第1回:ファネル構造モデルの破綻はこちら!
カスタマージャーニーは消費者を購買者に育てる双六ゲーム
前回は「ファネル構造モデルの破綻」について言及しましたが、第二回では「カスタマージャーニーモデルの破綻」について触れていきます。
カスタマージャーニーの考え方は、意外に浸透しています。ファネルやAIDMAとほぼ同類なのですが、カスタマージャーニーでは消費者が育っていくプロセスを発想すことから、それらよりも、自社のブランド独自のプロセスを描くことができます。市場に初めて投入する商品に対しては、カスタマージャーニーはそれなりの説得力を持つでしょう。いわば、消費者を購買者、愛好者に育てていくという「双六(すごろく)」ゲームです。
カスタマージャーニー通りには人は動かない
しかし広告を始めとするプロモーションの対象となるブランドの多くは、既に市場に投入済のものです。つまり、既に市場投入に成功しているブランド・製品をプロモーションしたほうが費用対効果は高いからです。逆に言うと、それだけ新商品が成功する確率は低いと言えます。もちろん、カテゴリーによって差は大きくありますが。
市場に初めて投入する新商品においては、カスタマージャーニーの役割を理解できる面はあると言いましたが、そもそも「カスタマージャーニーモデル」は、すべてのターゲット全員を、双六でいうところの振り出しにおいて、順番にパーセプションを描いて、購買意思を決定するまでを発想(妄想)するということです。
”妄想”というのは言い過ぎかもしれませんが、「カスタマージャーニー」を描くことは、ブランド側(送り手)の論理を前面に押し出している行為のように見えます。その発想の背景には、「このように消費者を教育しよう」「こういう意識を持たせよう」「このように態度変容するはずだ」といった企業側視点の発想が存在しています。すなわち、消費者はすべからくこういう順序で購入までの道を辿っていくはずだと一本道を想定しているのです。
このような作業を経て作られたカスタマージャーニーに疑問を持てないとしたら、それはとても危険な状況です。そのようなカスタマージャーニーが現実味に乏しいことは、感覚として理解できるのではないでしょうか。