博報堂生活総合研究所は、博報堂生活綜研(上海)、博報堂生活総合研究所アセアンと協働し、日本・中国・アセアンの生活者のライフスタイルや行動を把握することを目的とした8ヵ国調査として第2回「グローバル定点」を実施した。昨年に引き続き行われた本調査は、15~59歳の男女1万1,000人を対象とするインターネット調査である。
日本、中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポールの計8ヵ国を比較した際に、各国における最上位の項目は、以下の画像の通りになった。日本・中国・アセアン3拠点の研究員の分析コメントとともに紹介する。
また本記事では、日本が特徴的だった結果を抜粋して紹介する。
「自分の将来イメージは暗い」と考える人が40%
先ほど日本が最上位になった項目として紹介した「自分の将来イメージは暗い」は、40.0%だった。昨年の43.7%から下がったものの、他7ヵ国と比べるとポイント差が大きく開いた結果になった。研究員は、以下のように考察を述べている。
日本は40.0%で最上位でした。日本社会の将来に関する悲観的なキーワード(人口減少、超高齢化、少子化、社会的孤立など)を見聞きすることが多いからかもしれません。新型コロナウイルスが5類に移行し、コロナ禍前の暮らしを取り戻しつつあるとはいえ、相次ぐ物価高などの新たな生活課題が生まれていることも、日本の生活者に将来を悲観的にとらえさせるのではないでしょうか。なお、「自分がもらう年金に不安を感じる」でも日本は突出(2024年44.9%・最上位)していました。
ポイントサービスの利用率は28.5%でトップ
また「日常的に企業が発行するポイントサービスを使っている」という項目でも、日本は最上位となった。研究員は以下のように考察を述べている。
日本は28.5%で最上位でした。生活のデジタル化にともなうオンラインショッピングの広がりに、コロナ禍による非接触決済の浸透が加わり、買い物における“ポイ活”(買い物などの消費行動によってポイントを貯めたり、貯めたポイントを使ったりする活動)が広がっています。お金を使わないように節約するだけでなく、お金を使ってポイントを獲得する。そんな日本の生活者が他国に比べて、多くなっています。
「経済的に余裕があるほうだ」日本は最下位
「経済的に余裕があるほうだ」という項目では、日本が他7ヵ国と比較して24.8%で最下位となった。最上位だったインドネシアに関して、研究員は以下のように考察を述べている。
インドネシアは84.6%で最上位でした。また「幸せなほうだ」(2024年90.4%・最上位)も高く、幸福度や経済的余裕があると回答する生活者が8ヵ国で最も多い結果となりました。生活が豊かだと感じるのは、信仰心や家族への愛情や絆の深さからくるものだと考えられます。
「今後、ふだん着にお金をかけたい」日本は最下位
また「今後、ふだん着にお金をかけたい」という項目でも、日本は10.6%で最下位となり、インドネシアが61.2%で最上位となった。
「今後、旅行にお金をかけたい」日本は33.5%
「今後、旅行にお金をかけたい」と考えていると回答した最上位の国はシンガポールで57.7%。日本は33.5%で、中国の31.1%に次いで少ない結果となった。
「若者が主役の世の中だと思う」日本は最下位で13.3%
「若者が主役の世の中だと思う」という項目でも日本は最下位の13.3%となった。中国では昨年38.8%だった回答率が、今年は22.2%となった。アセアン各国は30%前後と横並びの結果となったが、ベトナムが34.0%で最上位となった。ベトナムについて、研究員は以下のように考察を述べている。
ベトナムは34.0%で最上位でした。高度成長期の渦中にいるベトナムでは、生活者みんなが「今日よりも明日のほうが良くなる」と信じて前進し続けています。その原動力のひとつが「若い世代」です。自分のスキルを高め、たくさん稼ぎ、親孝行をし、国の成長の一翼となる…、そんな向上心の高い若者にベトナムでは多く出会います。「若さが欲しい」でもベトナムは最上位(2024年18.0%)でしたが、「ベトナムの生活者が「若者」や「若さ」に関して関心が高いのは、このような状況を反映しているからだと考えられます。
【調査概要】
調査地域:日本(首都圏・阪神圏)、中国(北京・上海・広州)、アセアン(タイ・ベトナム・インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポール)
調査人数:1万1,000人(11エリア×各エリア1,000人)
調査対象:15~59歳の男女※アセアン各国は、世帯収入による絞り込みも行った
調査期間:2024年1月15~31日
調査方法:インターネット調査
設計・分析:博報堂生活総合研究所
調査協力:博報堂生活綜研(上海)、博報堂生活総合研究所アセアン
「グローバル定点」は、博報堂生活総合研究所が日本で1992年より実施している「生活定点」調査の質問項目をベースに、消費・お金、情報、遊び、働き、健康、家族、恋愛・結婚など生活の幅広い領域から約480項目に及ぶ質問を投げかけ、各国の特徴を浮き彫りにするもの。今後、「グローバル定点」は毎年の調査を実施する。時系列分析を行うことで各国の意識や価値観、行動の変化を追跡していく。
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