第四回:フリークエンシー理論の破綻はこちら!
1to1マーケティングの実現が可能になった今、見えてきた新たな課題
本連載を通して、「ファネル構造モデルの破綻」「カスタマージャーニーモデルの破綻」「USP思考の限界」「フリークエンシー理論の破綻」について触れてきました。第五回は、一人のヒトを特定してマーケティングする、つまり「ID取得型のマーケティング」について言及します。特にサードパーティ型IDのことを言っています。
1to1マーケティングが提唱されはじめた当初は、実際に1to1を実現することは技術的に難しい状況にありました。当時は実現すれば、ある意味これが究極のマーケティング手法ともてはやされたものです。
そこから時が経ち、今日ではマススケールでの1to1が実現できるようになりました。IDによってひとりひとりを特定できる現在において、1to1が究極のマーケティング手法になったかというと、残念ながらそうではありません。なぜかというと、“ヒト”で括っても、同じヒトがカメレオン化してしまうからです。十人十色は一人十色にも二十色にもなるのです。苦労して一人を突き詰めても、人は気まぐれで意識も行動パターンも変わってしまうので、ヒトで括る意味がなくなってしまうのです。
SNSでの購買行動に影響する4つの要因
それぞれの購買影響要因が同じ人でも、対象ブランドのカテゴリーや価格帯で変わってしまう。この事実を確認できたのは、トレンダーズの「インフルエンスファクター」を利用したときでした。
上記の図はSNSでの購買行動において、影響する要因を4つに分類したものです。縦軸に「ヒト」と「モノ」、横軸に「ソサイエティ」と「パーソナリティ」を置いています。
4象限の左上(ヒト×ソサイエティ型)は「Audience」、つまり「いろいろな人が良いと言っている」ということが一番購買行動に影響する要因となります。右上(ヒト×パーソナリティ型)は「Trust」、つまり「好きな人が良いと言っている」が一番購買行動に影響する要因となります。そして左下(モノ×ソサイエティ型)の「Knowledge」では、「他と比べて良いものだとわかる」ことが一番購買行動に影響します。これは昔からあるファネル理論での「関心」から「比較検討」を購買に寄って行くのと近いでしょう。
4つめは、従来あまり定義されていなかった購買影響要因ですが、左下(モノ×パーソナリティ型)の「Discovery」、つまり「好きなモノに出会えた!」という購買影響要因です。