データに基づいた売場構成で店舗体験価値を最大化
大里:商品選定や売り場の構成など、お客様の店舗体験を高めるためにはどのような工夫を行っていますか?
羽田:商品選定は、いかに当社独自のポートフォリオを作り上げるかが肝だと考えています。もちろん「b8taに出品したい」という企業様からのお問合せにも対応していますが、それに加えてキュレーターの役割も担うセールス部隊を中心に、日本のアーリーアダプター層に刺さる目玉商品を出品していただけるように積極的にお声がけも行っています。
また、データを活用して売場構成を最適化し、お客様の店舗体験価値の最大化も行っています。具体的には、お客様が通った店舗経路を示したヒートマップを基に、当社で売り場の構成を決定し、各商品がきちんと目に留まり、手にとってもらいやすいように常に改良しています。

大里:データを取得する際にb8taとして工夫していることは何かありますか?
羽田:お客様のストレスをいかに最小化するかには特にこだわっています。
以前、店舗内での行動データと顧客データを結びつけることを目的として、商品説明が確認できるオリジナルアプリを開発し、実証実験として導入したことがありました。ですが、アプリのダウンロードに手間がかかったり、商品説明を読むためにスマホを見る必要があったりと、店舗体験を損なってしまうことに気づき、本格的な導入は取りやめました。
このように我々は、データ活用はあくまでも「お客様の店舗体験を高める」ことがベースにあってこそだと思っています。現在は、商品の横にタブレットを置くようにしていて、お客様とb8taテスターが、一つの画面を見ながら情報を共有できる点で非常に役立っています。
大里:そのような気づきも、リアル店舗であることを活かして顧客体験の中に接客スタッフを介在させながらPDCAを回しているからこそ得られた結果ですね。
今後も人の力にさらに新たなテクノロジーとかけ合わせていくことで、接客を通して収集したデータをより様々な場面で活用することも期待できそうです。
羽田:そうですね、今後は、AIカメラでとらえたお客様の表情や音声データから読み取れる感情と接客内容を紐付け、接客の質を高める仕組みができたら面白いと考えています。
想定外の商品との出会いの場を創出 リテールの次世代の形
大里:最後に、今後のb8taが描く展望や方針を伺えますか。
羽田:店舗のDXをb8ta内だけでなく、小売事業全体に広めていきたいと考えています。
2022年には、新規事業「byb8ta(バイベータ)」をスタートしました。同事業は、データを活用した店舗運営のノウハウを基に、体験型ストアを開業、導入、運営するにあたってのコンサルティングを手がけています。現在は「2023年度中に運営支援先30拠点」を目標に掲げ、事業を推し進めています。
また、「出会えると思っていなかったモノや使い方に出会えた」という潜在需要の掘り起こしはリアルだからこその体験価値です。そのため、カテゴリー軸ではなくお客様の価値観や感性を軸に商品提案が行えるようにして、クロス分析できる仕組みを整えていきたいと考えています。
たとえば最新ガジェットの隣にコスメやアパレルを並べるといったように、従来では一緒に提案されなかった商品をまとめて並べることで、出品企業は自社商品にも他カテゴリーの商品にも興味を持った顧客のデータなどから、潜在顧客の特徴を捉えられるようにもなっていきます。
大里:そうなると企業側では気づかなかったような視点の商品の使い方が売り場で新たに発見されていくかもしれませんね。
羽田:そうですね。我々は、企業と協力しながら体験型ストアという市場そのものを広げ、次世代型のリテールとして新たな価値を創出していきたいと思っています。b8taの店舗はとてもおもしろいので多くの方にぜひ足を運んでいただき、思いもよらなかった商品との出会いを楽しんでもらいたいです。