日本マーケティング協会は、5月21日、「第16回 日本マーケティング大賞」の受賞企業を発表した。
日本マーケティング大賞では、2023年1月1日~2023年12月31日までの期間の企業・自治体・団体の活動が対象に、産業界・学界から選出された15人の「日本マーケティング大賞」選考委員会が優れたマーケティング活動を表彰する。
第16回にあたる今回は、推薦プロジェクト総数110件の中からグランプリとして「北海道ボールパークFビレッジプロジェクト」が選出。他にも奨励賞5件、地域賞3件が選ばれた。
日本マーケティング大賞 グランプリ
北海道ボールパークFビレッジプロジェクト/ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
施策概要:同プロジェクトは、「世界に誇れるスポーツを起点とした新しい街づくり」をパーパスに設定。構想発表時には、Vision Movieや新聞広告を通じて「これは単なる球場づくりではなく、新しい街づくりを世界に先駆けて挑戦するプロジェクトである」と宣言し、目指すゴールを明確にして推進した。
加えて、球場づくりと街づくりの構想についての「未来設計図」を生活者視点で策定。その内容をFuture Vision Bookにまとめステークホルダーに共有することで「共同創造空間」への参画を促進した。さらに、開業前後では効率的な認知獲得を狙う「リーチマックス」ではなく、プロジェクトに関わるパートナーの思いを伝達させる「ヒートマックス」手法を導入した。
これらの活動を通じ150社以上のパートナーがプロジェクトに参画し、2023年3月の開業後に年間来場者数は約340万人を記録した。日本国内では、今後100件以上のスタジアム・アリーナ構想が動き出す予定で、同プロジェクトはそれらを成功に導く上での先駆的マーケティングモデルになった。
日本マーケティング大賞 奨励賞
守るのは、頭と地球。 HOTAMET/甲子化学工業、猿払村、TBWA HAKUHODO
施策概要:環境配慮型ヘルメット「HOTAMET/ホタメット」を企画・開発した同プロジェクト。TBWA HAKUHODOと甲子化学工業は、北海道猿払村で廃棄される、年間4万トンのホタテの貝殻ゴミを、廃棄プラスチックと組み合わせ新素材を開発し制作した。
同ヘルメットは、ローンチから2ヵ月で、目標売上に対して1,397%を記録。さらに、初年度で、約24トン以上の廃棄貝殻のリサイクルが見込まれているという。
また、世界中の企業からオファーが殺到しプロジェクトが進行しており、2025年に買う際される大阪・関西万博の運営参加特別プログラムCo-Design Challenge(CDC)にも採用されている。
冷凍餃子フライパンチャレンジ/味の素冷凍食品、本田事務所
施策概要:味の素冷凍食品の「ギョーザ」は、2023年5月に生活者がSNSで投稿した「冷凍餃子がフライパンに張り付いてしまう」をきっかけに、生活者による調理環境の実態把握の機会として研究・開発のために、フライパンの提供をSNSで呼び掛けを実施した。
その後、最終的には3,520個のフライパンが集まり、これを機に同年10月には「冷凍餃子フライパンチャレンジ」のプロジェクトサイトをオープン。集まったフライパンのデータを3D画像と共に公開した。加えて、同社は検証状況を継続的に発信し続け、フライパンの募集から7ヵ月後には商品のリニューアルにつなげた。
プロジェクトを通じて可視化された生活者の声に応え、徹底的に検証する同社の取り組みが話題化し、ブランドの誠実な姿勢を伝えることに成功した。なお、2020年より同社の戦略PR活動を支援する本田事務所は、全体統括としてプロジェクトに関与した。
コンビニジム「chocoZAP」/RIZAP
施策概要:RIZAPが展開する低価格ジム「chocoZAP(チョコザップ)」は、着替え・履き替え不要で気軽に使える「コンビニジム」というコンセプトを掲げ、ジムの入会や継続のハードルを下げることに成功し、本格展開からわずか約1年8ヵ月で会員数は112万人(退会者は含まず)を超えた。
セルフネイルやエステ、歯のセルフホワイトニングなど異例のサービスを充実させることで、運動習慣がなかった層を取り込んだことや、広告コミュニケーションでのA/Bテストによる効果の最大化、ユーザーデータを基にしたDX推進を行った。
共創する自動車保険「&e(アンディー)」/イーデザイン損害保険
施策概要:イーデザイン損保は、2021年11月に共創型自動車保険「&e(アンディー)」の販売を開始。同保険は、「自動車保険は事故にあった時に役立つもの」という固定観念を覆し、契約者は35万件を突破した。
契約者に、事故解決のプロとしての視点を取り入れたアプリサービスと車載センサーを付帯。加えて、センサーで取得する運転データによる日々の運転に対する振り返りや、友人・家族とミッションに取り組むチャレンジ機能など、楽しみながら安全運転につながる機能を搭載している。
加えて、契約者全員で年間の事故率目標を達成することで自治体の事故削減活動への寄付に一定金額を上乗せや、約170のパートナー企業・団体・自治体と連携し、分析・研究に取り組むなど、あらゆる関係者と共創し事故のない世界の実現を目指している。
子育て応援プロジェクト/コープさっぽろ
施策概要:コープさっぽろは、子育て支援として「子育て応援プロジェクト」を実施した。同活動は、北海道の組合員から回収した資源物を、エコセンターで加工・販売し、その利益を子育て支援資金として活用するもの。資源の回収量が増えるほど利益が増え、それが次世代のために活用される循環型支援に成功した。
同活動により、具体的には絵本を無償でプレゼントする「えほんがトドック」、保育園などで絵本の読み聞かせを行う「えほんわくわくキャラバン」、妊婦さんへベビー服やおむつなど約30点を無償でプレゼントする「ファーストチャイルドボックス」などが実施された。
日本マーケティング大賞 地域賞
閉鎖水槽を“ショーウィンドウ”としてメディアに「サンゴショーウィンドウ」/海遊館(関西地区)
施策概要:大阪にある水族館「海遊館」では、「グレートバリアリーフ水槽」がリニューアル工事のため、一時閉鎖して水を抜く必要があった。その際に、サステナブルファッションブランドや、サステナブルな「紙製マネキン」を展開する京都のイベント施工会社と共創を実施。空の水槽を、「ショーウィンドウ」として3日間限定で展示空間にリデザインを行った。
来館した人々に対して、海洋プラゴミなどをリサイクルしたブランドを紹介や、水槽に表示したQRコードから商品を購入できるようにすることで、海洋ゴミ問題や海洋保全を「考えるきっかけ」をつくった。
工事期間中の有効活用が話題となり、多数のメディアにも露出。国内外からの水族館からの反響も多数寄せられた。
福岡市屋台基本条例制定10周年&長浜屋台街復活!プロモーション/LINEヤフーコミュニケーションズ、九州博報堂(九州地区)
施策概要:福岡市が屋台基本条例を2013年7月に制定してから10周年のタイミングで、LINEヤフーコミュニケーションズと九州博報堂は、「長浜屋台街復活!屋台DX化プロジェクト」を推進。屋台のLINE公式アカウントを友だち追加すると、長浜屋台街の屋台一覧やおすすめメニューがLINEでチェックできる上に、長浜屋台街の営業状況や混雑状況を確認できるサービスを開発した。
他にも、最寄り駅の地下鉄赤坂駅の大規模装飾を実施。地下鉄1編成をジャックした屋台列車を運行するなどプロモーション活動を行った。同プロモーションに対して、福岡市経済観光文化局が屋台の市内経済波及効果を推計したところ、その額は104.9億円となり100億円を突破した(2011年の約2倍)。
北海道発、おいしいお菓子づくりと環境再生型農業で北海道の未来を創造/北海道コンフェクトグループ(北海道地区)
施策概要:きのとや、千秋庵製菓、K コンフェクト、COC、ユートピアアグリカルチャー、北の食品の各社の事業会社を統合する持株会社として設立された北海道コンフェクトグループは、設立の第一弾として、千秋庵のあんこ入りパイ「ノースマン」のリブランディングに着手。生クリームを注入した「生ノースマン」を発売し、3週間で4万個を販売した。
加えて、同グループのユートピアアグリカルチャーでは、日高管内や札幌市内で、放牧酪農や鶏の平飼い養鶏を実践。北海道大学やソニーグループと共同で環境再生型農業にもチャレンジし、動物にも環境にも負荷をかけずに品質の高い原材料の生産に取り組んでいる。
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