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MarkeZine Day 2025 Retail

ヒットの裏にマーケあり

「100人に1人、刺さる人がいればいい」赤字から大逆転、ヤッホーブルーイングの成長支える思考【前編】

メルマガにネガティブな声も……それでもよなよなエールが売れる理由

高橋:商品と関係ないメールが来てポジティブな反応が増えたとのことですが、ネガティブな反応はありませんでしたか?

井手:人格がはっきりしたメールが来ると、賛否両論を呼ぶんですよ。好意的な意見と、「お前のプライベートなんて知りたくない」「無駄な話を送ってくるな」といった批判的な意見が半々くらいで届くようになり、厳しい言葉に落ち込むこともありました。

 でも、よく考えると、よなよなエールが嫌いなら黙ってメルマガを解除すればいいだけですよね。あえてメールを送ってくださるということは、製品に対するロイヤリティが非常に高く、製品の情報だけが欲しいという意思の表れなんじゃないかと思いました。

 それで、メルマガの内容を改変した経緯とお詫びを記したメールを全員に返信して、理解してほしいとお願いしたんです。「実はよなよなエールの宣伝をするたびにメルマガ会員が減っていくので、人気店の真似をして新しいトライをしているんです。不快な思いをさせて本当に申し訳ないのですが、もう少し見守ってもらえたらうれしいです」――という具合に。

高橋:ネガティブな反応をする全員にですか! なかなかできることではないですね。

高橋 飛翔(たかはし・ひしょう)

 1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。ナイルにて、累計2,000社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足。2018年より新規事業として月1万円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。

井手:当時はまだ、メルマガの登録者数が少なかったですからね(笑)。そうやって真正面からぶつかっていくうちに、だんだんクレームが減っていき、ネガティブだったお客様からも「よなよなエールが好きだから応援する、頑張れよ」と応援のメッセージが届くようになりました。

 それに、私のほうも誰も嫌な思いをしない文章のさじ加減がわかってきたんですね。日中にメルマガを出し、夜と翌日の午前中にクレームへのお返事を書く日々の中で、お客様が喜ぶ勘所みたいなものを習得することができたんです。

高橋:すべてのサービスに通じる、考え方の基本のようなお話ですね。そこから一躍黒字に転じ、19年連続増収ですから、なおさら素晴らしいと思います。よなよなエールの販売量も、5年で約2倍になったそうですね。

井手:メルマガの改変と足並みをそろえるように、楽天の売上も好転しました。インターネットを通じて少しずつ全国の個性派ビール党の人たちにビールを届けられるようになって、じわじわと支持が広がっていったという感じです。

 メルマガが契機となって、独自色を出していけるようになったことも大きかったですね。

コロナ禍の巣ごもり需要をつかみ、小売店の売上を拡大

高橋:コロナ禍で厳しい時期に、「自分たちでコントロール可能な部分に経営資源を集中し、環境に適応すべく私たち自身が変化していくべきだ」と発信していらっしゃいました。

井手:そうですね。当時は試行錯誤の中で時流を読み、それまでほぼ止めていた販売店の新規開拓を再開しました。新規開拓を止めていたのは、定着しにくい新規店への営業よりも、既存店に合った企画提案でより良い売り場を作り、ファンを増やしていくほうが良いと判断していたからです。

 ところが、コロナ禍による巣ごもり需要によって、急に売上が伸びる販売店が続出したのです。これを好機と見て長年の方針を転換し、積極的な新規開拓に乗り出したことで、スーパーやコンビニといった小売店の売上が飛躍的に伸びました。

高橋:環境の変化による市場ニーズの変化を敏感に読んだからこその成功例だと思います。今もやはりインターネット通販が強いのですか。

井手:いえ、おかげさまでインターネット通販も伸びているのですが、それ以上に店頭での販売が伸びています。現状でいうと、スーパーやコンビニの売上がインターネット通販をはるかに上回っていますね。

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よなよな独自の「味」を生み出す開発プロセスとは?

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この記事の著者

高橋 飛翔(タカハシ ヒショウ)

 1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。

 ナイルにて、累計1,500社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足し「ナイルのマーケティング相談室」「ナイルのコンテンツ相談室」などを運営。2018年より新規事業として月10,000円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/05/09 08:30 https://markezine.jp/article/detail/45530

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