SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第101号(2024年5月号)
特集「進化するテレビマーケティング、現在の選択肢」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

CreatorZineピックアップ(AD)

若手クリエイターは「今」をどう捉えているのか 博報堂プロダクツが語るデジタルプロモーションの勘所

 総合制作事業会社「博報堂プロダクツ」には12の事業本部がある。なかでもデジタル領域のフラグシップ部門として、デジタルプロモーションにおけるプランニングやPR、SNSなどを企画から実施まで一手に担うのがデジタルプロモーション事業本部だ。今回話を聞いたのは、入社から一貫して「デジタル」を軸にクライアントの課題解決に取り組んできたプランナーの松田千広さんとプロデューサーの橋爪萌さん。若手のふたりは世の中の潮流をどのように捉えているのか。デジタル/SNS施策やプロモーション設計で意識しているポイントとは。その話から、「デジタル」にとどまらない課題解決のヒントが見えてきた。

「ノーコード」「リアル回帰」「選択と集中」 ふたりが実感するトレンドの変化

——まず、おふたりの担当領域や、博報堂プロダクツに入社した経緯をお聞かせください。

松田:現在8年目で、入社以来デジタルプロモーションに関する企画職を担当しています。具体的には、幅広い領域のクライアントに対し、抱えている課題を解決するための企画提案がメインの業務です。

 入社したきっかけは、大学時代に「ひとり広告代理店」のような活動をしていたことです。友人のサークルの広報を手伝ったり、ポスター・フライヤーなどのデザインを手掛けていたりしたのですが、それを通して「自分の表現ではなく、誰かの役に立つ形でクリエイティブの仕事をする楽しさ」を感じました。そこから広告業界の企画職に絞って就職活動を行い、縁があって入社することになりました。

株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 プランナー 松田千広さん
株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 プランナー 松田千広さん

橋爪:私は現在7年目で、ウェブを中心とした制作のプロデューサーを経験してきました。ウェブにおけるUI/UXのプロデュースおよびディレクション、演出企画などをすることが多いのですが、食が好きなこともあり、お菓子や飲食関連のクライアントとよくご一緒しています。とくに「ポップ」「ファンシー」「かわいい」といったイメージに仕上げることが得意なため、そういった演出を手掛ける機会も多いです。

 クリエイターを志したきっかけを振り返ってみると、小学校3~4年生のときにマンガやイラストが好きだったことが大きいのではないかと思います。当時は自分のホームページを持ち、描いたイラストなどを自身のサイトで紹介する人も多くいましたが、私も親にホームページ制作ツールを買ってもらい活動していました。そのツールに入っている素材が気に入らず、自分でいちから制作することもありましたね (笑)。

 その後、中高生のときに興味が離れたこともあったのですが、大学時代に自分のキャリアに改めて向き合った際、もともと好きだったものを活かしたいと考え、デザイナー職の長期インターンを経験しました。ただ、そのなかでデザイナーだけではなく、ディレクションもプロデュースもしたいと考えるようになり、「自分の頭で考えたものを、自分の手を動かして制作したい」という思いで、博報堂プロダクツに入社しました。

——昨今は生成AIの話題をはじめ、広告業界を取り巻く環境が変化しています。入社から7~8年を経た今感じている時代の変化はありますか?

橋爪:最近はウェブサイトをノーコードツールで制作することも増えました。私自身にそうした依頼はまだありませんが、デザインを当社に依頼いただき、実装はクライアント自身が行うケースも増えてきているようです。

 そのなかで実際にツールではできないこと、つまり人の頭でしか考えられないようなUI/UXや演出を生み続けなければならないという課題も感じています。ですが頻繁に更新が必要なものなどノーコードツールを活用したほうがクライアントや商品にとって有益だと判断する場合も当然あるはず。前者が本来の腕の見せどころであり守っていくもの、これからも強化していく部分ではありますが、そこに固執しすぎず、最近の潮流もふまえた最適な提案と実装を続けていきたいです。

 あとはやはり、縦型動画の急速な広まりも感じています。テレビCMでもあえてスマホを想起させるような縦型のクリエイティブを目にする機会も増えましたし、普段一緒に仕事をするクリエイティブディレクターやアートディレクターたちの興味も高まっていると感じます。私自身も、こうした変化に取り残されないようニュースをチェックするなど、日々のインプットは積極的に行っています。

株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部プロデューサー 橋爪萌さん
株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部プロデューサー 橋爪萌さん

松田現場でもっとも感じるのは「リアルへの回帰」です。ここ数年はやりたいことを我慢してきた生活者が多かったかと思いますし、クライアント側ももどかしい思いをしてきたのではないでしょうか。最近はようやく顧客とのオフラインでの接点を復活させることができるようになり、イベントへのニーズも高まっています。

 また、「選択と集中」の重要性も上がっているのではないでしょうか。生活者それぞれが見ているメディアもタイミングも多様化しているなかで、フィルターバブルがより加速していると感じています。情報摂取の仕方によって「世の中がどう変化しているか」という認識自体も異なってくる。コミュニケーション施策を考える際も、幅広い層を狙うのではなく、深く届けたいのはどういった層なのかをより明確にすることが必要だと思います。

本音が見える場所ではなくなった「SNS」、見えていないものがある「デジタル」

——デジタルプロモーションを専門とするおふたりが、普段意識していることをお聞かせください。

橋爪:私は「ウェブサイトでしかできない表現」を大切にしています。ウェブサイトは、「情報を載せる受け皿」「テレビCMを打つから、LPを作らないと」など企画の下流として捉えられることも多いですが、「企画全体の世界観を表現する」ためにはとても重要な接点。そのため、「企画の世界観を最大化するクリエイティブにするにはどうしたら良いか」は常に意識しています。

松田:これまでデジタルは、良くも悪くも世の中を可視化してきました。しかし一方で「本当はデジタル上で見えていないこともある」ことを念頭に置いておかないと、どこかで大きく間違えてしまうこともあるのではないかと感じています。

 たとえばInstagramで言うと、私の感覚では半数くらいの人がアカウントに鍵をかけている印象ですが、基本的に鍵アカウントの投稿は検索してもでてきません。イベント関連の施策を行うと、クライアントから「現地の様子を来場者のSNSで可視化するような仕掛けをしたい」と要望をいただくことも多いのですが、実際は促されたからしぶしぶ投稿する人もいれば、満足はしたけどわざわざアップしない人もいると思います。今までは本音を可視化するツールとして活用されてきたSNSですが、その様相がどんどん崩れてきているのではないでしょうか。

 そういったクライアント側からは見えづらい部分がデジタル上にもたくさんあるのだと思います。プロとしてデジタルに期待されているものを返していくことはもちろんですが、「見えていないものがある」とクライアントに伝えていくことも、現在は意識しています。

「絶対にこれが良い」と思わせるほどブランド固有の“なにか”を見つける

——実際に企画に落とし込んでいくとき、また「届ける」ために意識していることはありますか?

橋爪:まず「ユーザーの気持ちになってみること」を意識しています。私たちのような総合制作事業会社はBtoBのビジネス形態ですが、BtoCの立場になることで見えてくるものもあると思うんです。

 アウトプットをする際、私はワイヤフレームを書くことから始めます。そこから企画やウェブサイトのイメージを明確にしていくときには、食品であれば「ユーザーに『おいしそう』『食べてみたい』と本当に思ってもらうためには何が必要なんだろう、どうしたら良いんだっけ?」というように、誰よりも自身がユーザー視点に立って考えることを大切にしています。

松田:私は頭の中に「それってほかのブランドでもできるよね?」というツッコミ役を置くようにしています。そのブランドやクライアントしか持っていないもの、それは強みでも、逆に弱みでも良いと思うのですが、ブランド固有のなにかに立脚することが重要です。そういった特有のものがなく強化しなければならないのであれば、誰も世の中で取り組んでいないことをする、または新しく見える施策で先手を打っていく必要があると思います。

 一方すでにコアが確立されている場合の難しさは、「コモディティ化」です。たとえば「水」にどのような価値をつけていけば良いかを考えると、今であればサステナビリティといった世の中の潮流や機運に乗り、そこに共鳴する形で選んでもらうこともひとつでしょう。

 また「ツッコミ役」というのは自身で考えるときだけでなく、クライアントに対しても同じです。コアだと思っているものに固執し過ぎてもどこかで破綻する可能性があるため「そこにこだわっていてもあまり芽がないですよね。それならこっちの方向でいきましょう」などと意見を伝えることもひとつの役割だと思っています。

 競合のブランドと市場にすでにあるものを並べたときに、とくに突出しているものがなかったり、生活者が「絶対にこれを選びたくなる」ところまで達していなかったりする場合、ブラッシュアップすれば突破できるのか、磨いてもブレイクスルーさせるのが難しいかなどを見極めるようにしています。それがとても難しいんですけどね。

OJTで共鳴してもらえる喜びを実感 今後は「企画」で社会課題の解決も

——仕事をするうえで、自身ならではのこだわりがあればお聞かせください。

松田:入社5年目くらいから担当する役割が変わったことで「踏ん張るところで踏ん張らねば」という意識を持つようになりました。人間はやはり、気を抜いていると「これで良いか」と楽をしたくなると思うんです。私自身、眠気に負けそうなときもたくさんあります(笑)。ですが、「妥協していては何も新しいものは生まれない」と自分を奮い立たせ、最後まで考え抜く。これは他人に評価してもらうものではありませんし自己満足かもしれませんが、自分のけじめとして「踏ん張る」ことを大切にしています。

橋爪:入社して1年ほどは先輩について仕事をしていたのですが、「先輩ってお笑い芸人みたいだな」と思ったんです。

 お笑い芸人は所属する事務所こそありますが、あくまでその芸人さんの魅力によって、仕事が舞い込んできますよね。常にその場で臨機応変に頭を回転させながら、その人にしかできない芸を披露するから人気を掴んでいくのではないかと思っています。

 同じように、広告業界でも「この人にお願いしたいから」と仕事をいただくことが多いように感じます。一方で私自身はどうかと考えてみたときに、今先輩のもとを離れて「私と同期のAさんとどっちに仕事をお願いしたいですか?」とクライアントに聞いたら、答えとして返ってくるのはおそらく「どっちでも良い」だと思ったんです。「本当の意味で成長するためにはどうしたら良いか」を強く考えるようになったのは、この気づきがきっかけだった気がします。自分にしかできないことはなにか。自分にしかない価値はなにか。それを考え、提供できるように意識しています。

——最後に、今後チャレンジしたいことや磨いていきたい強みについてお聞かせください。

橋爪:現在はウェブ系のUI/UXを手掛けることが多いのですが、ウェブ以外の制作にも興味があります。過去にフィジカルなプロダクトを手掛けた際、今まで取り組んできたデジタル上とは通用しない部分もありとても苦労しました。ですが、ゼロからUXを検討しそれをUIに落とし込んでいく作業が楽しくもありました。「デジタル」といってもさまざまな領域で活用が進んでいますし、個人としても制作の幅を広げていければと思います。

 もうひとつ取り組みたいことは、制作する仲間を増やすことです。現在、若手社員のOJTトレーナーをつとめて2年目なのですが、自分が提案しようとしていることや作り出したものに共鳴してくれることがこんなに嬉しいのだと日々実感しています。ひとりでは自分の立場や考えしか取り込むことができませんが、仲間が増えれば新たな視点も広がるはず。「みんなで取り組めば良いものができる」を体現していきたいですね。

松田:持たざるものは誰なのかと考えてみると、今の時代は若者なのではないかと思います。若者をターゲットにした企画に携わることも多いですが、実際に若い世代がマイノリティになっており、元気もなくなっているように感じています。「さとり世代」という言葉もありますが、本当はやりたいことがありながら、経済的な理由などで諦めてしまっている人も多いのではないでしょうか。ここ最近の小学生のなりたい職業ランキングではYouTuberが上位にランクインしていますが、ある意味で一発当てないと好きなように生きられないことができないといったムードの表れでもあると感じました。その風潮の打破も、取り組みたいことのひとつです。

 それを「総合制作事業会社のいちプランナーとして何ができるのか」というのも普段から考えていることです。汎用的なスキルでもある「企画」は、社会課題を解決するためにも必要なはず。広告以外のフィールドでも私たちの制作力や実行力を使いながら、「それって広告なの?」と思われるようなチャレンジも積極的に行っていけたらと思っています。

 また、私たちの仕事は、「売上を上げる」「認知を拡大する」など企業の目的を果たすことが大前提ではありますが、それだけではあまりハッピーじゃないと個人的には思っていて……。私がとくに気になるのは、アウトプットしたその先。生活者がどんな気持ちになったのか。どのような価値を受け取ったのか。そこまで見据えた企画づくりも大切にしていきたいです。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

鬼頭 勇大(キトウ ユウダイ)

フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社博報堂プロダクツ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/02/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/44853