そして後の論争のネタとなった質疑応答へ
いったんハケたひろゆき氏が再度ステージに登場し、客席から質問を募る。ニワンゴの杉本社長が会場のマイク係として走り回る。

ここでニコニコ生放送の中継でそのまま会場を映し続けたことが、予想外の事態に転がる。最初は「中国のニコニコ動画っぽいのは?」「勝手にやれば」「auは?」「auの偉い人に言って」というやりとりの間じゅう、中継のスクリーンは「MADMADMADMADMADMADMAD…」の文字で埋まる。そして次に指名された女性が「画面に『MAD』って出てるので」と中継視聴者のリアクションを代弁したことで、客席と中継が有機的につながった瞬間となった。

一方で、続いて質問した男性には身体的特徴を揶揄するコメントが溢れ、さらに最後の14歳中学生山下威豆三氏には「ゆとり」とからかいのコメントが多数つけられる。客席と中継による有機的なつながりが、一転してネガティブな面を見せた瞬間だった。

これにはさすがのひろゆき氏も「うちのニコ厨どもがすいません」とフォローし、山下氏も「ぼくもニコ厨だからかまいません」と鷹揚なところをみせた。しかし、リアルタイムでネットの向こう側から中傷されるという構図は衝撃であり、後日ブログなどで批判の声があがることとなる。
『CONTENT'S FUTURE』などの著書もあるハイパーメディア・ジャーナリストの津田大介氏が、自身のツイッターで「トラウマになるよ」と書いたことに対して、容貌を集中砲火された当人が「善意悪意を問わない率直な意見の可視化の流れも、そのうち当たり前になるんじゃないかな」と、はてな匿名ダイアリーでニコニコ動画のあり方を擁護するという流れにもなっている。
「うちのニコ厨どもが」「ぼくもニコ厨だから」。このやりとりはなかなか粋でもある。しかし一方で「ニコ厨」というある種の仮想的なコミュニティにみんなが属しているという気安さがあるから出てくる言葉でもあるだろう。ニコ厨という枠を超えて同じような粋なやりとりができるか、ハゲのおっさんのいう「率直な意見の可視化」があらゆる場面で可能かどうか、まだ議論の余地を残しているのではないだろうか。
ところで、中継から弾幕のように寄せられた「MAD」問題についての、ひろゆき氏の回答は「消されることがそんなに問題だとは思っていない」というものだった。権利者が消せというなら消すが、その代わり誰がどんな理由で削除要請したかを明記し、今後は同じ理由による削除を回避できるようにする。また消せと言われないように、ニコニコモンズによる素材庫も整備する。
これでまで限りなく黒に近いグレーであったMADをロンダリングし、日本を代表して世界に出て行けるコンテンツとして打ち出していこう、夏野氏の就任に現れるようにニコニコ動画運営サイドはその方向に舵を切ったようである。それは、既存のMAD動画の面白さやニコ厨コミュニティの楽しさを満喫したい参加者とは、微妙な温度差があるようにみえた。大いに盛り上がったニコニコ動画大会議だが、ネットコミュニティの新しい可能性とともに乗り越えるべき課題も垣間見せる意義深いものになったようである。
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