美しい物件が自宅にも別荘にも収益源にもなる?
皆さんはNOT A HOTELをご存知だろうか。「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、世界的な建築家やクリエイターが手がけるデザイン性と、IoT などのテクノロジーによる快適性を両立した、ハイエンドな別荘を提供している企業だ。那須や博多など、全国7拠点に美しい意匠の「NOT A HOTEL(=物件)」を建造し、利用の権利を販売している。
購入タイプとして1棟購入(毎年360泊の利用が可能)とシェア購入(毎年10~30泊の利用が可能)の2種を用意。オーナーは自身が購入したハウスだけでなく、すべてのNOT A HOTELを相互に利用できる。また、自身が利用しない日程は自動的にホテルとして運用されるため、オーナーが収益を得られる点も特徴。単なる別荘販売ともホテル運営とも異なる斬新なビジネスモデルを考案した人物は、一体誰なのか。
最初に起業したアラタナをスタートトゥデイ(現・ZOZO)へ売却後、ZOZOテクノロジーズの取締役も務めていた濵渦伸次さんは、楽しく忙しく働いていたと言う。そんな折、ZOZO創業者の前澤友作さんが宇宙へ行くことを決めた。自然エネルギーの爆発的普及を目指すパワーエックスの伊藤正裕さん然り、周りにいた経営陣のスケールの大きさを目の当たりにし「また自分で事業を始めるなら、大きなことを仕掛けたい」そんな衝動に駆られていたそうだ。
事業発案のきっかけは「諦めとやけくそ」
「元々はホテル事業に挑戦したいと思っていたんです。リサーチを進めた結果、資金が明らかに不足していることを知りました。様々な金融機関とも話をしましたが、どれだけ借り入れができたとしても、お金が全然足りません。そこでふと気付いたんです。『お金がないなら、先にお金がもらえる事業をつくれば良いんだ』と。ちょっとした諦めとやけくそから生まれたアイデアが、自分の中でどんどんNOT A HOTELの構想へとつながっていきました。NOT A HOTEL(=ホテルじゃない)というネーミングの由来もここにあります」(濱渦)
NOT A HOTELはキャッシュフローの観点から考えられた事業だと言うから驚きである。濱渦さん自身、初めから不動産や建築などに明るかったわけでは決してない。何なら、NOT A HOTELの創業当初は「抵当権」という言葉すら知らなかったそうだ。
「ZOZOテクノロジーズに在籍していた当時、現在のNOT A HOTEL AOSHIMAの場所が宮崎市のプロポーザル(※)にかかったんです。宮崎県は私の地元でもあったので、個人的に手を挙げたくなってしまったんですよね。後追いにはなりますが、NOT A HOTELの構想とその場所が後々一気につながっていくことになります」(濱渦)
※建築物の設計者を選定する際に、複数の対象者に目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を行った対象者を選定すること
かつては新婚旅行の聖地として活気を見せていた青島。しかしながら、NOT A HOTELの敷地に元々建っていた「青島橘ホテル」は、廃墟に近しい状態が長らく続いていた。筆者もNOT A HOTELが開業する前の青島を知る一人だが、お世辞にも「この近くに滞在しよう」とは思えない場所だったと記憶している。