SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Autumn

MarkeZineオンライン法律相談所

第1回 著作権と意匠権についての「はてな?」


これは著作権侵害じゃないの??

【質問】
 私はネットショップを立ち上げて、自作の陶芸品を売っているのですが、ある日とあるネットショップで私の作成した商品とまったく同じものが売られていました。これはあきらかに世の中にひとつしかない、私のオリジナルのものです。よく調べてみたら、そのネットショップの店主は、以前私のお店でまさにその陶芸品を購入したお客様で、購入した私の陶芸品のコピーを売っていました。私はその店主に対して何か法的措置をとることができるでしょうか?

【回答】

 最後は、自己が作った作品が「著作物」として必ず保護されると思いがちですが、実はそうではないことについてお話します。

 著作権法の保護が及ぶ著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に限られます。思想や感情を頭や心の中にとどめたまま何らの表現もしていないのであれば当然著作物には該当せず、また、表現されたものであっても文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属しないものであれば、やはり著作物には該当しません。では、問題となっている自作の陶芸品はどうでしょうか?

著作権法上、美術が実用品に用いられているいわゆる応用美術は、著作権法の保護が及ぶ著作物ではないと考えられています。そのため、この陶芸品が、一品製作の手工的な美術作品である美術工芸品の場合は、著作権法の保護が及ぶ著作物に該当しますが、大量に生産される工芸品にすぎず、純粋美術あるいは鑑賞美術と同視できないような場合は、著作権法の保護が及ぶ著作物には該当しません。

ご質問ではネットショップで自作の陶芸品を売却されたとのことですが、この陶芸品が著作権法の保護が及ぶ著作物に該当し、かつ、この陶芸品に関する著作権が陶芸品を作成された方に留まっている場合は、著作権に基づき複製品の製造販売の禁止や損害賠償を求めることができると考えられます。よってこの場合、「この世にひとつしかなく、観賞用の美術作品である」と主張できるのであれば法的措置をとるに値すると考えられます。

 ちなみに、陶芸品が著作権法の保護が及ぶ著作物でない場合でも、意匠法所定の要件を満たし意匠権を取得できれば、この意匠権に基づき複製品の製造販売の禁止や損害賠償を求めることができます。ただし、意匠権は、著作権のように表現物を創作することにより当然に発生するものではなく、意匠法に基づき出願して登録された後でなければ発生しませんので、注意が必要です。

 また、問題の陶芸品が、著作物に該当するか否か、意匠登録されているか否かにかかわらず、不正競争防止法に基づく保護が図られる場合もあります。

 このように陶芸品1つをとってみても、様々な法律で保護が図られる可能性がありますので、問題が生じお困りの場合は、専門家に相談されることをお勧めします。

本稿中、意見にわたる部分は、筆者個人の見解を示すにとどまり、筆者の所属する法律事務所の意見を表明するものではありません。また、具体的事案により本稿中とは異なる結果が生じる場合があります。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
MarkeZineオンライン法律相談所連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

笹倉 興基(ササクラ コウキ)

弁護士(東京弁護士会所属)。1995年早稲田大学法学部卒業。1999年弁護士登録。黒田法律事務所において、特許権、商標権及び著作権といった知的財産権に関する案件、ベンチャー企業の支援を担当している。また、M&A・事業再生・リストラクチャリングや民事再生などにも注力しており、ビジネス法務の分野において第一線で活躍中。ネットビジネスに関連する法律に精通している。
www.kuroda-law.gr.jp

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2006/07/12 21:16 https://markezine.jp/article/detail/45

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング