これは著作権侵害じゃないの??
【回答】
最後は、自己が作った作品が「著作物」として必ず保護されると思いがちですが、実はそうではないことについてお話します。
著作権法の保護が及ぶ著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に限られます。思想や感情を頭や心の中にとどめたまま何らの表現もしていないのであれば当然著作物には該当せず、また、表現されたものであっても文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属しないものであれば、やはり著作物には該当しません。では、問題となっている自作の陶芸品はどうでしょうか?
著作権法上、美術が実用品に用いられているいわゆる応用美術は、著作権法の保護が及ぶ著作物ではないと考えられています。そのため、この陶芸品が、一品製作の手工的な美術作品である美術工芸品の場合は、著作権法の保護が及ぶ著作物に該当しますが、大量に生産される工芸品にすぎず、純粋美術あるいは鑑賞美術と同視できないような場合は、著作権法の保護が及ぶ著作物には該当しません。
ご質問ではネットショップで自作の陶芸品を売却されたとのことですが、この陶芸品が著作権法の保護が及ぶ著作物に該当し、かつ、この陶芸品に関する著作権が陶芸品を作成された方に留まっている場合は、著作権に基づき複製品の製造販売の禁止や損害賠償を求めることができると考えられます。よってこの場合、「この世にひとつしかなく、観賞用の美術作品である」と主張できるのであれば法的措置をとるに値すると考えられます。
ちなみに、陶芸品が著作権法の保護が及ぶ著作物でない場合でも、意匠法所定の要件を満たし意匠権を取得できれば、この意匠権に基づき複製品の製造販売の禁止や損害賠償を求めることができます。ただし、意匠権は、著作権のように表現物を創作することにより当然に発生するものではなく、意匠法に基づき出願して登録された後でなければ発生しませんので、注意が必要です。
また、問題の陶芸品が、著作物に該当するか否か、意匠登録されているか否かにかかわらず、不正競争防止法に基づく保護が図られる場合もあります。
このように陶芸品1つをとってみても、様々な法律で保護が図られる可能性がありますので、問題が生じお困りの場合は、専門家に相談されることをお勧めします。