SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

ヒットの裏にマーケあり

「一途にファンを思い続ける」ヤッホーブルーイングのファンは、なぜ自らCVへの階段を上がるのか【後編】

 数々のヒット作の裏側には、どのようなマーケティングが潜んでいるのか――。デジタルマーケティングのコンサルティングでこれまで2,000社を超える企業を支援してきたナイル。その代表で起業家の高橋飛翔が、各界の著名人と対談を行い、ヒットの裏に隠されたマーケティングを深掘りしていく連載企画。ゲストは、低迷するビール業界で19年連続増収を達成し、製品のユニークなネーミングと相まって注目を集めるヤッホーブルーイングの代表取締役社長、井手直行さんです。後編では、思い思われるファンとの関係作りと、SNSプロモーションのコツ、今後の展望について伺いました。

CVへの下心は見透かされる

高橋 飛翔(以下、高橋):前編で、100人のうち1人に刺さればいいと割り切ってやってきた結果、熱量の高いファンが今も売上を支えてくれているというお話を伺いました。理想的な相思相愛の関係を、どのように作ってこられたのですか。

井手 直行(以下、井手):ファンマーケティングという言葉がありますけど、我々はそんな言葉がない時代から、ただひたすらお客様に満足してもらうことを考えてきました。どうすれば、私たちのビールに興味を持ってくれた人が心から満足してくれるのか。そこを突き詰めてきたことがポイントだと思います。

井手 直行(いで・なおゆき)

 株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長。ニックネームは『てんちょ』。国立久留米高専を卒業後、電気機器メーカー、広告代理店などを経て、1997年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。2008年より現職。フラッグシップ製品『よなよなエール』を筆頭に、個性的なブランディング、ファンとの交流にも力を入れ、クラフトビールメーカー国内約800社の中でシェアトップ。『ビールに味を!人生に幸せを!』をミッションに、新たなビール文化の創出を目指している。

 もちろん、ボランティアではなくビジネスですから、最終的に購入してほしいという気持ちがないと言ったら嘘になります。でも、早くCVに向けた階段を上ってほしいという下心が透けて見えると、お客様は「結局そういうことか」とすぐに離れていってしまうでしょう。

 だから、とにかくお客様に喜んでもらえそうなことを第一に考えて、それが結果的に売上につながればいいという思考でファンとの密なコミュニケーションを大切にしてきました。代表的な例がファンイベントです。

 2010年に40人くらいのファンを集めて開催したイベント「宴」は年を重ねるごとに参加者が100人、500人と増えていき、2018年秋には5,000人規模の「よなよなエールの超宴」へと成長しました。翌年は2日間かけて1万人を呼ぶ予定でしたが、台風で中止に。さらに翌々年はコロナ禍でリアルイベントを見送らざるを得ず、オンラインイベントの「よなよなエールの”おうち”超宴」「よなよなエールの〆宴」へと切り替えました。

 「よなよなエールの”おうち”超宴」の参加人数は2日間の開催で延べ1万人で、チャットで読み切れないほどのメッセージをいただいたんですよ。

採算度外視のイベントでも育てれば芽が出る

高橋:40人から1万人はすごいですね。ただ、同じ経営者の立場からすると、売上を度外視してイベントを開催し続けるのはなかなか勇気がいることだなと。売上は後からついてくるというスタンスを貫けたのはなぜでしょう。

井手:最初の「宴」はみんな楽天市場のお客様で、日本各地からチケット代より高い交通費を払って来てくれたんです。すごく盛り上がりましたし、アンケート結果でも満足度が爆上がりしていました。

 加えて、イベント後の楽天市場の売上がグンと伸びていて。世の中にまだ知られていない小さなビール会社が開催するイベントに足を運んでくれるようなお客様は、当社と当社の製品に並々ならぬ愛着を持って、本当に真摯に応援してくれることがわかりました。

 しかも、自分で継続的に買うだけでなく、「すごく楽しいイベントだったよ」「よなよなエールおいしいよ」とあちこちで良い口コミをしてくれたり、次のイベントに新しいお友達を連れてきてくれたりするんです。

 正直言って大型のイベントは、収益につながらないどころか毎回大赤字でした。それでも、スモールスタートの時点でイベントの効果が感覚的に実証できていたので、ブレずに顧客満足を追求し続けてこれたのだと思います。

高橋:スモールスタートでちゃんとデータを取って、少しずつ育てていけばいいというのは、どの会社も真似しやすい考え方ですね。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
顧客の熱量に合った施策で、CVへの階段を上ってもらう

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
ヒットの裏にマーケあり連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

高橋 飛翔(タカハシ ヒショウ)

 1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。

 ナイルにて、累計1,500社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足し「ナイルのマーケティング相談室」「ナイルのコンテンツ相談室」などを運営。2018年より新規事業として月10,000円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/05/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45531

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング