし、相手が知りたいことを把握した上で、「このグラフで何を伝えたいのか」が情報の受け手に一目でわかるようにすると、変化や問題点を浮き彫りにしやすく、説得力をもたらすことができます。
1-2:グラフの種類の選び方は適切か
誰に何を伝えるかを定義したら、次は適切なグラフ選びをしているかも重要です。伝えたい内容に合わせて、グラフの色や目盛り線、凡例などをデザインする必要もあります。 各種グラフには、それぞれ一般的に想起されるイメージがあります。たとえば、折れ線グラフは時系列を表し、積み上げ棒グラフは構成割合を表す、などです。ですから、グラフを一目見て瞬時に認識させるようにするためには、グラフを用いて伝えたい内容と、そのイメージに合ったグラフの種類を選ばなければなりません。

例として、売上に関するグラフでも、昨年の売上を振り返った時に10月から売上が落ちていることを伝えたいのであれば、時系列的な変化をわかりやすくするため、折れ線グラフを選択するでしょう。または、昨年の売上全体においてどの施策が売上に貢献していたのかを伝えたい時は、構成割合を示す積み上げ棒グラフを選択することになります。
このように、伝えたい意図とグラフから想起されるイメージを合わせることで、伝えたいことを適切に根拠づけできるグラフに仕上げることができます。
1-3:数値を比較したグラフになっているか?
次に、「比較をしたグラフ」になっているかも改めて確認していただきたいポイントです。
グラフでは数値をそのまま事実として提示するだけでなく、解釈を表現することが大切です。数値が示す意味や解釈を伝えるために、グラフを用いて「比較」をすることが重要です。
そもそも人は、事実をありのまま解釈するのではなく、相対的な比較によって物事を解釈しています。たとえば、「2021年10月に急激に売上が落ちた」ことは事実です。しかし、10月は毎年売上が落ちるのか、それとも2021年から急に落ちるようになったのかなど、一つの現象を相対的に比較しながら物事を捉えています。
意思決定をするにあたって数値から導き出された解釈を伝えるために、数値の羅列ではなく、比較する対象が必要になってくるのです。比較した結果どうなっているかがわかるグラフは、有用な情報が含まれている優れたグラフといえるでしょう。

数値を比較する例
・自社環境における比較:前年比較、毎月の比較、施策ごとの比較
・競合環境に関する比較:同業他社との比較
・市場環境に関する比較:新規顧客と既存顧客の比較、自社顧客と他社顧客の比較
1-4:次の意思決定に繋がる示唆を提示できているか?
比較した結果が明確なだけでなく、「次の意思決定に繋がる示唆」を含めることも大切です。
繰り返しになりますが、数値を単にグラフ化するだけでなく、数値がもたらす意味や解釈をグラフに組み込み、それに基づいたネクストアクションを示唆できるようなメッセージを表現できると訴求力が高まります。そのようなネクストアクションに繋がる示唆があるグラフは、一目で伝えたいことがわかり、資料への信頼性も増すことになるでしょう。
2.シンプルであること
2-1:不要な情報やデザインがないか?
優れたグラフの特徴の2つ目は「シンプルであること」です。要らない情報は取り除き、必要な情報だけをシンプルにまとめましょう。
たとえば、グラフをわかりやすくしようとする時、強調したいところにハイライトをかけたり、フォントの色や大きさを調整したりすると思います。ですが、その時、色調が強すぎるとその“色”に意識がいってしまい、肝心な数値に意識がいきにくくなったりします。また、枠線を目立ちにくくするだけで、数値に目がいきやすくなります。


普段作成しているグラフも、改めて色々な視点から見てみると、よりシンプルにわかりやすくできる余地があるかもしれません。