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飯髙悠太氏が探る「エモ」と「ビジネス」と「成長」

純粋に自分が欲しいものを作れば反応してくれる人がいる――プロダクトと想いの強さで成長するOSAJI

 「売れるものはマーケティングコストをかけなくても売れる」そう語るのは、化粧品ブランドOSAJIのブランドディレクター茂田正和氏です。過去にダイレクトマーケティングを行い「これで良いのか?」と疑問を重ねた先に立ち上げたOSAJIのモノ作りの姿勢と、ビジネス拡大はどのようにバランスしているのでしょうか。選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」を運営する飯髙悠太氏が取材しました。

これは正しいことをしているのか? 募る疑問

飯髙:茂田さんは音楽業界にいらっしゃって、その後、経験ゼロから化粧品業界に飛び込み、人気ブランド「OSAJI」を作り上げた異色の経歴をお持ちです。まずはOSAJI立ち上げまでの道のりを詳しく伺えますか?

茂田:僕の自己紹介をすると、母の交通事故をきっかけに敏感肌でも使える化粧品に興味を持ち、2001年に化粧品の企画会社を創業しました。旅館と温泉を使った化粧品を企画する事業を展開していましたが、2003年頃に大型旅館が軒並み経営不振に陥ってしまったんですね。それでOEMに限界を感じ、自分でブランドを持ってメーカーとして販売したいと考えるようになりました。

株式会社OSAJI 代表取締役/ブランドディレクター 茂田 正和氏
株式会社OSAJI 代表取締役/ブランドディレクター 茂田 正和氏

 丁度その頃に、曽祖父が創業した日東電化工業の社長を務める父から、化粧品事業を次世代事業として一緒にやらないかと誘いがありました。日東電化工業は群馬にある、めっき加工業の会社ですが、父は父で先々のことを考えていたようです。そこで2004年に入社して、初のブランド「nesno(ネスノ)」を作りました。

 しかし当時、会社は従業員30人にも満たないのに仕事が溢れかえっている状況でした。兄が1人で品質管理なんかと戦っている姿を見たら、次世代事業なんてやっている場合じゃないですよね(笑)。

 化粧品事業はネスノを取り扱ってくださるお店のフォローにとどめ、約6年は兄と一緒に生産管理等の仕組み作りをしました。寝る間もなく働いて、その中でリーマンショックも経験して、2010年頃にやっと売上も安定して。正直、もうめっき業で生きていこうと思っていました。

 でも、父はブレていなかったんです。「いつまでめっきやってんだ」と急き立てられて、2011年に知り合いのオフィスにデスク1つを借りて、東京で化粧品事業を開始しました。それまで僕がやっていたのはOEMというBtoBビジネスでしたし、ネスノも群馬県内の美容院で販売する小規模なものでした。どちらも足を使う営業で成立していたので、マーケティングのイロハも知りません。ところが、全国展開している大手小売店さんから取り扱いの問い合わせが来たんです。僕の作った化粧品が売られる!と、そこからマーケティングコンサルタントさんの門を叩き、学び始めました。

 ネスノというブランドを売っていくために、それこそCRMのためのステップメールやDM、リスティング広告に同封同梱……いわゆる化粧品のダイレクトマーケティングのテンプレート的なことは一通り行いましたね。当時はそれでもCPAが2,000円ほど。事業計画を書いても収支が合う時代でしたから、ある意味で希望を持っていました。

 しかし、そこから急にCPAが高騰していって1年後には8,000円くらいになった。すると、代理店さんがCPA8,000円なら優秀ですよと言い出したんです。LTVで考えればROASは200%を超えているといったお話しもされて。言いたいことはわかります。でも、うちの商材ではLTVの平均が1万を超えるのに2年はかかります。2年間キャッシュアウトし続けるというのは、非常に乱暴な議論をされている感覚がありました。

 他にもグレーな広告訴求や、サブスクに持ち込んで解約しにくくしたり、メルマガで執拗に追い回すといった手法に対して「物を作り、買っていただくビジネスとして倫理的に正しいことをやっているのかな?」と疑問を感じるようになっていきました。

飯髙:2011年頃はスマートフォンが普及して、SNS利用率が伸びたタイミングですね。広告面も増えて、アフィリエイトプログラムも動き始める中で、広告配信の仕方もギリギリのラインを攻めるケースが多かったと記憶しています。さらに、うまくいった事例はすぐに共有されて、どこのクリエイティブも全部似たり寄ったりな状況でした。茂田さんが疑問を抱いたのも頷けます。

2004年から言っていることは変わらない

茂田:それでも、ダイレクトマーケティングの世界から抜け出せずに違うブランドを作ったり、OEMをしたりとフットワーク軽く事業を進めていました。ところが、2015年くらいでしょうか、今度は売り場に課題を感じるようになったんです。

 僕達のブランドはニッチで、アテンションポップ1個で売れるプロダクトではありません。肌の基礎的なケアを正しく行うことが一番大事だという考えに基づいていて、売り場での丁寧な説明が必要です。しかし、ニッチ商品を扱うべき場所でもドラッグストアの棚の回転率を見ながらマーチャンダイジングしていく世界観になり、接客もしない、セルフで売れるものだけに棚が集約されていきました。

 こうなると僕達のプロダクトは売れません。かといってシミ・しわが消えます、毛穴が目立たなくなりますといった、わかりやすさを追求して明確なエビデンスがないプロダクトを作る気はありませんでした。

 ホスピタリティや倫理感から外れたマーケティングはしたくない、プロダクトは変えたくない。じゃあどうしよう?と考えた結果、自分達で売り場も持つブランドを作ることにしました。それがOSAJIです。

OSAJIの化粧品

 2017年にスタートしたOSAJIは、ありがたいことにいろいろな方に共感・紹介していただけ、企業さんからもコラボのお声をいただけています。でも、僕達が言っていることはネスノを始めた2004年から何も変わっていません。直営店のスタッフの方々がお客さん一人ひとりに丁寧に説明して、共感をしていただけたんです。「ちゃんと伝えれば伝わる」と、OSAJIを通して知ることができました。

 一方で、これまでのブランドは量販店等で販売していることは検索すればすぐにわかる情報です。OSAJIとの矛盾が出ないよう他の化粧品事業は譲渡して、OSAJIとOEMだけを行う体制に移行しました。

飯髙:良いものを作りたいという本質がブレることなく、1つひとつ正しい選択をされていると感じました。ブランドをOSAJIに絞った決断は素晴らしいですね、おそらく、ドラッグストア等でも買える商材が並んでいたら、まずはそっちを選ばれてしまうし、OSAJIの世界観もわかりにくくなっていたと思います。

 また、少しずつOSAJIというブランドの世界観が伝わっていった点も本質的ですね。広告だったら多分、そうはならなかった。OSAJIのブランドや世界観が常に守られていて、賛同する人が紹介してくれることで、「なんか良さそうだな」と行動の変化を促せたのだと思います。

茂田:これは飯髙さんの本を読んだ影響もあるんですよ。僕はマーケティングのコンセプトは純粋培養だと思っています。インフルエンサーマーケティングを否定するわけではありません。むしろ、OSAJIを良い・伝えたいと思ってくださっているインフルエンサーの方々と丁寧につながることが大切だと考えています。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/24 14:35 https://markezine.jp/article/detail/44695

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